「英国への輸送は中断しない」フランスの決断。48時間でEUレベルの話し合いへ。
コロナウイルスの変異株の登場で、英国との交通を遮断する国が、次から次へと現れている。
最後まで議論があったフランスも、結局21日(月)0時より、英国への渡航制限措置に踏み切った。
決定は、海をはさんで隣国の中では遅かったが、閉鎖実地の時期はドイツ、イタリア、アイルランドなどとほぼ足並みをそろえる結果となった。
ただし、全面閉鎖ではない。
フランスから英国へ渡るのは、人も物も禁止されていない。
英国からフランスに来るのは、空港、海上、鉄道(ユーロトンネル)もすべて禁止される。人と、人が物を運ぶのも禁止されるが、人を伴わない貨物輸送のみは許可されるという。
これは48時間の措置である。
なぜ48時間なのかというと、フランス首相官邸によると、48時間以内に、EU加盟国が英国からの流れに対して、どのような規制を設けるのか、対応を調整できるようにするべきだと説明している。
フランスニュース局のBFMテレビで、ジャン=バティスト・ジェバリ交通担当大臣は「第一に、流れを再開できるように、十分に堅牢な保険プロトコルを整備すること、第二に、物資の輸送を継続できるようにしなければならないので、現実的なレベルで手配を整えること」と説明した。
他の理由としては、メディア情報を見ていると、現在英国にいるフランス人、およびEU国籍の人が帰って来られないという問題がある。このままでは、在留の人や一時的に滞在している人のみならず、物資を運ぶトラック運転手で、フランス人やEU国籍の人が、英国に荷物を運んで行ったっきり帰って来られなくなるのだ。これでは、誰も英国への輸送の仕事をしたがらない。
だから48時間という期限をつけて、検査体制などをEUのパートナーたちと話し合う必要がある。このことは、スペインも要望しているようにEUという枠組みで27加盟国で統一するのか、部分的に統一するのか、それともより関係の深い国だけで連携するのか、まだわからない。
実際、フランスのように、英国と海でもトンネルでもつながっている国は世界中1カ国しかないとしても、フェリーでつながっている加盟国とつながっていない加盟国では、考えも対応も違うものとなるだろう。
正直に言って、通常時でも、自国民を第1番に心配し、政治的には1.5番目くらいにEU国籍の人(+自国の滞在許可証保持者)を心配すると思う。しかしこの非常時には、自国民の保護でさえ精一杯だ。もはやEUを離脱してEU国籍ではないイギリス人は、三の次くらいになってしまうのかもしれない。
それでも、ここでフランス(欧州大陸)から英国への輸送を切断したら、イギリス人はどうなってしまうのか。飢えることはなくても、生鮮食料品が大欠乏して、生活必需品が不足してしまうリスクがある。ブレグジットの「合意なし」でその心配をしていたら、今度はウイルスの変異株が襲ってしまった。
だから、フランスもEU諸国も、大至急クリスマス休暇返上で、対策を話し合う必要があるのだ。
「EUを離脱する」「君たちと一緒はいやだ」「自分の好きにしたい、自分の好きに決めたい」と言っていた国に対して欧州諸国は優しいなあ・・・と感じるが、今後の話し合いの結果を見てみないと、まだわからない。
しかし、英国がEU離脱の国民投票をした約4年半前、このような事態になるとは、誰が予測しただろうか。やはり、国民投票の結果の「賞味期限」なんて、せいぜい5年なのだ。