「トットちゃん!」が“昼の朝ドラ”と大人気。NHKを意識している? テレ朝・服部プロデューサーに聞く
11月から清野菜名がトットちゃんとして登場
たくさんの話題を提供した倉本聰の『やすらぎの郷』終了後、同じ昼の帯ドラマの枠の第2弾としてはじまった『トットちゃん!』が人気だ。黒柳徹子の自伝的小説『窓ぎわのトットちゃん』からもエピソードを取り入れながら、大石静が、黒柳に取材して描いた、トットちゃんが生まれてから現在の唯一無二の存在になるまで。
芸術家でちょっと変わり者のお父さん(山本耕史)、そんなお父さんと情熱的な恋をして結婚した、頼もしいお母さん(松下奈緒)、子供の個性を大事にして各々の可能性を拓いてくれるトモエ学園の先生(竹中直人)などに育まれてトットちゃんはのびのび成長し、やがて女優の道へーー。
11月の最初は、学生時代のトットちゃん。これから社会人になって、知られざる恋の物語も描かれる。
いまなお活躍し続ける黒柳徹子(ドラマの前の番組が彼女の『徹子の部屋』)の半生を通して昭和という時代を描く。それを、月から金まで毎日15分間、連続して放送するところは、NHKの朝ドラみたいな印象を受けなくもない。
例えば、タイトルバックの雰囲気や、松下奈緒(朝ドラ『ゲゲゲの女房』、古村比呂(朝ドラで黒柳の母の話を描いた『チョッちゃん』のヒロイン)などの出演俳優の顔ぶれ、ミニチュアで世界観を出す演出など、朝ドラで見たことがあるようなものがちらほら。歴史的な出来事やその頃の庶民の生活などをていねいに再現するところも、最近の朝ドラ以上に朝ドラしているという視聴者の声もある。最近の朝ドラは新しい視聴者に向けて実験しているところもあって、シニア層に向けオーソドックスな昼ドラの雰囲気こそ、古き良き朝ドラのように思えてもおかしくはない。
やがて徹子は、NHKの専属女優になって活躍していくので、NHKの場面も出てくるとか。連続ドラマの女王・朝ドラを意識しているのか、
昼ドラならではアプローチは? 東海テレビの昼ドラに長年携わってきた、昼ドラの達人・服部宣之プロデューサーに話を聞いた。
☆ややネタバレなところもございますので、ご注意ください。
朝ドラは意識するか
ーー服部さんは、東海テレビの昼ドラマを長年手がけていたそうですが、昼ドラをやるためにテレ朝に移ったわけではないのですか?
服部 そうではないです。ぼくがテレ朝に入ったあと、倉本聰さんの『やすらぎの郷』の企画が持ち上がり、会社から、帯ドラマをやることになった……と話がありました。まさか、会社変わってまた帯ドラマをやるとは夢にも思っていませんでしたが(笑)、おかげでノウハウを生かすことはできました。撮影に使っているスタジオも、東海テレビの昼ドラで使っていたスタジオですし、スタッフも当時の仲間を集めました。ただ『やすらぎの郷』はぼくらがこれまで作ってきた帯ドラマとは違う規模でしたし、まったく新しいものに挑戦するつもりでやりました。
ーー規模的には『トットちゃん!』はどれくらいに?
服部 『トットちゃん!』のほうがどちらかというと、東海テレビの昼ドラのノウハウを持ち込んでいますが、やはり、そのまま踏襲するのではなく、東海ではできなかったことをやりたいと思っています。例えば、戦前・戦中・戦後から昭和の最後まで、三世代にわたる壮大な昭和史を書くにあたり、建物や小道具などがNHKさんの朝ドラに比べるとどうしても見劣りしますが、今回は、負けずにいこうと(笑)、かなり奮闘しています。とりわけ、トモエ学園の電車の教室は、しっかり作り込みました。
ーー予算的がたっぷりあるってことですか?
