15歳少年がドローンレース世界大会で優勝 空の新感覚パフォーマンス
物流や警備など幅広い分野での活用が期待されているドローンが、スポーツやエンターテイメントにおいても新風を巻き起こしています。
激しいアップダウンを交えた圧巻レース
3月11日・12日にドバイで開催された、世界最大のドローンレース「World Drone Prix」。賞金総額は100万ドル。パイロット、ナビゲーター、ピットクルー、技術者ら最低4名でチーム構成された、世界26カ国150チームが集結しました。
優勝者は、英国チーム「Tornado X-Blades Banni-UK」に所属する15歳の Luke Bannister氏(上記動画の最後に登場)。決勝戦のナイトレースでは、ネオン輝く屋外コースを時速100kmもの猛スピードで駆け抜け、観客を熱狂させました。レース中にはピットインが行われ、コース上には一度だけ通れるショートカットレーンなどが設置されています。勝ち残るにはチーム全体としての総合力・戦略性が求められており、まさにF1レースさながらです。
ドローンの操縦経験のある方ならお分かり頂けると思いますが、初めてコントローラを手にしたユーザーにとって、思い描いた動きをドローンにさせるのは非常に難しいものです。そのため、ドローンレースのパイロットの多くがFPV(一人称視点)ゴーグルを装着しています。これにより、パイロットはまるでコックピットに座っているような感覚になり、ドローンからの視点を通じてフライトが行えるようになります。この飛行体験については、VRヘッドセットを用いたFPVゲームのリアル版とも捉えられるかもしれません。
この他にも、今年10月にはハワイで賞金20万ドルのドローンレース大会が行われます。それに加え、ドローン・レーシング・リーグもこのほど開幕しました。同リーグでは、コース上に設置された障害物を右に左に回避しつつ、アップダウンについても機敏さが求められます。立体感ある動きを交えた迫力溢れる激しいレース展開――、ドローンのプロパイロットがe スポーツゲームファンの心を掴み始めています。
光と音楽が織りなす新体験
照明を備えた100機のドローンが、オーケストラの生演奏に合わせて踊っていく――。そんな新感覚の光のショーが昨年末、ドイツのハンブルグで行われました。ドローンが上下左右へ、時にランダムに、時に規律正しく動き、模様やメッセージを描き上げていきます。全機体の動作はコンピュータで一括管理されており、空に浮かび上がる幻想的な光は、観客に息つく暇を与えません。この空のスペクタルを仕掛けたのがインテルです。1度に飛ばしたドローンの数で、2015年末時点のギネス世界新記録に認定されました。
日本において、夜の空を彩る光のショーといえば、打ち上げ花火がまず頭に浮かぶでしょう。しかし、花火職人は年々数を減らしており、その開催場所には多くの規定が存在しています。もちろんドローンの集団飛行についても厳しい規定が存在しますが――、連携できるドローンの数がさらに増え、その精度が高まれば、ドローンパフォーマンスはイベント主催者の選択肢の1つに成りうるでしょう。
実際、インテルのブライアン・クルザニッチCEOは世界最大級の家電展示会CES2016の基調講演において、「リスクを気にすることなく飛ばせるようになるでしょう。このようなドローンは、打ち上げ花火を置き換える存在になるかもしれない」と話しています。
時には危険な存在のように扱われたり、経済価値で議論されがちなドローンですが――、人々を熱狂させるレースや美しいライトショーを作り出す力も持ち併せています。新たなテクノロジーが、スポーツ、コミュニケーション、エンターテイメント、アートといった領域を刺激することで、新たなポジティブ体験を提供する可能性に期待したいと思います。