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新生児が紡いだムーキー・ベッツとドジャース・ファンのハートフルな友情物語

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB屈指のナイスガイとして有名なムーキー・ベッツ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【今も変わることのない球場内での選手とファンの交流】

 ここ数年は投打ともにパワー化が進むMLBだが、それに伴い打球速度が必然的に増し、観客席に飛び込むファウルボールに対応できないファンが増え、何度となくアクシデントを引き起こしていた。

 そのためファン対応のセキュリティの観点から、昨今の球場は日本のように防御ネットが拡張されていることをご存じの方も多いはずだ。

 防御ネットが拡張されたことで選手とファンの間に距離が生じているかと思いきや、今でも球場内では選手とファンは様々な交流を続けている。

 それを裏づけるかのように、ドジャースのムーキー・ベッツ選手がX(旧Twitter)上に、ファンとの心温まる交流を紹介した投稿が注目を集め、MLB公式サイトなどで紹介されている。

【ネクストサークルにいるベッツ選手に声をかけたファン】

 とりあえずベッツ選手の投稿を以下に添付していくので、本人が語るエピソードに耳を傾けてほしい。英語のキャプションがついているので、日本人でも理解しやすい動画になっている。

 ベッツ選手の説明では「数週間前(a couple of weeks ago)」となっているが、米メディアによれば、8月2日のアスレチックス戦の出来事だった。

 この日もリードオフマンとして先発出場していたベッツ選手は、9番から始まる2回裏にネクストバッターズサークルで待機していると、バックネット裏で観戦していたファンが声をかけてきたという。

 「もし本塁打を打ってくれたら、もうすぐ生まれる娘のミドルネームをムーキーにするよ」

 この申し入れに対しベッツ選手は「止めた方がいい。奥さんも嫌がるだろう」と忠告したらしいが、そのファンは「大丈夫だ。今から(奥さんに)伝える」といって電話をかけていたそうだ。

【ファンの期待通り本塁打を放ったベッツ選手】

 そして迎えたベッツ選手の第2打席…。

 相手先発のホーガン・ハリス投手が投じた低めのボールをすくい上げるように打ち返すと、打球は放物線を描きながら左翼席上段に突き刺さった。今シーズン第29号本塁打は、飛距離436フィート(約133メートル)の特大弾となった。

 会心の当たりに一塁ベースを回ったベッツ選手は、右手人差し指を掲げ喜びを表現した。そしてドジャース・ファンの喝采を浴びながらベースを回り、ホームに戻ってきた。

 味方選手の出迎えを受けながらダッグアウトに戻りかけたベッツ選手は、声をかけてきたファンに気づくとそのままバックネットに方向転換し、件のファンとグータッチを交わした。

 このシーンはベッツ選手が投稿した動画でも紹介されており、グータッチを受けたファンはスマホ片手(奥さんと会話中?)に大喜びしている。

【有言実行したことをX上で報告したファン】

 とりあえずベッツ選手とファンの交流は一旦ここで終わりを迎えたが、このファンはベッツ選手と交わした約束を忘れてはいなかった。

 それから数週間後のことだ。ベッツ選手はX上で、生まれたばかりの娘の画像、ミドルネームにムーキーが入っている出生証明書、ベッツ選手とグータッチをする動画が添付された投稿を発見。そこには「約束は約束だ。フランシェスカ・ムーキー・マンクーソを紹介するよ」というメッセージが添えられていた。

 このファンの名前は、ジウセピ・マンクーソ氏。彼がベッツ選手に送ったメッセージ投稿も以下に添付しておく。

 このマンクーソ氏の投稿に対し、ベッツ選手は以下のように返答している。

 「ジウセピ、あなたに対し声を張り上げて伝えたい。フランシェスカに会えるのが待ち遠しい。もう自分の娘のようなものだ。本当に素敵なことだと思っている。これから君のアカウントをフォローするよ」

【MLB屈指のナイスガイが約束した更なる交流】

 MLB屈指のナイスガイとして知られるベッツ選手のこと。彼の返信メッセージも間違いなく実現すると考えていいだろう。

 我々がフランシェスカちゃんを胸に抱くベッツ選手の姿を目撃するのは、そう遠い未来ではなさそうだ。

 こうした交流が今も綿々と続いているMLB。やはり魅了されずにはいられない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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