右翼はLGBTパレードに参加してはいけないのか
6月下旬のロンドン・ゲイ・プライドのパレードに右翼政党UKIPが参加することが決まった。が、そのことがメディアに取り上げられてLGBTコミュニティー内で大きな物議を呼び、パレードの運営側がUKIPの参加申請を却下する決断に踏み切った。
ロンドン・プライド運営委員会は、この決断は政治的なものではなく、あくまでも参加者の安全を保証するためだと発表している。
実際、右翼UKIPがゲイ・プライドに参加するというニュースは、多くの人々の「えええっ?」的反応を引き出した。UKIPの党首は「HIV患者には高額な医療費がかかる」と発言したばかりだし、党員にはゲイカップルの養子縁組を「不健康」と言った人や、同性愛者を「ムカムカするクソおかま」と呼んで離党させられた人もいる。
だが、UKIPは上半身裸で聖ジョージ旗を振って暴れるスキンヘッドのおっさんたちの右翼政党ではない。(あれでも一応)PRを気にする政党だから、パレード参加は意外性があるしイメージアップにつながると踏んだのだろう。しかも、UKIPには実際に同性愛者の党員が数千人いて、今回の参加は彼らのグループによる申請だったらしいから、けっしてゲイ・プライドの破壊分子になるのが目的ではなく、平和的に参加したかったのだろう。
「これは多様性とフリーダムにとって悲しい日です。より大きな共同体の一員として、これらの人々が自分自身を表現することを禁じられたのですから」
という声明をUKIP側は発表している。
ゲイ・コミュニティーでは、多くの人々が「UKIPのプライドへの参加禁止」を求める運動に加わり、オンラインで嘆願書に署名していた。クィア・アクティヴィストのデヴィッド・ノートンはガーディアン紙に寄稿した記事の中でこう書いている。
その一方で、少数派ではあるが、UKIPを参加させるべきだという声もあった。UK版Pink Newsには以下のような記事も上がっている。
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今年のロンドン・プライドには気になることがもう一つある。
それは、映画『パレードへようこそ』のモデルになったLGSM(レズビアンズ・アンド・ゲイズ・サポート・ザ・マイナーズ)のメンバーたちがパレードの先頭を歩くことをオファーされ、断ったというニュースだった。
LGSMは1984年から翌年にかけて炭鉱労働者のストライキが行われたとき、ロンドンで彼らのために資金集めに奔走し、炭鉱の人々を支え続けた同性愛者グループだ。ホモフォビックで差別的な地方の労働者と、都会から来た同性愛者たち。そのあり得ない組み合わせの友情は多くの人々を感動させたが、これは本当にあったことであり、LGSMも実在している。
英国で大きな話題になった映画なので、ロンドンのプライド運営委員会はLGSM(映画中ではGLSMになっている)のメンバーにパレードの先頭を歩いてもらおうと考えた。オファーを受けたLGSMのメンバーは「労働組合のLGBTグループと一緒に歩きたい」と提案した。あの映画を見た人ならわかるだろうが、それは彼らには重要なことだった。同性愛者と労働者が肩を並べてゲイ・プライドの先頭を歩いてこそ、今年のパレードは特別なものになる筈だった。
が、運営側はその提案を却下した。労働組合は人数が多すぎるので不可能だという。LGSMは「では我々が先頭を歩き、少し離れてその背後を労働組合が歩くのはどうだろう」と提案したが、運営側が「労働組合はLGSMから1マイル(1.6km)離れたCブロックで行進して欲しい」と曲げなかったため、LGSMは先頭を歩くことを断ったそうだ。
あの映画のヒーローは同性愛者たちだけではなかった筈だ。あれは、自分たちを差別していた人々を助けた同性愛者だけを「素晴らしい」と讃えた映画ではなかった。
差別的で見識の狭いクラスタと、超リベラルなクラスタ。が、不信や憎悪の中で互いを知り、怒ったりぶつかったりしながら変わって行く、いわばその両者の結びつきこそがヒーローだったのであり、それこそがこの国を前進させてきたということを思い出させる映画だったのだ。
それを1マイルも離れたところで歩けというのが現代という時代の後退ぶりを象徴している気もするが、それを知っているのか、LGSMの共同設立者マイク・ジャクソン(映画中でもマイク。ジョセフ・ギルガンが演じている)は今回の件についてこうコメントした。
「パレードを先導できればとても嬉しかっただろうね。でも、僕たちはフロントライン(前線)にいる必要はない。正直なところ、僕たちはずっとピケットライン(監視線)にいたということのほうが重要だからね」。
ピケットラインは外側からの妨害だけを見張っているわけではない。内側をもまた監視しているのだ。