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「ペットショップで天使に見えたのに今では悪魔に」...身勝手な飼い主の言い分とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

コロナ禍でペットの需要が高まっています。自宅でいる時間が長くなり、犬や猫と一緒にいたい人が増えました。

一般社団法人ペットフード協会の調べによりますと、新しくペットを飼い始めた人が、2019年から2020年までで犬では114%、猫では116%と増えています。飼い主が、終身飼育をしてくれるといいのですが、新規にペットを飼った人の飼育放棄が問題になっています。

SNSを見ていると、犬や猫のかわいいしぐさなどが投稿されているので、飼いたくなるのはわかります。ただ飼う前に、犬や猫の生態を勉強しておくことは大切です。それでは、身勝手な飼い主の言い分を見ていきましょう。

「犬がトイレを覚えない」という飼い主の身勝手な言い分で飼育放棄

写真:PantherMedia/イメージマート

私たちの動物病院には、保護団体の人がよく来院します。そのAさんは「今日も飼い主の身勝手な理由の相談がきました」と肩を落として言われていました。

「ペットショップでは天使に見えたのに、今では悪魔に見える」とまで言う飼い主の飼育放棄の理由とはどんなものだったのか筆者が尋ねると以下のような理由でした。

犬がトイレを覚えない

犬がどこでもオシッコをする

一緒に寝たいのに布団にオシッコをされた

などの理由で、犬を引き取ってほしいという依頼が多くあるそうです。

「犬がトイレを覚えない」のである飼い主がとった行動とは?

写真:アフロ

そこで、Aさんに犬のトイレの相談をしていた飼い主がとった行動は、犬にほとんど水を飲ませなかったということなのです。このような状態で飼育していますと、脱水で病気になりやすい体になりますね。

極端に水分を与えないと、ある意味で虐待行為です。

犬にどれぐらい水分を与えるといいの?

当然のことですが、犬は飼い主が置いてくれる水しか飲むことはできません。喉が渇いたからといって、犬は自分で蛇口をひねって水を飲むわけにはいかないのです。しっかり水を容器に入れてあげましょう。

それでは、犬かどれぐらいの水分が必要かをみていきましょう。

一般的に、体重が5kgほどの犬であれば、1日500mlのペットボトルと同じくらいの量が必要になります。具体的に書きますと以下です。

体重の10%前後の飲水量が必要

冬の時期はこの目安よりも飲水量が少ない

夏の時期はこの目安よりも飲水量が多い

子犬はやや多めに飲むことが多い

しっかりと筋肉がついている犬のほうがより水分要求量は多い

痩せている犬やシニア犬、肥満傾向の犬では水分要求量が少ない

このような知識を持って十分な水を与えないと病気になったり、子犬であれば、体がちゃんと作れなかったりする可能性があります。そのため、治療費が高額になり飼育放棄の理由がまた、増えてしまうのです。

初めて犬を飼うあなたへ

犬は、かわいい存在ですし、コロナ禍で孤独感を持っているあなたを癒やしてくれます。その一方で、生きているのです。あたり前ですが、機械ではないのです。

毎日、水やフードを上げて、散歩をしてあげないとあのモフモフした温もりを得ることができないのです。以下のことを理解してから飼ってください。

毎日欠かさずペットの世話に手間と時間をかけられますか?

写真:アフロ

ペットを飼うと、今日は気分が乗らないからペットの世話はしないということはできないのです。毎日欠かさず以下のようなペットの世話がいります。

・子犬から飼ったときは、トイレのしつけが必要

私たちも産まれたときから、だれに教わることなくトイレに行くことはできないのです。それは、だれかに教えてもらって、自分で行けるようになったのです。

犬も同じです。トイレですることや散歩中に排泄することを教えてないといけません(猫の場合は、教えなくても自分でできる子が多いです)。

ペットは生き物ですので、うんちもオシッコもします。家を汚すこともあるでしょう。それらの掃除や洗濯も毎日必要です。

犬の場合は散歩も毎日必要

小型犬であってもやはり散歩をさせて気分転換をさえてあげることは大切です。柴犬以上の大きさの犬なら、散歩をしないとストレスがたまり室内で家具などを噛むなどの問題行動をする可能性があります。

旅行が行きづらくなる

旅行に行くときは、連れていくか、そうじゃない場合は、ペットホテルに預けることになります。ペットの大きさにもよりますが1泊約3000~5000円はかかるでしょう。

ペットが急に病気になったりけがをしたりした場合は、動物病院へ

ペットが病気やけがをすれば、動物病院に連れていかないといけません。仕事や用事をやりくりする必要が出てきます。

写真:アフロ

癒やしやかわいさなど動物から得られるものに期待する一方で、その世話は面倒だと思うなら、ペットを飼い始めるべきではありません。現実問題として、オシッコをしたからといって、叩かれている犬はいます。

水を飲んだら、オシッコは出ます。反対に出ないと尿毒症で命にかかわります。どこで、トイレをしたらいいのかを犬に根気よく教えていくのも愛情のひとつです。確かに、雨や雪が降った日に布団にオシッコをされたら、洗濯をしてもなかなか乾かず、たいへんかもしれません。

そこで、オシッコをしてしまうのは、なにか犬なりの理由があるはずです。イラっとしたときは、自分が赤ちゃんだったときに、オムツをしていたことを思い出して、犬を叩いたりしないでくださいね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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