服部 たっぷりではないです(笑)。やはりNHKさんや夜のドラマと比べたら予算は少ないですし、毎日やっていく以上、どうしてもお金がかかりますので。
ーーNHKのお名前が出ますが、『トットちゃん!』はどこか昔ながらの朝ドラの雰囲気がありますし、タイトルバックの雰囲気、キャスティングなどにも朝ドラを意識したところを感じますが、実際、意識されたのでしょうか。
服部 狙っているわけではないですが、ぼくも朝ドラが大好きだし、脚本家の大石静さんは、『ふたりっ子』に『オードリー』と朝ドラを手がけていらして、朝ドラに対する思いやノウハウがおありです。何か好きな世界をつくろうとすると、結果オマージュじゃないですけど、そういうニオイになるのかもしれませんね。
ーー同時期に放送されていた『ひよっこ』と『やすらぎの郷』が、同じ時期の話で、似た感じのセリフが出てきたり、同じ歌がかかったりすることがあって、そのリンクが面白かったです。
服部 『やすらぎの郷』の倉本さんは昨年のうちに脚本を書き上げられていて、『ひよっこ』の岡田惠和さんは放送の終盤ギリギリまで書かれていたとはいえ、そこで何かってことはないと思いますが、基本的にクリエーターの方々が好きなものや、時代に対する印象って似た部分あるんじゃないでしょうか。とくに優れている方は優れた感性というか嗅覚が同じなんじゃないかと。
ーー視聴者敵には面白いですが。
服部 朝ドラが優れているのは、毎日見せるノウハウをおもちじゃないですか。週1回とは確実に違うものがあって。それをつきつめていくと、テイストが似ていくっていうのはあるのかなと思います。ぼくが東海テレビで昼ドラをやっていたときは、愛憎ドロドロ昼ドラと言われていた中島丈博さん(『真珠夫人』や『牡丹と薔薇』など)と組むことが多くて、どちらかというと刺激系のほうだったので、若干、ぼく自身の昼ドラ経験とは違うと思うんですが(笑)。それもあって、今回改めて、NHK の朝ドラを見られるものはできるだけ見直しました。
ーー全部というのは。
服部 自分が好きだったシリーズを。ここ最近の作品でいうと、岡田惠和さんとは『県庁おもてなし課』でご一緒していたこともあって、『ひよっこ』は毎日観ていて、大好きですし、『ちりとてちん』と『風のハルカ』が好きだったので、全部見直しました。当然、大石さんの『ふたりっ子』も。『風のハルカ』の大森美香さんの『あさが来た』も見ました。
大石静さんならではのラブストーリー
ーー刺激というと、『トットちゃん!』第1話では、トットちゃんのお母さんとお父さんの馴れ初め部分で、やや刺激的なシーンがありましたね。
服部 よくそう言われますが、そんなつもりはなく(笑)。大石さんと話し合った結果なんですよ。大石さんはラブストーリーがお得意で、それがひじょうに生きた部分ですよね。ラブストーリーといえば、今回、大石さんに、『窓ぎわのトットちゃん』ドラマ化の企画をもっていったときに、まず、トットちゃんのご両親の出会いの話にすごく乗られていたんです。この出会い方で徹子さんが生まれたことがすごく面白いとおっしゃって。だから、ご両親の出会いを少し厚めに描いているんです。
ーーご両親の出会いがロマンチックで、徹子さんの知られざるロマンスが描かれることも売りになっていますね。
服部 クライマックスはトットちゃんのロマンスになりますが、その扉をノックしたのも大石さんです。大石さんがずっとその話をやりたがっていたんですが、脚本を書くにあたって徹子さんに取材を何度かしていたときに、大石さんがぼくに言え言えっていうんですけど、さすがにちょっとそれは…と思って、ぼくが言わなかったら、大石さんがしびれを切らして、徹子さんの恋愛を描きたいと自らおっしゃって。でもそのときは一回、徹子さんに「ふーん」ってかわされたんですけど(笑)、1ヶ月くらい空いてから、「話してもいいわ」とおしゃってくださった。それで、再び、大石さんと会いにいって、ある恋愛エピソードを話していただき、それをベースにフィクションにして、大石さんが素敵な物語をお書きになられました。
ーー本邦初の恋愛エピソードになるんですか。
服部 ……と思います。もちろんフィクションになっていますが、これだけドラマでじっくり描くことははじめてですし、全部の台本を徹子さんに読んでもらって、OKは頂いています。でもこれがまたうまい具合に、お父さんとお母さんのラブストーリーにはじまって、最後、徹子さんも激動のラブストーリーになるので、物語としてトータルのパッケージ感がいいというか、ぼくらが想像していた以上にきれいな帯ドラマになっていると思います。全60回観てくださった方に、その甲斐を感じてもらえるんじゃないでしょうか。
ーーもう台本はできているんですか?
