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MLB公式球に惑わされない!レッドソックス・澤村拓一が示した“郷に入っては郷に従う”的思考法

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
初ブルペン後にオンライン会見に応じるレッドソックスの澤村拓一投手(筆者撮影)

【レッドソックス澤村投手がようやく始動】

 ビザ取得と米国入り後の隔離措置でチーム合流が遅れていたレッドソックスの澤村拓一投手が、ようやくメジャーリーガーとして始動した。

 現地時間の3月2日にチームに合流すると、レッドソックスのユニフォームに袖を通し練習に参加。翌3日には早速ブルペン入りし投球練習を行っている。

 オープン戦に突入しチームはすでに実戦段階に入り、4月2日のシーズン開幕まで、澤村投手の調整期間は自ずと限られてくる。少しでも早くMLBの環境に慣れるためにも、自らブルペン入りを直訴したという。

 もちろん澤村投手の初ブルペンは、チーム関係者も注目していたため、多くの視線を集めることになった。さらに憧れ続けたMLBのユニフォームを身につけてマウンドに立つ高揚感もあり、冷静さを保つのは大変だったようだ。

 「このユニフォームを着て初めてのブルペンだったので、とても興奮していたのと同時に緊張しました。

 たくさんいろんな人が見ていたので、そういった意味で力んじゃったのかなと反省はしています」

【MLB公式球は「ちょっと大きく重い感じ」】

 澤村投手が話すように、いつも通りの投球ができたわけではなかった。それでもキャンプ地での初の投球練習を満喫したようだ。

 今回は真っ直ぐとスプリットだけを投げ、真っ直ぐは最速で94マイル(約151キロ)を計測。本人的にも「こっちに来て初めてのブルペンとしてはまずまず」と笑顔を浮かべている。

 これまで多くの日本人投手がMLB挑戦をしてきた中、やはり最初にクリアしなければならない課題が、環境面の日米差だ。中でも公式球とマウンドの違いは、日本人投手たちを苦しめることが多々あった。

 初ブルペンを終え、マウンドに対する澤村投手の感想は「問題なかったです」と好感触を掴んでいる。さらにMLB公式球に関しては、以下のような感想を口にしている。

 「シーズンが終わって少し休んだ後、11月の終わりぐらいからはずっとそのボール(MLB公式球)しか触ってこなかったです。

 アジャストしないといけないと思って(日本でも)ずっと触ってきていたんですけど、日本でピッチングしていても、こっちに来たら気候だったり、気温だったり、湿気だったりがあって、また別物のボールになっているのを感じたので、1日でも早くアジャストしていければなと思っています」

 以前から指摘されていることだが、MLB公式球はNPB公式球と比較して、表面が滑りやすく、縫い目が一定ではないため扱いづらいと言われている。またNPB公式球より変化が大きく、変化球などの制球も難しいとされる。

 澤村投手も投げながら感覚的に「ちょっと大きく、重いように感じた」と話しており、やはり公式球に関しては、慣れるまでもう少し時間を必要としそうだ。

【NPB時代の真っ直ぐにこだわらない柔軟な姿勢】

 だが澤村投手はMLB公式球を、NPB公式球のような感覚で投げようというこだわりはなく、上手に付き合っていこうと考えているようだ。レッドソックス入りした後に「郷に入っては郷に従う」と話していたとおり、むしろ自分の考え方をMLB公式球に合わせようとしている。

 「(真っ直ぐを投げていて)シュート(回転)したりカット(回転)したりするということは、僕的にはフォーシーム(の理想的な回転)が絶対ではないので、フォーシームを投げにいっていてシュートしたりカットしたり変化していても、(打者を)打ち取れればそれでいいと思っています。

 日本の時みたいにシュートしちゃったとか、カットしちゃったとか、自分の狙い、目的と外れたとしても、それはそれでこっちではいいのかなと思っています」

【真っ直ぐの回転率はMLB平均以上】

 澤村投手の投球スタイルは真っ直ぐとスプリットを中心に、タテの変化で勝負していくタイプだ。澤村投手本人も、高めの真っ直ぐが生命線だと断言する。

 「自分の中では高めの真っ直ぐをしっかり投げること、高めの真っ直ぐと言ってもストライクゾーンぎりぎりの高めの真っ直ぐを投げること。そこを前提にスプリットをしっかり落としていく。

 そこがしっかり投げきれないと、僕の場合始まらない。始まらないというか、そこが軸になるボールなので、(初のブルペンでは)まずはそこをしっかり投げたかった」

 そうした高めの真っ直ぐをMLBの舞台でも生かしていくためにも、NPB公式球で感じていたこだわりはむしろ邪魔になってくると、澤村投手は考えているのではないだろうか。

 また澤村投手が明らかにしてくれたところでは、初ブルペンをチェックしていたデータ班によれば、真っ直ぐの回転率は2400回転前後だったという。これは昨シーズンのMLB平均(2309)を上回るものだ。

 これからMLB公式球に慣れていけば、さらに回転数が上がることも考えられる。そうなれば澤村投手の真っ直ぐは、さらに進化していくはずだ。

 多少急ピッチの調整になると思うが、万全の状態でシーズン開幕に臨めるよう期待している。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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