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南北首脳会談から急速に平和路線へ向かう北朝鮮、サッカーアンデルセン監督解任は経済制裁の影響なのか!?

金明昱スポーツライター
2016年から約2年間、サッカー北朝鮮代表を指揮したアンデルセン監督(写真:ロイター/アフロ)

 元日本代表監督のハリルホジッチ氏が27日の会見で思いのたけをぶちまけ、29日に帰国した。

 なんとも消化不良な会見内容だったが、そんな中、私の下にも、出版社とテレビ局からある代表監督の解任に関する電話が連続してかかってきた。

 質問内容は共通して「サッカー北朝鮮代表のヨルン・アンデルセン監督が解任されましたが、これは経済制裁の影響も関係しているのでしょうか?」というものだった。

 私の下にこうした連絡が来るのは、昨年11月にタイでアンデルセン監督の単独インタビューに成功したからだろう。

(参考:日本初独占インタビュー!北朝鮮代表監督のヨルン・アンデルセンが語った平壌での指導と生活

 そんなにも北朝鮮代表監督の解任が気になるのかと、少々驚いたが、どうにかして“経済制裁の影響”を軸に、記事やニュースを展開したい意図が見え隠れしていた。

 これはアンデルセン監督が「ロイター」の取材に対し、「経済状態が良くないので、ここに残ることができない」と言ったことが発端になっている。

 つまり「経済制裁によって、北朝鮮国内の経済状態が良くないから、払うお金がないから監督を解任した」という解釈ができてしまう。

 だが、私がこれまで取材した限りでは、決してそうではない。結論から言えば、「結果を残せなかったから、契約を更新しなかった」と言うのが正しいだろう。

昨年12月のE-1選手権4位が解任に拍車

 アンデルセン氏は2016年から約2年間、北朝鮮代表監督を務め、3月27日のアジアカップ予選の香港戦を最後に退任したが、この試合を2-0で勝利。来年、UAEで開催されるアジアカップの出場権を手に入れた。

 昨年12月には日本、韓国、中国、北朝鮮が参加した東アジアE-1選手権でその姿を見せたが、結果は4位の最下位。日本(0-1)や韓国(0-1)を相手に善戦したものの、結果を残すことはできなかった。

 当時、北朝鮮サッカー協会関係者は「この東アジア選手権での結果で、今後の進退が決まる」とも語っていた。それこそ、W杯常連国となった日本や韓国に勝利していれば、確実に評価は高まったに違いないし、契約も更新されていただろう。

 だが、結果を重視した北朝鮮サッカー協会の判断は、「契約を更新しない」ということだった。

サッカー強化のための国支援は多額

 ちなみに、アンデルセン氏はいくら年俸をもらっていたのか。気になる人も多いだろうが、推定で数十万ドルと言われている。北朝鮮サッカー協会にとっては「破格の待遇」である。

 では、資金を出せなくなったから、監督のクビを切ったのかというと、そうではない。サッカーに関しては国からの強化費は、どのスポーツ分野よりも多い。

 ある北朝鮮サッカー協会関係者がこんなことも教えてくれていた。「この金額で首をタテに振ってくれる監督がいることに少々、驚いた」と協会内部のスタッフが言っていたという。

 日本代表監督だったハリルホジッチ氏が電撃解任されたが、アンデルセン監督の退任もそれと似たようなもので、第一の理由は結果を出せなかったこと。

 他に問題があったとするならば、スムーズなコミュニケーションが成立しなかったことが課題だったかもしれない。

「今日が最後の試合になる」

 今季から東京ヴェルディでプレーする北朝鮮代表の李栄直(リ・ヨンジ)は、先月の香港戦に出場前にアンデルセン監督から「今日が最後の試合になる」と告げられていた。

「試合が終わったあとは、とても淡々としていましたよ。自分はアンデルセン監督に信頼してもらっていましたし、代表でもボランチで出場させてもらっていたので残念です」

 アンデルセン氏は引き続き、アジアで指導者として活動する予定だという。現在は香港代表から声がかかっているという噂もあるが、定かではない。

 北朝鮮代表の新監督は、国内の指導者が有力だ。当分、外国人が監督を務めることはないと私は見ている。

難しい外国人監督とのコミュニケーション

 昨年の11月に平壌でアンデルセン監督の練習風景を見学し、タイで行われた試合でベンチワークを見ることができたのだが、選手とのコミュニケーションがどの程度、浸透しているのかという点では疑問が残っていた。

 練習や試合での指揮を見る限り、通訳を挟んでの選手と監督のコミュニケーションには、限界があったと思われる。北朝鮮協会もその点について、悩んでいたのではないだろうか。

 来年のアジアカップ抽選会が5月4日行われるが、そこで北朝鮮代表の新監督が明らかになるだろう。

 それにしてもハリルホジッチ監督が解任された理由とされている選手との”コミュニケーション不足”は、それほど大きな問題なのだろうか。中国代表はイタリアの名将、マルチェロ・リッピ監督だが、東アジアの3カ国(日本、北朝鮮、韓国)はすべて国内監督になった。

 北朝鮮も日本も、国内監督のほうが選手にとっては意思疎通が図りやすいのかもしれないが、果たしてそれが吉と出るか――。 

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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