服部 もう出来上がりました。
オトナの観賞に耐えうるものでありたい
ーー今回、3ヶ月なんですよね。『やすらぎの郷』の半年から3ヶ月に縮めてしまったのはなぜですか?
服部 これはもう編成的な問題で、1クール(3ヶ月)になりました。どちらかといえば、2クールぶち抜きでやった『やすらぎの郷』が異例だったのかもしれません。
ーーテレ朝さんも朝ドラのように半年やるんだと思っていたので、ああ。3ヶ月になったんだって。ちょっぴり……。
服部 残念ですか(笑)。
ーーええ(笑)。黒柳徹子さんの話だから、たっぷり観たかったです。3ヶ月ごとに帯ドラマを企画するのは大変じゃないですか?
服部 それに関しては免疫ができていますから。なにしろ、10何年それをやってきたので(笑)。
ーー東海さんは3ヶ月単位ですね。つまり、東海テレビさんのように濃いドラマを今後どんどん見ることができる?
服部 東海の昼ドラがはじまったとき“よろめきドラマ”と言われた、主婦の方がおもわずよろめいちゃう恋愛をお見せしようっていうコンセプトでしたが、テレ朝の昼ドラは、もう少しオトナの方がじっくり見られるものにしたいと思っています。オトナの方がじっくり見られるものを提供することが、倉本さんがこの枠を立ち上げたある種の理念と思いますので、それはちゃんと踏襲したうえで、毎回、いろいろなテイストのものをご用意したいと考えています。
ーー倉本さんの理念について、もう少し、教えていただけますか。
服部 大人の方の大人のための大人によるドラマがいまはないと、倉本先生はおっしゃっていました。それは、年齢を経た我々が見て楽しめる、じっくり描いた人間ドラマであること、そして、それを毎日放送することで、
内容をちょっとずつ紐解いていく楽しみがもたらされるのだと、倉本先生がおっしゃっていましたし、大石さんも同じようなことをおっしゃっていました。
ーー毎日やることの大事さがある。
服部 テレビはもともと日常の娯楽ですから、毎日ちょっとずつ見られるドラマは、テレビの形として正しいのではないかとおっしゃっていて。それはぼくも正しいと思っています。今のテレビ離れに歯止めをかけるためにも、毎日テレビの前に頂く時間を作る…というのは本当に大切なことだと思います。
ーー原点のような。
服部 そうです。ある意味、テレビの原点に立ちかえるじゃないですけど、毎日、同じ時間にテレビの前に座ると、あたたかい気持ちになるとか、ちょっと笑えるとか、泣けるとか、まあ、いろいろな方向性があると思いますが、なんかそういうものをつくりたいなと思います。
ーーオトナのドラマというところで、倉本さんのドラマには、社会風刺みたいなものも込められていました。『トットちゃん!』にもありますか。
服部 倉本さんほどの痛烈な社会批判はないですが、例えば、2週めでは、乃木坂上倶楽部の住人たちによる文化論が熱く語られましたし、これから戦争に向かっていく時代なので、そのことに対する思いを大石さんが鋭く書いています。なんといっても、そんな時代に、黒柳さんが育たれたトモエ学園という自由な学校があったことが奇跡だと改めて思いますし、それが描けたことは大きいですね。
ーー福山雅治さんが書き下ろされた主題歌が『トモエ学園』を歌ったものであることが、印象的です。学園ものじゃないし、ずっとそこが舞台になるわけでもないのに……って。
服部 福山さん、鋭い嗅覚だなと思いますよ。大石さんが、両親の出会いからはじめたように、いまの徹子さんを形作ったほんとの原点ってどこなんだろう? と考えたとき、福山さんはトモエ学園に行き着いたと思います。
ーーあの学校に通ったことで、トットちゃんのなかで押さえつけられたものが、豊かに広がるんですよね。
服部 それがいまにつながっているんですから、それを歌にした福山さんは凄いと思います。福山さんをくどいたのは僕らではなくて徹子さんが、直接オファーされたんですよ。
オンリーワンの企画を
ーーそもそも、『やすらぎの郷』の次の作品を決めたのはいつ頃ですか?
