函館本線山線「バス転換協議が1年3カ月ぶりに開催」 バス会社が初めて協議に呼ばれるも道提案に難色
2024年8月28日、1年3カ月ぶりに北海道新幹線並行在来線対策協議会後志ブロックが開かれた。北海道庁が主導する並行在来線対策協議会では2022年3月に北海道新幹線の札幌延伸に伴いJR北海道から経営が分離される函館―長万部―小樽間のうち、長万部―小樽間の廃止の方針を強引に決定したが、協議の場にバス会社は呼ばれていなかった。その後、北海道庁は廃止の方針を決定してから1年以上たった2023年5月に入ってからバス会社に相談を持ち掛けようとしたが、バスドライバー不足が深刻化したことにより協議が難航。その後、1年以上に渡って協議が開かれない異常事態が続いていた。
初めてバス会社が協議の場に呼ばれるも
今回、1年3カ月ぶりに開催された協議会で目玉となったのは、初めて沿線のバス会社である北海道中央バス、ニセコバス、道南バスの3社が呼ばれたことだ。道はバス会社を前にして道は、初めて鉄道代替バスの内容を説明した。説明の内容は長万部―小樽間を9つの区間に分割し、余市―小樽間で21本、仁木―余市間で19本、ニセコ―倶知安間で16本の新設のバスが必要になるというものだったが、協議に初めて出席した北海道中央バス、ニセコバス、道南バスの3社はいずれも既存のバス路線を維持するだけで手いっぱいの状態で、道が提案した鉄道代替バスの本数の確保は一様に困難であるとの姿勢を示した。
道の政策姿勢で問題なのは、密室協議の場で強引に決めた長万部―小樽間の鉄道廃止・バス転換という既成事実をもとに、鉄道を廃止することが完全に目的化してしまい新幹線の経済効果をどのように地域に波及させるのかという視点が欠落していることにある。北陸新幹線の開業の際には、沿線の各県では並行在来線の活用なども前提として官民ともになりどのように地域を盛り上げるのかといったワークショップが開催されたと聞いたが、北海道では道庁は在来線廃止を前提に道庁側の都合で一方的に決めた机上のバス転換論を振りかざし、地域活性化に向けて地域にとって必要な議論の機会を奪っている点は大きな問題だ。
さらに道のバス転換案では、交通体系が分断されることから大幅な所要時間の増加を招き、利用者にとっても分かりにくいものとなることは必須であることから、沿線の高校生の通学がより困難となるばかりか、新幹線の2次交通としての観光利用についても非常に限定的なものとなりかねない。
北海道新聞が報じたところによると、今回の協議会では、余市町の斉藤啓輔町長は「(道の案は)バス会社の意見を踏まえると、成立しないと分かった」と強調するなど、沿線自治体の首長は道が提案するバス転換論は実現しそうにないという空気が広がった。道総合交通政策部の宇野稔弘交通企画監は「(代替バスの本数案)は、今後の議論の出発点として示した」としたものの、会合後には「この計画のまま行くとは思っていない」と話したという。さらに、道の担当者は「山登りに例えるならばようやく登山口に来た。これから長い調整が必要になる」と発言。バス転換の方針を変える気はないという道の本音をにじませた。
現実にはバスでは運びきれない利用客
長万部―小樽間については、2023―2024年の冬の観光シーズンにはインバウンドを含めた多くの観光客が来訪し、日中の倶知安から小樽駅に向かう列車では余市駅で乗客が乗り切れなくなる積み残しの状態が発生したことから日中2両恵編成で運行されているH100形気動車から3両編成のキハ201形気動車に車両を変えて運行されるなど、慢性的な混雑が続いている。道の資料によると同区間の2019年の輸送密度は618人で、2023年は569人と大幅に減っているわけではない。1~3月の冬季間に限って言えば669人と2019年の輸送密度よりも伸びている。
さらに、昨年9月に札幌―函館間を同区間経由で運行された臨時特急ニセコ号は大盛況で多くの観光客が全国から訪れるなど、並行在来線は活用次第では沿線に十分な経済効果をもたらせることも明らかとなっている。しかし、こうした足元の現状や課題に触れることなく、道が策定した一方的な机上の空論によるバス転換論を沿線自治体に対して押し付ける道の政策姿勢は問題があるのではないだろうか。
※【北海道】乗り物大好きチャンネルさんでもこの話題が取り上げられています。
(了)