ユニバーサルDH制に追い風?!直近10年間はナ・リーグの方がDH制を有効活用していたという事実
【ユニバーサルDH制を支持する選手たち】
今シーズンのワールドシリーズは、ブレーブスが4勝2敗でアストロズを下し、1995年来通算4度目のシリーズ制覇を達成した。
これでMLBは本格的にオフシーズンに突入する。今後はMLBと選手会の労使交渉や選手の移籍動向に注目が集まっていくことになる。引き続き情報を収集しながら、最新ニュースを届けていきたいと思う。
ところで、11月2日付けで『ユニバーサルDH制の採用で大谷翔平の二刀流は唯一無二の存在になる?!』というタイトルの記事を公開し、来シーズンからナ・リーグでもDH制が採用される可能性があることを報告した。
さらにユニバーサルDH制が採用されれば、大谷翔平選手の二刀流がさらに閃く存在になるだろうとも予想させてもらった。
現在はMLBと選手会の労使交渉の結果を待つしかないが、MLBとしてはユニバーサルDH制採用に現場の選手たちの多くが支持をしているという事実を見過ごすことはできないだろう。
【1986年以降の全ワールドシリーズを徹底比較】
ユニバーサルDH制の採用は、当然のごとく負担が減る投手から歓迎されるのは理解できる。ただ投手に止まらず、野手からも野球の質が向上するという観点から支持する選手が多い。
そうした現場の声とは別に、今回はア・リーグが1973年に採用して以降、DH制がMLBにもたらした影響について考えてみたい。果たしてDH制により、ア・リーグとナ・リーグの間に格差が生じていたのだろうか。
そこで1986年から変則DH制度(ア・リーグの球場のみでDH制を採用)を採用したワールドシリーズの成績を比較しながら、DH制度の有無から発生する違いを考えてみることにした。
例えばア・リーグのチームの本拠地球場での成績と敵地(ナ・リーグ)球場の成績を比較して、本拠地での成績が上回っているのなら、やはりDH制がア・リーグのチームに有利に作用していると推測できると考えた。
【やはり有利にDH制を使用していたア・リーグ】
まず1986年から2021年までの全35回(1995年はストライキのため中止)ワールドシリーズの成績を見ると、シリーズ制覇はア・リーグ18回、ナ・リーグ17回とほぼ互角だった。
一方で、ア・リーグの本拠地球場での通算成績は59勝39敗に対し、敵地球場の通算成績は46勝54敗と、大きな差があることが確認できた。
もちろんホーム&アウェイ方式は本拠地球場で戦うことが絶対的に有利なのは当然なのだが、実はさらに深掘りすると面白い傾向が浮かび上がってきた。それについては後述する。
とりあえずこのデータからは、ワールドシリーズでは両リーグがほぼ互角に戦っているものの、DH制が使える球場ではア・リーグが、使えない球場ではナ・リーグが優勢だということが理解できないだろうか。
【1997年の交流戦導入後は成績に変化が】
ただし1986年から1996年までは、ナ・リーグはワールドシリーズでしかDH制を使う機会がなかった。それが1997年から交流戦が実施されるようになり、ナ・リーグはシーズン中でもDH制を使うようになり、ア・リーグは逆にDH制無しで戦いを強いられるようになり、取り巻く環境は明らかに変化した。
そこで1997年以降からの成績だけに絞ると、ア・リーグの本拠地での通算成績は39勝26敗と相変わらず優勢に戦っている一方で、敵地球場での通算成績は34勝35敗と完全に肉薄しているのだ。
しかも1997年以降ワールドシリーズを制覇したのは、ア・リーグが14回、ナ・リーグが13回と互角なのは変わっていないのだ。
つまりア・リーグはDH無しでもある程度戦えるようになっている一方で、DH制を使った試合では依然として優位に戦っているということを意味していていると考えていいだろう。
【直近10年はナ・リーグがDH制を有効活用】
さらに直近の10年だけをみると、また違った傾向が見えてくる。
ア・リーグの本拠地での通算成績は13勝17敗と負け越す一方で、敵地球場での通算成績は逆に16勝14敗と勝ち越すという完全な逆転現象が起こっているのだ。
しかも直近10年ではナ・リーグが6度ワールドシリーズを制覇しており、間違いなくナ・リーグがア・リーグより有効にDH制を活用していることが窺い知れるだろう。
これらのデータが示すものとは、今やナ・リーグはDH制に対し何の抵抗もないどころか、むしろア・リーグ以上に有効活用しているということだ。とりあえずユニバーサルDH制が採用されたとしても、何の問題もなさそうだ。
改めて選手たちがユニバーサルDH制の採用に前向きな理由が理解できたような気がする。