U-19日本代表、23名中12名が海外組の中国との初戦へ向けて最終調整を実施
鈴木ジャパン、ネピドーでの最終調整
10月8日、U-19日本代表がAFC・U-19選手権を前にした最後の練習を終えた。
灼熱の太陽が照り付ける中で行われた15時からのトレーニングは、大会前日とあって負荷は全体に軽め。鈴木政一監督によれば、一回追い込んでコンディションを落としてからの調整段階にあるという。DF内山裕貴(コンサドーレ札幌)が日本国内で行った練習試合で接触プレーで脳震とうを起こしてしまい、大事を取って初戦の出場を見送ることになりそうなのは誤算だったが、メンバーの入れ替えを要するような致命的な傷病者はなし。「まず順調に来ることはできた」(鈴木監督)。
体幹トレーニングなどを兼ねたウォームアップから、6対2、あるいは7対2でのいわゆる“鳥かご”の練習を経て、ピッチを縦方向に4分の3サイズに制限した紅白戦を実施した。スタメン組には事前の練習試合と同じメンバーが名を連ねた。GKは中村航輔(柏レイソル)、DFは右から広瀬陸斗(水戸ホーリーホック)、中谷進之介(柏レイソル)、三浦弦太(清水エスパルス)、坂井大将(大分トリニータ)。中盤も右から関根貴大(浦和レッズ)、松本昌也(大分トリニータ)、川辺駿(サンフレッチェ広島)、金子翔太(清水エスパルス)が入り、前線に越智大和(産業能率大学)と南野拓実(セレッソ大阪)が並ぶ形となった。
続くセットプレーの練習も同じメンバーでこなしており、初戦の先発メンバーは固まっているのだろう。鈴木監督も「あくまで積み上げてきた自分たちのサッカーを見せることが大事」と、手の内を隠す気はないようだ。その上で、中国との第1戦に向けた指揮官の構え方は慎重だ。「当然、初戦は硬くなる部分がある。悪いときにしっかり守らないといけない。90分の内に相手の時間帯は絶対にある。チーム全体が共有した中で、ゲームをコントロールしながらサッカーをやれればいい」と、“自分たちのサッカー”ができなくなってしまうケースも想定している。
海外組だらけの中国代表
中国とは昨年の1次予選で対戦済みで、そのときは1-1のドローに終わった。鈴木監督は「決して崩されてどうのこうのという試合じゃなかった。2点目が取れずにオウンゴールで同点になった」と振り返った上で、「カウンターとセットプレーを注意しないといけない」と考えられる日本の失点パターンに言及した。
選手の見方も共通しており、金子は「守備的でカウンターが強い印象ですね。前線に一人、ちょっとゴリゴリ系の選手がいて、しっかり守ってロングボールで一発狙ってくる感じだった」と言う。
もっとも、中国が当時のままかはフタを開けてみないと分からない部分も多い。日本戦を前にしてU-19中国代表・鄭雄監督は「とにかくチームとしての準備の時間がなかったんだ」と強調していたが、その理由は海外組の多さにある。今回の中国は、登録メンバー23名中、実に12名が海外でプレーしている選手たちなのだ。
日本でプレーしているDF高准翼(カターレ富山)を始め、DF晏紫豪(スポルティング/ポルトガル)、MF唐詩(ボタフォゴ/ブラジル)、張修維(リヨン/フランス)、韋世豪(ボアビスタ/ポルトガル)、FW向栢旭(サンテティエンヌ/フランス)、桂宏(セビージャ/スペイン)など世界各地に選手たちは散っている。スカウトされた選手だけでなく、留学のような形で行っている選手もいるようだ。長期合宿でチームを鍛える従来の方法論とは異なる形で、「個」を磨いてきた中国の育成がどういう花を咲かせるのか(あるいは枯れているのか)は、この初戦におけるちょっと興味深いポイントと言えるだろう。
まずは大事な初戦で白星を
いずれにしても、世界切符奪還に向けて挑むこの大会において、初戦の持つ意味は大きい。
主将の三浦は「今までずっと一緒にやって来た仲間が外れてしまっていたりもしますし、国のために戦うことの意味の大きさも、もちろんあります。日本の同世代の選手たち全員の『代表』としてやるんだということは、みんなが思っている」と、力強く意気込みを語った。一方、エースの南野は「僕一人でどうこうするようなサッカーじゃないし、チームみんなが勝利に向かってやるべきことをやるだけだと思います。初戦という、大事な一戦。そこでゴールを決めてチームに貢献できればと思う」と、静かに語ってくれた。
まずは中国、続いてベトナム、そして韓国と続く死のグループにおける3連戦。アジアの頂点を目指すU-19日本代表の挑戦が、いよいよ始まろうとしている。