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【英会話】I'm stupid today.って言ったら、不自然だね って言われた。どこがおかしい?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 仕事で英語を話し始めて20年ほどになりますが、英語を話し始めた時、意外に修正されたのは主語でした。I をIt に、It をI にされたりする。
 そんな私の失敗談や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は、読むと自然な英語を得られるお得なエッセイです。

馬鹿になってる のは、なに?

 今ではそうでもないですが、英語を話し始めたころは、かなり集中力が必要だったものです。なにを言うかを、話しかける直前に頭の中で作っておいたりする。例えば、
ちょっと邪魔していいかな? 生徒の鈴木さんについて教えて欲しいんだけど。
と言おうと思ったら、まず許可だからCan I を使って、~したいだからI'd like to でぇ、なんて考えて、
Can I interrupt you for a moment? I'd like to know about your student, Mr. Suzuki.
って英文を頭で組み立ててから話しかけてた。結構な集中力でした。

 ただこう言う英語の話し方だと、困るのがちょっと調子の悪い時。前日に呑みすぎて、ちょっとアルコールが残っている時なんてさすがにぱっと英語が出てこない。
 さっきみたいなことも、あれ? 許可ってCan I? だっけ? Can you? だっけ? と基本的なところで迷ったりする(Can you? は依頼ですね)。まぁ、英語を思いつくならまだいいんですが、たまには完全に詰まったりして。同僚にRichに話していて、
Just a sec. How can I say? ... (ちょっと待って、どう言えばいいのかな?)
で止まってしまう。ああ、昨日は呑んだからなぁ、やっぱりワイン2本は呑みすぎだよ なんて後悔しても後の祭り。眉をひそめても、額を押さえても言いたい英語が出てこない。ちょっと自分に呆れて、
I'm stupid today.
ってつぶやいたんですが、それを聞いたRichはにやり。その言い方だとちょっと変だよ とのこと。
 みなさん、私の言った英語、どこがおかしいかお気づきでしょうか?

 続けてRichが徳さんは馬鹿じゃないでしょ とちょっと嬉しいことを言ってくれる。ああ、事実と反したことを言ったから変なのか?(本当か?) と思ったんですが、続いて、こう言ってきた。
馬鹿になってるのは、なに?
 ん? 馬鹿になってるのはおれだろう? と思ったんですが、はっと気づく。
 Native English Speakerって、自分の精神と自分の体を分けて考えるんです。自分ってのは精神のことで、体はその乗り物って感覚。デカルトが「Je pense, donc je suis(私は考える、ゆえに私は存在する)」って言ったのも元々そういう発想があるからなんだと思います。精神があれば自分があるってことですから。

 とすると、ちょっとワインが体に残っていて馬鹿になっているのはいったいなにかと言うと。
 それは、私の脳みそ。んでもって、それはstupid というよりも働いていないってことなんで、家電が壊れているとかそんなときに使う言い回しを合わせて、

My brain isn't working today.

って、言ってみるとRichがサムアップ。自然な英語だと褒められました。

 このあたりの自分の精神と体は別のものという感覚はわれわれNative Japanese Speakerには違和感がある。精神と体は基本的に一緒のものですからね。手が勝手に動いたんだなんて冗談で言いますけど、あくまで冗談で言い訳にもなりません。

 英語を話していて思うんですが、この「自分の精神と躰は別のもの」という感覚はNative English Speakerがウソや建前を嫌うというところに通じてるんだと思います。だって、嘘や建前をいうと精神と体(言葉)がズレちゃいますからね。元々別ものなので、いつも合わせておく不断の努力が必要なんです。それに対して、もともと一緒の我々は建前や軽いウソを言ってもズレたりしない。なら、その場の雰囲気を壊さないために建前使っとこう、となる。

 英語を話すとき、Native English Speakerみたいに思ったことを率直に言うのが怖いという話がありますが、どうぞその時は自分の精神と躰は別ものだから、合わせなきゃならないと思ってください。その場の雰囲気より自分の健康。嫌なものはイヤ、自分はこう思う、言いやすくなりますよ。おためしを。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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