MLBが所属全選手のベネズエラ・ウィンターリーグへの参加を禁止へ
【米主要メディアが一斉に報道】
ESPNら米主要メディアが22日報じたところでは、MLBが全所属選手(マイナーリーグ選手も含む)に対し、ベネズエラ・ウィンターリーグへの参加を禁止することを決定したという。
MLBは、トランプ政権が現在ベネズエラのマドゥロ政権に対し、原油の全面禁輸など経済制裁を加えていることを考慮し、米国の政策に追従する判断を下したようだ。
ESPNのジェフ・パッサン記者は、今回の決定に関するMLBの声明を紹介している。
「ドナルド・トランプ大統領が対ベネズエラの大統領令に署名したことで、MLBは関係政府機関と密接に連絡を取り合ってきた。MLBは、我々の政府が履行している政策を全面的に支持する。ベネズエラ・ウィンターリーグへの敬意を示すとともに、MLBは関係政府機関から所属選手の同リーグへの参加が大統領令に違反していないとの判断が届くまで、同リーグへの関与を停止する」
【ドミニカに次ぐMLB選手輩出国】
MLBファンなら承知のことだと思うが、ベネズエラはドミニカに次ぐMLB選手輩出国だ。今シーズンの各チームの開幕ロースター25人にも、ドミニカの102人に次いで68人のベネズエラ出身選手が名を連ねている。
その中には昨年のナ・リーグ新人王のロナルド・アクーニャJr.選手、現在ヤンキースでチームトップの29本塁打を放っているグレイバー・トーレス選手、2012年にア・リーグ三冠王を獲得したミギュエル・カブレラ選手など、若手からベテランまでトップ選手がズラリと揃っている。
これまでこうした選手たちの中には、オフになると母国に戻りウィンターリーグに参戦している選手が少なくなかったが、これが全面的に禁止されることになった。
【過去には野茂英雄氏も参戦】
75年の歴史を有するベネズエラ・ウィンターリーグは、ベネズエラ出身選手だけしか参加しないわけではない。これまでも翌シーズンでの飛躍を目指す若手有望選手がMLBチームから派遣されてきたり、新たな契約を獲得するため実戦を積み、MLBスカウトにプレーを披露することを目的に、未契約ベテラン選手たちが数多く参戦してきた。野茂英雄氏もその1人だ。
さらに十分な年俸を得ていないマイナーリーグ選手たちにとっては、ウィンターリーグはオフの貴重な収入源となっていた。むしろメジャーリーグ選手よりも彼らの方が、ウィンターリーグ参加が禁止されることは切実な問題になる可能性が高い。
【アカデミーも続々撤退】
実は今回の措置がなされる以前から、MLBは政情不安が続くベネズエラから撤退傾向にあった。
かつてはほとんどのチームがドミニカとベネズエラにアカデミーを開設していたが、ここ数年でベネズエラのアカデミーを閉鎖しドミニカのアカデミーに統合しているのだ。今ではドミニカのアカデミーに、中南米各地の若手選手が集結している状況だ。
パッサン記者も指摘しているが、最近は12~13歳の有望選手が家族とともにベネズエラからドミニカに移住し、MLBと契約できる16歳までアカデミーに所属する流れが増えてきているようだ。
【かつてのキューバ選手と同じ境遇に?】
またパッサン記者は関係者の話として、今回のMLBの決定に対し、マドゥロ政権がMLBに対しベネズエラ選手との契約を禁止する措置をとる可能性を指摘している。
そうなれば、かつて米国と国交断絶状態にあったキューバのような状況になってしまう。選手たちはMLBでプレーすることを目指し、命がけで亡命を繰り返すことになりかねない。さらに若手選手のドミニカ流出も制限されることになるかもしれない。
今ではベネズエラ・ウィンターリーグに含め、ドミニカ、プエルトリコ、メキシコ、キューバの各リーグ王者が集結するカリビアン・ワールドシリーズはオフシーズンの風物詩になっている。
果たしてベネズエラ・ウィンターリーグはこの冬、無事に開幕することができるのだろうか…。