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世界最強集団を撃退した日本の最強武器「和弓」!なぜ強かったのか解説

山内琉夢歴史プレゼンター
小倉城庭園の展示物 和弓のイメージ

弓は、旧石器時代より存在する飛び道具です。
遠距離攻撃の要であり、安全圏から一方的に敵を攻撃できるメリットがあります。
現在の飛び道具は、銃が一般的です。しかし、銃が登場するより前の日本では遠距離攻撃の主力を担っていました。

古来より世界中の戦争に用いられてきた弓ですが、日本で独自に進化を遂げた「和弓」は弓のなかでも最強といわれています。
なぜなのか、詳しくみていきましょう。

※本記事の内容は様々な方に歴史の魅力を感じていただけるよう、史実を大筋にした「諸説あり・省略あり」でお届けしています。

・和弓の特徴

小倉城庭園の展示物
小倉城庭園の展示物

和弓は、弓のなかでも最大級の大きさを誇る「全長7尺3寸(約221cm)」と定義されています。

この大きさにこだわった理由は、威力と飛距離です。

そもそも、戦場での弓の立ち位置は遠距離にいる敵を確実に倒すこと。
その目的を達成するため、弓を大型化するとことで「威力と飛距離」を補いました。

世界に目を向けると機動力や機能性に特化した小型弓が存在する一方、和弓と同じ用途で製造された大型弓「ロングボウ」も存在します。

しかし、ロングボウの最大射程は300m(有効射程距離150m)で、和弓の最大射程は450m(有効射程距離300m)。

和弓とロングボウの形状はさほど変わらないとされていますが、性能については圧倒的な差があります。

この大きな性能差は、材質によるものです。

ロングボウの材料となったのは主にニレやイチイの木でした。

これらの木は加工しやすい反面、硬すぎて耐久性が脆いというデメリットがあったのです。

弓において「シナリ(柔軟性と反発性)」というのは非常に重要で、硬すぎる材質は弓との相性が悪いといえます。

一方、和弓の材質には「竹」が使用されていました。

竹は、強靭・軽い・柔軟性・反発性など全ての特徴が弓とマッチしていたのです。

こうして最高の材質を得た和弓は、数十m離れた敵を射抜くのに適した最強の武器として君臨したのです。

小倉城の展示物 銃のイメージ
小倉城の展示物 銃のイメージ

同じ遠距離武器の鉄砲が到来した戦国時代でも、弓の汎用性や導入価格の手軽さもあり使い続けられています。

・和弓を扱うことができた日本人

小倉城庭園の展示物 和弓のイメージ
小倉城庭園の展示物 和弓のイメージ

最高の素材で完成した和弓ですが、身長の低い日本人が扱うのは至難の業でした。

厳しい訓練を積んだ弓兵でさえ、大半の者が本来のスペックを発揮できなかったといわれているのです。

そんな和弓を極めた人物も存在します。

なかでも有名なのが、平安時代の貴公子「那須与一」です。

彼は幼少期より、ツバメの足を狙って撃ち落とすという大人でも難しい技を練習していました。

そんな彼は馬に跨って和弓を扱うなど、器用な戦闘スタイルで戦場を支配。源氏の英雄・源義経も信頼する家臣のひとりとして活躍したといわれています。

・和弓の伝説

小倉城
小倉城

歴史上、和弓が最も活躍したのは「元寇」での戦いかもしれません。

元寇は、当時世界最大の国力を誇る最強国家モンゴル帝国が日本に侵攻してきた事件です。

結果として、日本は圧倒的に不利と思われた戦いを勝利しています。

勝因は「天候が味方した説」が通説として語られていますが、実は実力も決して劣っていなかったといわれているのです。

蒙古軍(モンゴル軍)の強みは、弓と集団戦でした。

それまでの日本では一対一の戦いが基本であり、初見の集団戦には苦戦を強いらたといいます。

そこで、日本軍は弓の性能差で戦いを有利に進めました。

蒙古軍が使用した弓は殺傷能力が低い代わりに、矢に猛毒を塗りつけたもの。

しかし、日本軍は長距離射程の和弓を使用していたため、蒙古軍の弓の射程圏外から安全に攻撃できたのです。

諸説ありますが、元寇での勝因には和弓の存在も大きく関わっていたと考えられています。

小倉城庭園
小倉城庭園

今回筆者が撮影した画像の和弓は、元寇の戦場となった九州の福岡県にある「小倉城庭園」で撮影したものです。

小倉城と同じ敷地内にあるため、一緒に観光することができます。

興味を感じた方は、足を運んでみてください。

歴史プレゼンター

歴史ライターとしての活動経験を持ち、今までに32都府県の歴史スポットを巡ってきました。実際に現地へ行くのが難しい方に向けて、取材した歴史スポットについて紹介します。また、歴史に興味をもったことがなかった方にも楽しんでいただけるよう、歴史偉人の意外な一面や好きな食事・おやつの紹介など、ワクワクするような内容をお届したいです。

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