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Bリーグ挑戦2年目の河村勇輝が見据える現在地と京都戦で得られた気づき

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都戦で果敢にドライブを仕掛ける河村勇輝選手(筆者撮影)

【2年目のBリーグ挑戦に挑む河村選手】

 昨シーズンは高校3年生ながら東海大学入学前に特別指定選手として三遠入りした河村勇輝選手。入団直後から公式戦出場を果たし、18歳9ヶ月17日のBリーグ最年少出場記録を塗り替えるなど、センセーショナルな活躍をみせたのは記憶に新しいところだ。

 最年少出場記録に関しては、福岡第一高校の後輩であるハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア選手が今年1月に、特別指定選手として琉球入り。週末行われたシーズン第20節で、17歳11ヶ月23日の若さで公式戦出場を果たし、塗り替えられてしまった。だが三遠で計11試合に出場したプレーと成績は人々を喜ばせ、昨シーズンから新設された「新人賞ベストファイブ」にも選出されている。

 東海大大学入学後も、1年生ながら主力選手の1人として全日本大学バスケットボール選手権制覇に貢献。同選手権で3ポイント王に輝くなどの実績を引っ提げ、昨年12月に特別指定選手として横浜入りし、2度目のBリーグ挑戦に臨んでいる。

【ここまでの個人成績はほぼ昨季並みながら得点部門は低下】

 シーズン第20節が終了した時点で、出場試合数は昨シーズンと同じ11試合に到達。ここまでの個人成績をみると、ほぼ昨シーズン並みで推移している。

 ただ得点に関しては昨シーズンと比較してほぼ半減し、FG成功率、3P成功率ともにかなり落ちているのが理解できる(別表参照)。

(筆者作成)
(筆者作成)

 昨シーズンと所属チームが変わり、求められるプレースタイルも違ってくるので、単純な成績比較は難しいところだ。だがすでに将来の日本バスケ界を背負う人物として周囲から高い期待を集める存在としては、今回のBリーグ挑戦でも、どうしても昨シーズン以上の活躍を求められてしまいがちだ。

 そうした面から考えると、現在の成績と成長度合に納得できていないファンもいるのではないだろうか。

【昨季とは全く違うBリーグのコートに立つ意識】

 ただ河村選手本人は将来を見据え、地に足を付けた状態で2年目のBリーグ挑戦を続けている。それは彼の以下のような発言からも窺い知ることができる。

 「(ここまでのプレーに)満足はしていません。シュートタッチもそうですけど、トレーニング期間も含めてタッチが少しズレているというのが…。実際仕方のないところではあるんですけど、その中で自分をどうやってアジャストするか、(シュートが)入らないのならどうやってチームの勝利に貢献するか、プレーの幅ですよね。その幅のところで自分はまだバリエーションが少ないというのをBリーグ2年目で感じられています。

 昨シーズンはがむしゃらにプレーして、チームのためにというか、とにかく個人のプレーをやることで精一杯だったんですけど、それが上手くスタッツとかに表れていたという部分があるんですけど…。(今回は)一大学生としてこれからプロになる身なので、まずチームのことを第一に優先しながら、その中で自分のプレーをどうチームの勝利に貢献できるかを考えながらバスケができていると思います」

 如何だろう。本人が説明するように、現在はシュートタッチにズレが生じており、それが得点面で大きな影響を及ぼしているようだ。だが個人成績に表れない内面的な部分で、昨シーズンとはまったく異なり、近い将来本格的にプロを目指す選手として、高い意識を持ちながら日々コートに立っているのだ。

【京都戦第1戦でHCから受けた叱咤激励】

 そして週末の京都戦で、新たに気づきを得ることができた。第1戦の前半にやや精彩を欠いたプレーをしていた河村選手に対し、カイル・ミリングHCからハーフタイムに叱咤激励を受けたという。

試合中にカイル・ミリングHCから指示を受ける河村勇輝選手(右・筆者撮影)
試合中にカイル・ミリングHCから指示を受ける河村勇輝選手(右・筆者撮影)

 「お前はもっとやらなきゃいけない。お前はメインの選手なのだからスポットで出る選手じゃない。だからもっと責任感を持ってプッシュしてアグレッシブにプレーしろと活を入れられました。

 これまでそういう風に言われたことがなかったんですけど、やらなきゃいけないという気持ちになりましたし、(HCから)尻を叩かれてそこらかやるというレベルだと自分としても最悪だと思うので、もっと自分で自分の尻を叩いてやらなきゃいけないなと再認識できました」

 またここ最近プレー面で迷いも生じていた部分があったようだが、やはりミリングHCの叱咤で吹っ切れたようだ。

 「自分が何を求められているのかというのが、ちょっと分からないなという時期がここ最近あったんですけど、とにかく監督に尻を叩いてもらって、お前がアグレッシブにプッシュしたり、点を取りにいかないといけないんだと言われて、ある意味今自分が求められていることを再認識できました」

 これを機に河村選手本来の積極性が戻り、後半だけで12得点を叩き出す活躍をみせている。

 そして続く第2戦では、立ち上がりから積極果敢なプレーを披露し、チームに勢いをもたらすことに成功。本人は果敢なディフェンスをしかけ後半にファウルアウトしてしまったが、チームの勝利を目指し、最後まで積極性を失うことはなかった。

【ミリングHC「バスケIQはNBA選手並みに高いレベル」】

 ミリングHCも河村選手の将来性に期待し、高いパフォーマンスができると信じているからこそ、叱咤激励していた。

 「ここまでよくやっているが、やはりユウキもまだ若い選手なので、どうしても試合ごとに好不調が出てしまう。そうした課題について出場時間をもらい経験を重ねながら、プレーの安定感を増せるように模索していくしかない。

 (第1戦の)前半は良くなかったが、ハーフタイムで声をかけた後の彼はエネルギッシュなプレーをしてくれた。立ち上がりに失敗すると、そのまま後半に引きずってしまう選手がいるが、良い選手というのはしっかり修正できる。そういう点で彼は精神面の強さを見せてくれた」

 まだ河村選手は19歳でしかない。たが米国の大学トップ選手たちは1年時や2年時でNBA入りし、即主力選手として活躍している選手もいる。それを考えると、やはり今でもBリーグで高いレベルのプレーを求めることは間違っているわけではない。しかもミリングHCによれば、河村選手のバスケIQは、そうした米国トップ選手にも引けを取らないと断言する。

 「フィジカル面では同じPGでも(米国のトップ選手は)2メートル近くあり、高く飛べ、ダンクもできるので、ユウキとはまったく異なるタイプだ。

 だが精神面や試合に臨む姿勢、パス技術、コートビジョンなどバスケIQは非常に高いレベルにある。このまま成長を続け、フィジカル面も強化していけば、さらにいい選手になっていくいだろう」

 京都戦で得た気づきを機に、明らかにプレーの質に変化が起こった河村選手。今後のプレーが楽しみでならない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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