ポンコツ女優たちと繰り返されるオーディション。「悔しさの中で生きてきた」黒崎レイナがドラマ初主演
公開中の映画『先生!口裂け女です!』でヒロインのヤンキー女子高生を演じている黒崎レイナ。TOKYO MXのオリジナルドラマ『無限オーディション』で初主演を務める。今回は新米の映画プロデューサー役。キャストのオーディションに10名のポンコツ女優しか集まらず、頭を抱えていると、終わったはずのオーディションがなぜか何回も繰り返される……。デビューから12年、『仮面ライダーエグゼイド』で人気を呼んでからは6年。初の大役への想いを聞いた。
台詞を間違えるシーンで懐かしい気持ちに
――『先生!口裂け女です!』ではヤンキー女子高生役でしたが、『無限オーディション』で演じる宮園凛は26歳の映画プロデューサー。ほぼ等身大ですか?
黒崎 自分はオーディションを受けてきた身なので、新米プロデューサーとして開催する側に立って、「私でいいんだろうか?」と逆に緊張しました。でも、撮影は目まぐるしくダーッと進んで、「どこをどうしたらいいんだろう?」と監督と話し合いながら演じる時間は、とても楽しかったです。
――映画プロデューサーは身近で見ていた職業ではありますよね?
黒崎 他の職業に比べたら結構関わるので、演じやすさはありました。私は役で表に出るお仕事で、作品を作る裏側はあまり目にしたことがなくて。凛ちゃんを通じて「こういうふうに作っているんだ」と知れて、貴重な経験になりました。プロットがどうとか、会議を何回もしたりとか。オーディションでたくさん候補者がいる中で、どこを見て選ぶのかは、受ける側としていろいろ考えたところで、決め手となる部分があるのは新鮮でした。
――自分が受けてきたオーディションを思い出したりも?
黒崎 しました。最初の小学生の頃は台詞を覚えることに必死で、大人の審査員の皆さんは何を考えているかわからないから、怖気づいていた時期もありました。今回、オーディションを受ける人がパニックになって台詞を間違えるシーンがあって、「ああ、わかる」と懐かしい気持ちになりました。あと、オーディションを繰り返すお話で同じ台詞を何度も言うので、「今どこまで言ったっけ?」と止まってしまうこともあったんです。私もお芝居を始めたての頃は、緊張するとすぐ止まっていたので、応援したくなりました。
睨んだら審査員がイスからズリ落ちて
――レイナさん自身が特に覚えているオーディションというと?
黒崎 デビュー作の『ハガネの女 season2』では、国外退去をする役だとあまり知らなかったんです。お芝居のこともよくわからないし、日本語を流暢にしゃべれない外国人役でもあったので、表情で何とか頑張ろうと思っていました。そしたら「審査員全員を睨んでください」と言われて、思い切り睨んだら、1人の方がなぜかイスからズリ落ちたんです(笑)。それはすごく印象に残っています。
――小学生の頃から目力が強かったんですかね。
黒崎 『ハイポジ』でも選んでいただいた理由を聞いたら、「相手の顔をじっと見ていたのが印象的だった」ということでした。役柄的には無表情な設定でしたけど、台本を読んで「絶対に私がやる!」という気持ちでいて。その意欲が目から伝わったのかなと思います。
――『仮面ライダーエグゼイド』のときはどうでした?
黒崎 確か制服で受けに行って、アクションで「敵を斬りつける動きをしてください」と言われたんですね。ローファーだと動きにくいと思って、足からほっぽって、ピョンピョン跳ねて蹴る動作をしたのが良かった気がします。
感情の波は激しくても弱い部分は見せないように
――『無限オーディション』の凛は「監督のデビュー作を観て、いつか仕事をしたいと思っていた」という台詞もありました。レイナさんも役者として、そういう監督はいましたか?
黒崎 私はもともとドラマや映画が好きで、『女王の教室』や『スカイハイ』のメイキング映像を観たのが、この世界に入るきっかけになりました。同じシーンを何回も撮る姿や、オーディションで選ばれるところに興味が湧いて。実際にお仕事をさせていただくようになってから、昔から好きだった監督とご一緒すると嬉しくなったり、「もっと頑張ろう」と強い気持ちを持てたので、凛ちゃんにすごく共感できました。
――今回はドラマ初主演ということで、現場で今までと違う感覚もありました?
黒崎 主演はあえてあまり意識せず、とりあえず役に集中しようと。凛ちゃんはテキパキした女性で一点集中型。私もどちらかと言うと、そっちタイプです。ただ、私は普段みんなとワイワイしているんですけど、今回はオーディションを繰り返す中で、凛ちゃんはあたふたしたり考え込んだり、感情の波が激しくて。基本はビシッとしているので、弱い部分はあまり見せないように心掛けていました。
時間を戻せたら村下孝蔵さんのライブを観たい
――劇中のように、時間が巻き戻ったらいいなと思うことはありますか?
