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大相撲名古屋場所いよいよ大詰め 横綱・照ノ富士節目の10度目Vか、平幕・隆の勝、美ノ海がそれを阻むか

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
3敗をキープして優勝争いに臨む隆の勝(写真:日刊スポーツ/アフロ)

大相撲名古屋場所はいよいよ佳境。初日からここまで圧倒的な強さを見せてきた横綱・照ノ富士が、自身がこれまで長く目標としてきた10回目の優勝に向け、ついに王手をかけた。

平幕の隆の勝、美ノ海が躍動!

名古屋場所は、1敗の照ノ富士が独走状態で、3敗の大関・豊昇龍と、平幕の隆の勝、美ノ海の3人がその背中を追う展開だった。ところが、昨日13日目にして豊昇龍が右股関節を痛めて休場。無念の思いで優勝争いから離脱した。

美ノ海は初の三役戦が組まれ、小結・大栄翔と、隆の勝は関脇・霧島と対戦。番付上格上の力士を相手に、勝てば優勝争いに望みをつなぐ大事な一番となった。

今場所は自身最高位で勝ち越しを決めていた美ノ海。大栄翔とは初顔合わせだったが、落ち着いた様子で立ち合った。立ち合いから大栄翔の強烈な突き押しを受けるも、素早い動きでしのぎ続け、最後はうまく右からいなして相手を土俵外へ送り出し!好調の勢いで自身初の幕内二桁勝利をマークし、優勝争いにも残った。

隆の勝は、これまでの対戦成績13勝2敗と非常に合い口のいい霧島と対戦。立ち合いで右を張ってきた霧島だったが、隆の勝は動じず思い切って左からいなし、相手の体勢が崩れたところをすかさず前に出て、力強く押し出した。これで、美ノ海と同様、優勝に望みをつないだ。

大関は惜敗 幕下以下は優勝が決定

結びの一番では、照ノ富士がカド番で7敗と後のない貴景勝を迎え撃った。優勝決定戦を含め、これまで何度も対戦のある二人。照ノ富士は10回目の優勝に向けて、貴景勝は大関の地位を守るために、どちらも負けられない一番だった。

立ち合いから捕まえようとする照ノ富士と、離れて取りたい貴景勝。一度両者の体が離れ、貴景勝が左からいなすが横綱は冷静に見ている。再び対峙し、今度は横綱が左からいなすと、貴景勝はそのまま前にバッタリ倒れてしまった。貴景勝は無念の負け越し、照ノ富士は今日、後を追う隆の勝に勝てば優勝と、初場所ぶりの優勝へ向けて大きな一歩を踏み出した。

これで、貴景勝が大関陥落、10勝すれば大関に返り咲きだった霧島も、ついにそれをかなえることができなかった。大関の減少は率直に残念である。しかし、小さい体ながら相撲と真っすぐに向き合い、ここまで上り詰めた二人である。両者ともきっと、再び大関の地位に戻ってきてくれるに違いない。

また、昨日13日目には、幕下以下の各段優勝がすべて決まるという珍しい結果になった。なかでも幕下2枚目で優勝した荒汐部屋の大青山は、師匠(元幕内・蒼国来)と同じ中国内モンゴル自治区の出身。来場所での新十両昇進を確実なものとし、ここからさらなる期待がかかる。

初日から横綱の強さが光り、ここまで進んできた名古屋場所。残りはいよいよあと2日。照ノ富士が隆の勝を下し、千秋楽を待たずに賜杯を抱くのか、隆の勝が勢いに乗ってそれを阻むか。今日の結びで今場所の展開が決まる。

<参考>優勝争いの行方

▽12勝1敗 照ノ富士

▽10勝3敗 隆の勝、美ノ海

・照ノ富士が隆の勝に〇 → 照ノ富士の優勝決定

・照ノ富士が隆の勝に● 美ノ海が大の里に〇 → 照ノ富士、隆の勝、美ノ海の可能性で千秋楽まで優勝決定が持ち越しに

・照ノ富士が隆の勝に● 美ノ海が大の里に● → 照ノ富士、隆の勝の可能性で千秋楽まで優勝決定が持ち越しに

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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