旅館で‶カンヅメ”になって文豪気分に浸る!?「小説家に愛された温泉地」5選
文人墨客に愛された温泉は歴史が長いのはもちろんのこと、湯の街情緒があり、源泉の質が高いところが多い。そのような温泉地や文豪ゆかりの宿を訪ねて、小説家気分を味わうのも、温泉の楽しみ方のひとつだ。宿に仕事を持ち込んで、作家さながらの「缶詰(カンヅメ)」を体験しても面白いだろう。いつもより仕事が捗るかもしれない。
そこで、今回は小説家に愛された温泉地を5カ所紹介したい。
越後湯沢温泉(新潟県)
川端康成の小説『雪国』の舞台となった温泉地。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な一文から始まる名作だ。川端康成が執筆のために滞在した旅館「高半」には、川端康成が滞在した「かすみの間」のほか、越後湯沢温泉ゆかりの作家にまつわる資料を展示した「文學資料室」もある。川端も入浴した柔らかな硫黄泉は「卵の湯」として知られ、源泉かけ流しで提供されている。また、湯沢町歴史民俗資料館「雪国館」(外部リンク)は、小説『雪国』に関する展示が充実している。
城崎温泉(兵庫県)
関西を代表する温泉地。大谿川沿いの柳並木と木造の建物が風情をかもし出す街全体をひとつの旅館と見立て、外湯をめぐるのが城崎温泉のスタイル。浴衣のまま個性豊かな7つの外湯を巡る人でにぎわう。『城の崎にて』を執筆した志賀直哉は、山手線の事故による怪我の療養のために滞在し、老舗旅館「三木屋」を常宿とした。記録に残っているだけでも「三木屋」を13回訪れているという。温泉街にある城崎文芸館(外部リンク)は志賀直哉をはじめ城崎温泉ゆかりの作家にまつわる展示がされている。文学散歩に打ってつけの施設である。
星野温泉(長野県)
日本有数の避暑地・軽井沢の温泉。全国の温泉地に展開する「星野リゾート」の原点といえる場所で、「星のや 軽井沢」はもともとこの地で「星野温泉ホテル」の名で営業していた。避暑地に立地していたこともあり、北原白秋、与謝野晶子、島崎藤村、寺田寅彦、若山牧水といった文人墨客が訪れている。現代に入っても、ミステリー作家の内田康夫が居を構えるなど、軽井沢を拠点として活動する作家は多い。なお、2024年9月21日には軽井沢を舞台に「軽井沢本の學校『温泉×文学』医療・文化・芸術から考える《マインドフロネス》な時間」(外部リンク)という温泉と文学をテーマとしたトークライブが開催予定だ。
湯河原温泉(神奈川県)
首都圏からもアクセスしやすい歴史ある温泉地。豊富な源泉と山海の自然、食べ物に恵まれている。夏目漱石、芥川龍之介、谷崎潤一郎、国木田独歩、島崎藤村、山本有三など、湯河原を気に入って滞在した文人墨客は数多い。なかでも旅館「加満田」は、水上勉や坂口安吾ら多くの文人墨客に愛された老舗宿。日本で初めて執筆のために「缶詰(カンヅメ)」にされたのは評論家の小林秀雄だと伝わるが、その舞台となったのが同宿である。また、温泉街屈指の散策スポットである万葉公園(外部リンク)には、国木田独歩、佐佐木信綱など文人の歌碑も点在する。
伊香保温泉(群馬県)
365段の石段街に旅館や店舗が立ち並ぶ温泉街。昔ながらの射的場や昭和感の漂うスナックもあり、タイムスリップした気分にもなる。石段街の脇の路地などいろいろ寄り道をしながら温泉街を散策するのが楽しい。夏目漱石や与謝野晶子などの作家が足を運んだ温泉地で、なかでも小説『不如帰』で有名な明治の文豪・徳冨蘆花は伊香保を気に入り、老舗宿「千明仁泉亭」を定宿とした。徳冨蘆花記念文学館(外部リンク)では、蘆花が定宿としていた旅館の離れが復元されている。