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霜注意報が冬に発表されない理由

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
霜(写真:イメージマート)

 3月9日、宮城県全域に、霜注意報(対象は翌10日朝)が発表されました。宮城県に霜注意報が発表されたのは、去年11月7日以来です。冬は霜が降りるはずなのに、冬の間は霜注意報は一度も発表されていません。これはなぜでしょうか?

早霜・遅霜への注意喚起が目的

 霜注意報の目的は、秋の早霜、春の遅霜による農作物の被害に注意を呼び掛けることです。ですから、霜が降りるのが当たり前で、なおかつ農作物が少ない冬の間は、そもそも注意報が発表されないというわけです。

 いつから霜注意報を発表するかは、その年その年の農作物の生育状況によって変わります。宮城県の場合、この春の霜注意報の発表期間は、3月10日からとなっています。

最低気温3度前後でも注意

 霜は、空気中の水分が凍って植物などに付着する現象です。水分が凍るということは、気温が0度以下でなければいけません。しかしながら、観測された気温が3度前後でも、霜が降りることがあります。なぜでしょうか?

 気象庁のアメダスでは、気温は地上1.5mの所で観測しています。一方、霜が降りる地面付近は、放射冷却によって冷えるため、そこに気温差が生まれます。1.5m付近の気温が3度前後でも、地面付近は0度以下になっていて、霜が降りることがあるというわけです。

 なお、空気が乾燥していたりすると、露点温度(水蒸気が凝結し始める温度)が低くなり、気温が下がっても霜は降りにくくなります。

放射冷却時の気温イメージ(筆者撮影の写真を加工)
放射冷却時の気温イメージ(筆者撮影の写真を加工)

遅霜による被害

 去年4月、宮城県の蔵王町や角田市で、特産のナシが遅霜によって大きな被害を受けました。蔵王町では、被害額が3億円以上にのぼり、過去最悪の被害であったと言われています。

 この年、4月上旬~中旬にかけて、何日か強い冷え込みがあり、そこで霜が降り、被害が拡大したとみられています。

 最低気温-3.4度と、最も冷え込みが強まった4月11日朝の天気図を見ると、日本列島全体が広く高気圧に覆われ、よく晴れていました。放射冷却が強まったことは、容易に想像がつきます。

蔵王の4月の最低気温(筆者作成)
蔵王の4月の最低気温(筆者作成)

2021年4月11日午前6時の実況天気図(ウェザーマップ提供)
2021年4月11日午前6時の実況天気図(ウェザーマップ提供)

 昼間はだいぶ春らしくなってきましたが、東北地方は4月にかけて、まだまだ朝は氷点下の冷え込みになる日があります。上空に寒気が残り、かつ穏やかに晴れる朝は、特に気温が下がりやすくなりますから、遅霜に十分な注意が必要です。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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