服部 『やすらぎ』の撮影は去年からはじまっていたくらいですから、第二弾のトットちゃんも含めて、昼の帯ドラマの企画自体はその前から進んでいました。そのやすらぎの郷に続く第2弾はこの枠にとって試金石になりますので、弊社・会長の早河(洋)が徹子さんを口説いて、今まで一度も映像化のOKを頂けなかった『窓ぎわのトットちゃん』の時代をドラマ化することに快諾頂きました。
ーー『徹子の部屋』をやっているテレ朝さんだからこそですね。
服部 結果どうなるか、そのときはわかりませんでしたが、これはテレ朝にしかできないものですし、絶対に実現しなくてはならないと思いました。ナンバーワンのコンテンツをつくるのも大事ですが、いまの時代、オンリーワンのコンテンツをつくる必要があると感じています。その点では『やすらぎの郷』はオンリーワンですし、続く、『トットちゃん!』も、当然ながら、テレビ朝日でしかできない、圧倒的にオンリーワンの企画と自負しています。
ーーこの先、どんな作品をやるか気になります。
服部 そうですね、どんどんハードルが上がっていくのでどうしたらいいのか(笑)。
ーー服部さんはずっと昼の帯ドラマ担当になりますか?
服部 そういうわけではないです。企画書を出しながら…といった感じですね。
ーー第三弾の発表はいつ頃ですか?
広報 11月の中旬か下旬ですね。
テレ朝のドラマ、略して「朝ドラ」(笑)
ーーさて、帯ドラマを1週間でつくるノウハウを少しだけ教えてください。
服部 基本は、ワンセットのせりふ劇ですね。ワンセットでも会話がおもしろければドラマは成立します。『やすらぎの郷』も『ひよっこ』もそうでしたよね。もちろん、『やすらぎ』も朝ドラさんも、ロケがいくらかあって、セットもいくらか変更しますが、東海テレビの場合は、なるべくワンシュチュエーションでまとめられるように、登場人物たちに過激なバックボーンを背押せて、異種格闘技のようにして、視聴者を惹きつけていました。
あとは、意識しているのは照明の具合です。夜観るドラマの明るさと、昼観るドラマの明るさはちょっと違うと思います。昼ドラは、どんなに辛い話しでも明るめな画づくりを心がけています。照明も、セットの色味もそうです。
ーーセットの色味も明るめなんですか。面白いですね。ワンセットで、カメラはマルチ(複数のカメラで一気に撮る)で撮影するんですよね。
服部 ワンシチュエーションで会話劇を撮ろうと思ったら、昔ながらのドラマの撮影方法であるマルチのほうが役者さんもテンションが落ちず都合がいいのですが、うちは3キャメをずっとパラでRECする形で、完全なマルチ撮影の形ではないです。ある種の舞台中継に近いですね。夜のドラマは、良い画を撮ることを重視しないといけないのかなと思いますが、昼はどちらかというと、どれだけ視聴者に違和感なく伝えられるかが大事なので、狙い過ぎた突飛な画を取らないでくれ、作り手が主張しすぎる画を撮らないでくれと、僭越ですがお願いしています。たまに、ここぞ!というときは良いですが、つねにかっこいい画とか、つねになんか情感あふれる画にはしないです。
ーーテレビの原点ぽいですね。
服部 原点ですね。昔は生放送でしたから。ドラマも生放送で、脚本がおもしろくなかったら、まったく通用しないものだと思います
ーーそれがいつの頃からか、演出や画の良さで観る時代が来て……。
服部 それはそれでよかったですが、昼の帯ドラマはちょっとそこではなく、大石さんの脚本でどれだけ見せられるかっていうところにこだわっています。
ーー『やすらぎの郷』で、昔のテレビがどれだけ撮影に工夫していたか描いたエピソードがありましたが、そういうのがいまの昼ドラで見られるのがいいですね。
服部 そういうところも楽しんでいただけるようになるとすごくいいと思います。いまは、昼間働いていたり学校に行ったりして、18時頃帰宅後や土曜日の朝方に観た方の反応がSNSなどに書き込まれ、いろいろな時間帯にみなさんが楽しんでいただいていることを感じます。そこで、「朝ドラみたい」という声もあります。ネットで見かけて、うまい! と思ったのは、テレ朝のドラマだから朝ドラといってもおかしくない、というものでした。“昼の朝ドラ”って言い得て妙ですよね(笑)。
ーー面白いですね。NHKの方とはお話することはありますか?
