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アルゼンチン人コーチが語る「僕の国なら秀岳館高校サッカー部監督&コーチは永久追放です」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:アフロスポーツ)

 秀岳館高校サッカー部のパワハラ事件、及び、学校の対応が話題になっている。筆者は、かねてからこの類の問題に警鐘を鳴らしてきたが、サッカーのみならず、日本の暴力指導は呆れるほど消えない。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20201128-00200007

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210529-00239389

 私自身、米国ネバダ州で公立高校の教壇に立っていた時期があるが、教師だろうがコーチだろうが、暴力を振るった時点で傷害事件を起こした「犯罪者」として、即、逮捕される。当然のことだ。

 が、我が国の社会は、いつまで経っても「日本の常識が世界基準では非常識である」ことを認識できない。

提供:イメージマート

 そこで改めて、アルゼンチン人サッカーコーチであるセルヒオ・エスクデロをインタビューした。※エスクデロの足跡や指導哲学を詳しく知りたい方は、拙著『ほめて伸ばすコーチング』(講談社)をお読みください。

 彼は元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表で、実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイングである。実の息子は、チェンマイ・ユナイテッド(タイ1部リーグ)所属のエスクデロ競飛王だ。

撮影:筆者
撮影:筆者

 「日本からは本当に暴力指導が消えませんね。アルゼンチンで暴力を用いた指導が発覚したら、その瞬間に解雇されます。そして、2度と指導者には戻れません。容認していたスタッフも同様です。

 高校の部活とクラブチームの違いがあるとはいえ、当たり前のルールです。暴力イコール犯罪ですから。

 秀岳館高校サッカー部で起きた事件は、アルゼンチンでは起こり得ません。でも、日本ってこういう輩をクビにしませんよね。永久追放にもしない。1年くらいの謹慎で、また復帰させてしまいます。だから、同じ事が繰り返されるんじゃないでしょうか。

 日本って、教育、教育って騒ぐくせに、肝心なところが甘いんですよ。傷害事件を起こした犯罪者を簡単に許してしまう。コーチライセンスだって剥奪しないんですから。医者だろうが弁護士だろうが、この種の事件を起こした人間は追放しなければ、反省しませんよ。

写真:Action Images/アフロ

 秀岳館高校サッカー部の監督、コーチ、校長は、子供の気持ちをまったく考えていません。人間性を磨こうとする姿勢すら見えない。ワールドカップに7大会連続で出場できるようになったとはいえ、こういう指導者が消えないうちは、日本のサッカーに未来は無いでしょう。

 少年団のコーチにも口汚く怒鳴ったり、意味も無く走らせたり、スクワットをさせたりする人が大勢います。子供たちの為じゃなく、自分の事しか興味が無いんです。

 秀岳館高校サッカー部の監督は、選手たちに謝罪動画を作るように指示していたそうですが、実にレベルが低い人ですね。話になりません。仮に秀岳館高校が良い結果を出したところで、何の意味もありませんよ。

 生徒たちは先生に逆らえない。言う事を聞くしかない。高校生プレーヤーは、監督には絶対にNOとは言えません。それが日本の根強い文化です。

写真:Action Images/アフロ

 アルゼンチンのユース選手が暴君監督から謝罪動画を作れ、なんていう理不尽なオーダーを受けた場合、拒絶して声明を出します。被害者として自分の顔を出し、社会に訴えるんです。世の中も市民の人権の為と、必死で動きますよ。その結果、加害者は家を突き止められて、同じ場所に住めなくなります。そのくらいの制裁が与えられて当然だ、というのがアルゼンチンです。

 日本の子供たちは大人にいいように使われて可哀相ですが、相手が犯罪に手を染めている場合、きちんと自分の意思を表さなければ。そういう<強さ>が無ければ、一流のサッカー選手にはなれませんね。

 本件は、日本サッカー協会も調査に乗り出したようですが、未来のためにも厳しく罰してほしいです。

 サッカーって本来、楽しいものです。秀岳館高校なんかに通っていたら、サッカーが嫌いになってしまう。校長や経営陣も、そのあたりをしっかり考えなければいけません」

 アルゼンチンだけでなく、米国で同様の問題が生じた場合も、こんな教師、監督、コーチは生涯同じ職には就けない。それは極めて自然なことである。

 日本では、いつまでこんな事が続くのだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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