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中国の宇宙ステーション「天和」、打ち上げへ

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
Credit: CMSA

中国独自の宇宙ステーションのコアモジュール「天和」の打ち上げが2021年4月30日に予定されていると米宇宙開発専門誌Spacenews.comが伝えた。天和コアモジュールは2月に海南省の文昌航天発射場に到着し、長征5号B遥2ロケットに搭載され、打ち上げ準備や結合試験が行われていた。4月23日に射点付近への移動する際の写真が公開され、打ち上げは日本時間で29~30日昼ごろとみられる※新華社通信報道によれば、打ち上げは4月29日12時とのことだ。

※4月29日打ち上げを示唆する報道、周辺海域への警報があるとのご指摘をいただき、日時情報を改めました。打ち上げ時間は前後する可能性があります。

Credit: China Manned Space
Credit: China Manned Space

中国の宇宙ステーションは、2021年から2022年までの打ち上げで完成を目指す軌道上実験施設。全長16.6メートル、直径4.2メートル、質量約22トンのコアモジュール「天和」を打ち上げ、2基の実験モジュールが結合して総重量約66トンのT字型の施設になる予定だ。完成から10年の軌道上寿命を持つ計画で、3名から最大6名までの宇宙飛行士が180日間滞在できる。

運用高度は340~450キロメートルで、コアモジュールの打ち上げ後の高度は約370キロメートルとの報道がある。国際宇宙ステーション(ISS)よりもやや低い軌道を周回すると見られる。

コアモジュール「天和」は太陽電池パネルを備えた宇宙ステーションの中核施設で、ランデブー・ドッキングのためのポートを備えている。第1実験モジュールは、宇宙飛行士の居住施設となるほか、実験設備や船外活動(EVA)のためのエアロックやロボットアームを備える。物資輸送は天舟輸送機が、宇宙飛行士の輸送は神舟宇宙船が担う予定だ。4月16日には、神舟12号宇宙船が酒泉衛星発射センターに到着し、打ち上げに向けた試験を開始しているという。

宇宙望遠鏡(CSST)のコンセプト。出典:「An Update on the Chinese Space Station Telescope Project」より
宇宙望遠鏡(CSST)のコンセプト。出典:「An Update on the Chinese Space Station Telescope Project」より

2024までには、宇宙ステーションにドッキング可能な宇宙望遠鏡「光学モジュール(巡天、Chinese Space Station Telescope:CSST)」が打ち上げられ、同じ軌道を周回する観測施設として機能する予定だ。光学モジュールは口径2メートルとハッブル宇宙望遠鏡よりもやや小型だが、必要に応じて宇宙ステーションにドッキング可能であるため、「ハッブル軌道上修理」のような有人の改修、機能向上が可能になる。

中国の宇宙ステーションは、2024年以降にISSが退役した場合、恒常的な軌道上有人実験施設として存在感を発揮するともいわれている。国連宇宙部を通じて世界に向けて宇宙科学実験を募集しており、2019年6月には第1期の9つの実験プロジェクトが選定された。プロジェクトには、東京大学と清華大学共同による微小重力環境での燃焼実験も含まれている。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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