同性愛の反乱から50年 NYプライドマーチで見た「自分らしく生きる」こと
アメリカをはじめとする世界各地では、毎年6月を「プライド月間」とし、さまざまなイベントが行われる。これは性的少数者であるLGBTQIAの権利を啓発するためのもので、象徴であるレインボーカラー(虹色の旗)が各所ではためき、人々はそれを見ながら、「自分であること」を喜び、誇りを確認する。
プライド月間のクライマックスとして、ニューヨークでは毎年、世界最大規模の「NYCプライドマーチ」(別名ゲイパレード)が開催されているが、今年は6月30日に行われ、15万人もの人々がパレードに参加し、人出は250万人にも上った(数字は米系メディア発表のもの)。
今年パレードに初めて参加した40代のゲイの男性は「ニューヨークでは一般的に、LGBTQIAに対する認識は向上している。一方トランプ政権下では、軍隊の参加権を剥奪されるなど後退もあり、戦いは続いていきます」と言う。パレードの意義については「我々に対するヘイトクライムはいまだにあるが、こうした大々的なイベントで居場所を見つけられるのは意義深い。またここに辿り着くまでに犠牲を払ってきた先人に、改めて敬意を払うべきタイミングでもある」と語った。
今年は「ストーンウォールの反乱」(Stonewall riots)から50周年にあたる歴史的な年ということで、盛り上がりが一段と増した。
ストーンウォールとは、プライドの聖地とされている、現在ニューヨークでもっとも有名なゲイバー「Stonewall Inn」の名前。今から50年前の1969年6月、このバーに警察が捜査で踏み込み、同性愛者が自分たちの権利を主張するために、初めて立ち向かって起きた抵抗運動のこと。
それが基で、こんにち世界中で行われているプライドイベントの多くが、6月に行われるようになったのだ。
プライドのシンボル、レインボーフラッグの意味
レインボーフラッグはそれぞれのカラーに意味があり、一番上から生命、癒し、太陽の光、自然、調和、精神を表す。参照
1978年、アーティストのギルバート・ベイカー氏(Gilbert Baker)が「喜び」「美しさ」「パワー」の象徴としてデザインした(最初は8色だった)。旗は同年6月、サンフランシスコで開催したゲイ・フリーダム・デイ・パレードで初めてはためいた。翌年、現在の6色バージョンが完成した。
ゲイバーやカフェ、クラブの目印として店頭に年中飾られているものだが、ここ5年ほど「プライド月間を応援します」「違いを尊重します」という意味で、6月の1ヵ月間、旗を出す店や企業が増えている(ニューヨーク市地下鉄、Google、HSBCなど、大企業が率先)。
WorldPride 2019 | Stonewall 50 Promo
今年も無事に終了...しかし
毎年のことだが、今年のプライドマーチも、テロを警戒し、相当数の警官が警備にあたった。おかげで何事もなく、華麗に幕を閉じた。
ただし全米各地では、プライドイベント関連で頻繁に事件が起こっている。記憶に新しいのは今月8日、首都ワシントンD.C.で開催されたプライドパレードで、銃声のような音が響き、現場が一時パニックとなった。大混乱により、7人が軽傷を負い病院に運ばれ、1人がハンドガン所有で逮捕されたが、発砲の形跡はなかった。
また近年思い出す大事件としては、フロリダ州のゲイ・ナイトクラブで2016年6月、49人もの人々が犠牲になったテロともヘイトクライムとも言える「オーランド銃乱射事件」が思い出される。
「みんなちがってみんないい」
最後に少しトピックスが違うが、プライド月間の締め括りとしてこちらもお伝えしたい。
私には、たまに聞かれて困る質問がある。「〜な見た目の人はアメリカでどのように見られますか?」「アメリカ人は〜なのに、なぜ〜な格好をするのですか?」などといったものだ。
まず前提として、私はこちらに20年近く住んでいるので、誰がどんな格好で体格だろうと、迷惑をかけられない限り、まったく気にならない。逆に質問されて初めて認識するくらいだ。そして、そのような質問を受けるたびに、ダイバーシティ(多様性)という言葉や認識はここ10年くらいの間で日本でも多く話題に上るようになったが、まだ多様性の「真の理解」には到っていないことを知る。
「多様性」いつから聞くように?
過去30年以上にわたり収録した全国の新聞記事(約150紙分)を一括検索できる「G-Searchデータベース」で調べると、多様性という言葉の新聞掲載数は、30年前の1989年はたったの795件だったのが、2018年は5万3,017件に上った。2007年を境に、4桁台から5桁台に増えている。
実際のところ、私を含めこちらの人(特に人種のるつぼ、ニューヨークの人々)は、他人がどんな背格好であろうと、肌や髪や目の色が何であろうと「一向に気にならない」。ニューヨークのビジネスシーンでは出世できない体格があると昔から言われていて、確かに一理あるけれど、「あの人の体格は...」と後ろ指差すような話題を持ち出さない。
体格であれ、セクシャルアイデンティティであれ、「どんな自分も認め、誇りに思う」ことが重要で、他人がとやかく言うことではない。そもそも美意識なんて、ある一つの国や地域で美しいとされていても、世界中の大多数の国ではまったく逆、なんていうことも実際多いのだ。日本人もアメリカ人も大いに違う国や場所へ足を運び、現地のさまざまな人々と触れ合い、真の多様性を身につけて欲しいと願う。
唯一無二の尊い自分という存在に自信を持ち、自分らしく生きよう。「違い」を受け入れ尊重できる社会を人々が力を合わせて作り出そう。これらを毎年レインボーカラーの季節に、ぜひ思い出そうではないか。
写真で振り返る「NYプライドマーチ2019」
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(Text and photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止