黒崎 特に過去に戻りたいと思ったことはありませんが、自分が生きていた時代以外なら、村下孝蔵さんのライブを観に行きたいです。昔のライブ映像を観たり、お仕事の行き帰りに曲を聴いているくらい、大好きなんです。
――昭和好きという話は前もうかがいましたが、村下孝蔵さんのどんなところに惹かれますか?
黒崎 どの曲でも感じるのは、日本語ってこんなにきれいなんだなと。情景も昭和時代の恋愛模様も浮かびます。今は電話もメールも携帯でピッとできますけど、当時は家の大きな電話しかなくて、会える場所も限られていたと思うんです。そういう中で、ちょっとドキドキしている歌詞がすごく良くて。あと、村下さんの声はとても力強いのに、はかなさもあって、きれい。昭和の歌謡曲は家族の影響で幼少期から聴いていて、村下孝蔵さんも昔からずっと大好きです。
――1999年に46歳で亡くなられてますから、生のライブを観る機会はなかったわけですね。
黒崎 そうなんです。自分が生きてきた中だと、以前猫を4匹飼っていて、みんなお星さまになったので、また会いたい気持ちは強いです。それから、自分の赤ちゃんの頃はどんな感じだったんだろうなと。すごく活発だったらしくて、面白いエピソードは聞いています。ハイハイができなかったのに、いきなり立って両親がビックリしたとか(笑)。
悩みに悩んでも寝たら切り替えられます
――凛は上昇志向が強い役ですが、レイナさんにもある部分ですか?
黒崎 あります。凛に一番共感したのは、負けず嫌いなところ。悔しがるシーンは感情移入しやすかったです。私も撮影やオーディションで、自分がやってきたことがうまくいかなかったり、失敗やミスをしたりして、常に悔しさの中で生きている感じなので(笑)。人前では見せませんけど。
――夜中に眠れなくなるようなことも?
黒崎 1人で考え込むことはあります。でも、寝たらすぐ切り替えられるタイプです。とりあえず納得するまで悩みに悩んで、答えが出なかったら、すぐ寝る(笑)。そんな繰り返しなので、たぶんリセットするのは得意です。
――自分がオーディションで落ちた作品のオンエアを観たりは?
黒崎 します。正直悔しさが大きいですけど、選ばれた女優さんが素敵なお芝居をされていて、なぜその方になったかわかることもあるので。参考にさせてもらって、次にご縁があったら、昔の私より成長した姿を見せようと思います。
――あまり引きずることはないと。
黒崎 ないですね。次に向かう気持ちが強くなるので。そこは凛と似ていました。私も凛ちゃんのように大好きなコーヒーを飲んで、ひと息ついて、「よし、頑張ろう!」となります。
初志貫徹で一度決めたら最後まで
――今までの女優人生で、「もうやめてしまおう」と思ったこともないですか?
黒崎 ありません。小学生でお仕事を始めたときから、一生やっていく覚悟を持ってきたので。性格的には熱しやすく冷めやすいんですけど、このお仕事だけはずっと熱中しています。メンタルは強いほうなので、折れることもなくて。
――厳しい世界で浮き沈みはあったかと思いますが。
黒崎 確かに競争は激しいですけど、自分のやりたいことが明確にあって、ひたすら努力を続けていたら、いつかは叶うと思ってきました。それは芸能界以外のどんな職業にも通じることですよね。私の座右の銘は初志貫徹。一度決めたことは最後までやる精神で、悔いがないように頑張り続けたいです。
――具体的に頑張ろうと思っていることもありますか?
黒崎 趣味でイラスト制作をしていて、2年前に『プレバト!!』に出演させていただきました。趣味がお仕事になる経験は初めてで、すごく嬉しかったんです。水彩画とか油絵とか、アートの世界にものめり込みたいと思っています。いつか個展も開きたくて、そこに辿り着くまでに、絵の勉強もたくさんしていきます。
Profile
黒崎レイナ(くろさき・れいな)
1998年11月11日生まれ、愛知県出身。
2011年にドラマ『ハガネの女 season2』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『仮面ライダーエグゼイド』、『サイン-法医学者 柚木貴志の事件-』、『ハイポジ 1986年、二度目の青春。』、『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』、映画『仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』、『世界でいちばん長い写真』、舞台『染、色』など。映画『先生!口裂け女です!』が公開中。主演ドラマ『無限オーディション』(TOKYO MX)が7月17日、24日に放送。
『無限オーディション』
TOKYO MX/7月17日・24日22:00~
出演/黒崎レイナ、徳丸伸ニ、川野快晴ほか
配信映画のプロデュースを初めて担当する宮園凛(黒崎)。女子大生10人の友情物語で出演者オーディションを開くが、会場に集まったのはギリギリ10人の新人だけ。しかも全員がポンコツで、凛は頭を抱えるが、終わったはずのオーディションがなぜか再び始まって……。