服部 『トットちゃん!』がはじまってからの反応はわからないですが、今回、実はNHKさんにものすごく協力いただいているんです。徹子さん、NHK の専属女優だったので、避けて通れないんですよ。
ーーNHKで働くところも出てくるんですね。
服部 そのためにいろいろやりとりをさせてもらって、勉強させてもらいました。『ヤン坊ニン坊トン坊』(54年〜57年)のスタジオなどが再現されます。逆にNHKさんが『トットてれび』(16年)をやったとき、『徹子の部屋』を再現されましたからね。だからこれに関しては、徹子さんを媒介にした、ある種のオマージュ関係のようなものです(笑)。
『トットてれび』との差別化
ーー『トットてれび』は当然意識されますよね?
服部 オンエア中は、ただただ、いち視聴者としてうらやましいなと思って観ていましたよ。中園ミホさんの脚本もすばらしいし、井上剛さんの演出もほんとすばらしくて。『トットちゃん!』を作るとき、これは真似できないなと思いました。だからむしろあれでよかったです。あれは土曜のあの枠だからこそできるドラマだと思います。
ーー朝ドラ、昼ドラ、土ドラと、古き良き昭和を描くドラマがあって……。
服部 そうですね、『植木等とのぼせもん』もおもしろいですね。山本耕史さん、すごいですよね。黒柳守綱から植木等まで自由自在に演じて。植木等をやるっていうのは『トットちゃん!』に出演が決まったあとに聞きまして、できるの? と言っていたら(笑)、完璧でしたね。
ーートットちゃん役の清野菜名さんはいかがですか?
服部 僕自身、(清野さんを)この戦いには絶対に勝たせてあげないといけないと思っています。なぜかといえば、今回の仕事って業界でもっとも大変なオファーだと思うんですよ。まず、『トットてれび』で満島ひかりさんがやったあと、同じ黒柳徹子さんを演じるのは、相当なプレッシャーだと思います。そしてそれ以上に、毎日、徹子の部屋の後で、徹子役をやるわけじゃないですか。お客さんは、いまの徹子さんを観てからドラマの疑似徹子さんをもう一度見るわけです。そんな業界で最も大変なオファーを、勇気をもって受けてくださった清野さんと事務所の方に何年かかっても恩返ししないといけないと思っています。絶対負させちゃいけない(笑)。
ーーそのためにはどんな作戦を考えていますか。
服部 『トットてれび』は、満島さんが徹子さんをやるとか、吉田鋼太郎さんが森繁久彌さんをやるとか、彼らの再現性の高さによって、フィクションとして、レビュー・ショウのように面白く見せられたと思うんですよ。トットちゃん!は、(徹子さんに)似ている、似てないとかいうよりも、全60話のひとつの大きな人生の流れとしてお見せして、ドラマの中のトットちゃんに、感情移入してもらえたらいいので、そんなに本人に寄せる必要はないと思っています。清野さんには徹子さんと直接会ってお話をし、色々と教えて頂いたりはしていますが、空気やニュアンス、語尾などを良く勉強して貰っています。それ以外には、そんなに昔の映像や、それこそ『トットてれび』をしっかりチェックしなくていいのでは…とお話しています。
『トットちゃん!』は、いかにして、いまの徹子さんが生まれたか、“黒柳徹子の素”を、60話かけて昭和史と共にお見せしていくドラマなんです。
profile
Nobuyuki Hattorri
1976 年5月11日生まれ。2000 年東海テレビ入社。東京制作部にて、『牡丹と薔薇』『偽りの花園』『インディゴの夜』『さくら心中』『赤い糸の女』『ほっとけない魔女たち』など多くの昼ドラに携わる。ほかに、『EXILE 夢のチカラ』『EXILE ATSUSHI ライフ・イズ・ビューティフル〜小さないのちの詩〜』など。東海テレビ開局 50 周年記念スペシャルドラマ『長生き競争!』で、文化庁芸術祭優秀賞(テレビ部門・ドラマの部)、ATP賞テレビグランプリ 2009ドラマ部門優秀賞、日本民間放送連盟賞番組部門テレビドラマ番組優秀賞受賞。テレビ朝日入社後は、ドラマ『叡古教授の事件簿』、『遺産争族』、新人シナリオ大賞などを担当。昼の帯ドラマ劇場『やすらぎの郷』のプロデューサーのひとりでもある。
帯ドラマ劇場『トットちゃん!』
脚本 大石静
演出 星田良子 遠藤光貴ほか
出演 清野菜名、松下奈緒、山本耕史ほか
テレビ朝日 月〜金 ひる12時30分~ 再放送 BS朝日 朝7時40分〜