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女性の育休取得率8割とする記事にモヤモヤ。働く女性の半数近くが第一子の出産を機に退職しているのに…

小酒部さやか株式会社 natural rights 代表取締役
(写真:アフロ)

カネカやアシックスのパタハラ(パタニティハラスメントの略)や男性育休義務化などが話題になるたびに、記事内でよく記載される「女性の育休は8割にもなるのに、男性の育休はこんなに少ない」という比較の一文。

以下記事内にも

「女性は8割以上が育児休業を取得するのに比べ、男性の取得率はわずか6%にとどまっている」という一文がある。

◆アシックス「パタハラ」裁判、男性の育児休業めぐり社員が訴え

しかし、日本は未だに第一子の出産を機に約5割の働く女性が仕事を辞めている

(以下図表より、出産前に仕事をしていた女性を分母にした場合、46.9%が退職)

出典:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」
出典:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」

◆出典:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」

上記の図表2-4-3によると、第一子を出産した女性全体(専業主婦も含む)のうち育児休業を利用し就業継続したのは、28.3%となっている。

なお、この図全体の分母は「第一子が1歳以上15歳未満の初婚どうしの夫婦」となっており、男性の場合は配偶者(妻/女性)について回答している調査である。

一方、「女性は8割以上が育児休業を取得する」の根拠になっている以下の図4については、男性と女性で分母が異なる。

出典:厚生労働省 政府統計『「平成 29 年度雇用均等基本調査」の結果概要』
出典:厚生労働省 政府統計『「平成 29 年度雇用均等基本調査」の結果概要』

◆出典:厚生労働省 政府統計『「平成 29 年度雇用均等基本調査」の結果概要』

女性の場合は、平成27年(2015年)10月1日から平成 28年(2016年)9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、平成29年(2017年)10 月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は 83.2%。

つまり、分母は出産に至るまで就労継続できた女性で、上の図2-4-3に当てはめると就業継続している38.3%を分母にしていることに相当し、育児休業を取得した83.2%は就業継続(育児休業利用)の28.3%に相当する。妊娠を機に自主退職した女性や、マタハラに遭い不本意ながら退職させられたような女性は含まれていない。

もっというと、産休を取得した女性を分母とし、そのうち育児休業を取得した女性が83.2%だったというふうに言えるのではないか。

しかし、男性の場合は、平成 27年(2015年)10月1日から平成28年(2016年)9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、平成29年(2017年)10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は5.14%

こちらの分母は、専業主婦も含んだ出産した女性を配偶者とする男性となっている。

分母が異なる2つの割合いを、まるで同じ分母かのように表記したり記載したりするのは誤解を招く。

もちろん、図表2-4-3と図4とでは、調査の時期や調査機関も異なるので完璧な比較はできないが、働く女性の8割は育休を取得できている「だから私も大丈夫!」という誤解を生まないために、補足説明として述べさせていただいた。

株式会社 natural rights 代表取締役

2014年7月自身の経験から被害者支援団体であるNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より「マタハラ問題」、11月花伝社より「ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~」を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rightsとなるよう講演や企業研修、執筆など活動を行っている。

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