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ソフトと硬式野球“二刀流”女子高生軍団が「ホークスカップ」でジャイキリに挑む

田尻耕太郎スポーツライター
熊本国府ナイン

 九州・沖縄の高校からクラブチームまでの女子硬式野球チームNo1を決める「2023ホークスカップ クイーンズトーナメント supported by SMBC」が6月21日(水)~25日(日)にわたり全試合福岡PayPayドームを舞台に開催される。

過去2大会とも初出場チームがV

 2019年の第1回大会は当然ながら参加全チームが初めて出場した中で神村学園高等部が初代女王に輝いた。2020年から2年間は大会中止となり、昨年開かれた第2回大会では大会初出場の九州ハニーズが栄冠を手にした。

昨年優勝した九州ハニーズ。今大会も出場して連覇を狙う
昨年優勝した九州ハニーズ。今大会も出場して連覇を狙う

 過去2回とも大会初出場チームが優勝を果たしている中、今回の第3回大会にエントリーした全7チームで唯一初出場するのが熊本国府高校だ。

ソフトボールで県総体準優勝

 じつに、ユニークなチームだ。

「うちは女子ソフトボール部と女子硬式野球部の『二刀流』なんです」

 そう話すのは熊本国府の河野博行監督。

 大会を控えた6月10日に熊本市内のグラウンドに出向いて取材したのだが、この日は大会1回戦でも激突する熊本レッドホークスとの練習試合だった。プレーボール直前、熊本国府の選手たちは一塁、二塁、三塁のベースに数名ずつが分かれて、走りだしたり戻ったりの走塁練習を30分近くも繰り返していた。試合直前の練習といえばプロ野球でもアマでも通常はシートノックである。

試合直前まで「リード」や「帰塁」の確認
試合直前まで「リード」や「帰塁」の確認

「1週間前までソフトボール部として県の高校総体に出場していました。総体に向けてずっとソフトボールの練習をしていて、硬式野球に切り替わったのは3日前。ソフトボールには『リード』がありません。そのため野球の走塁の基礎をまず理解してもらうところからやっています」

 基礎の基礎から教え込む。たとえば、三塁走者はファウルゾーンをリードする方がいい。その理由を選手たちに問いかける。考えさせて答えを導かせ、その後に説明をする。「万が一打者の打球に当たった場合、フェアゾーンに居たらアウトになってしまう」。逆に帰塁するときは線上に近いところを行く。捕手が牽制するとき三塁手へボールを投げにくくするためだ。ちなみに河野監督は熊本工高の野球部出身で投手。九州共立大では大瀬良大地(現広島東洋カープ)の1学年上でベンチ入りしていた。

ソフトと野球の二刀流は全国2校のみ

 熊本国府のソフトボール部は1953年に創部され、全国準優勝の経験もあった。河野監督は7年前から同校に赴任し最初は男子野球部を指導。2021年から女子ソフトボール部の監督に就任したのは、近い将来のソフトボール部から女子野球部への移行を見据えたものだった。

「当時の校長先生が『女子野球をやろう』と。女子野球が盛んになり始めたのもありましたし、2021年には全国高等学校女子硬式野球選手権大会の決勝戦が初めて甲子園球場で行われることが決まるなど気運も高まっていたためだと思います」

 ソフトボールと女子硬式野球の二刀流での活動は一時的な措置で、河野監督は「この子たちはすごく珍しい年代。全国でも2校(もう1校はクイーンズトーナメントに出場する宮崎・日南学園高校)しかありません。なので私も全国で2人しかいない監督です」と照れ笑いを浮かべる。

 もちろんむずかしさもあるが、実際に挑戦してみると苦難以上の利点を感じているという。

「技術面でいえば投手にスピード負けしない打撃だったり、守備でも捕ってから投げるまでが速く、ミスをした場合でも野球は塁間の距離があるのでアウトにできるから選手たちも慌てなかったりするところです。私自身も野球畑を歩んできてソフトボールは未経験でした。だけどソフトボールをやるから野球に生かされること、またその逆もあることに何度も気づかされました。野球だけをやっていたらこのような感覚にはならなかったでしょう。やはり別のものも見たり体験したりすることは大切。指導においても自分の経験が正しいのではなく、常にいろいろな角度から見たり考えたりすることの大切さを知ることができました」

1つ勝てば「女王」九州ハニーズと対戦

 部員数は現在25名。チームの強みは「結束力」だ。

「イワシの集団って感じです。イワシの大群。決して上手じゃないかもしれないですけど、すごくまとまっていて、一つになってやってくれるような。元気で明るくまとまって、そういう印象ですかね」

 ソフトボール県高校総体では、実に10年ぶりの準優勝を飾った。

「試合を重ねるごとに強くなる。それを本当に実感しました。普段はできないようなファインプレーを見せたり。自分たちはやれるという自信をもって、ホークスカップにも望めると思いますし、彼女たちは緊張するようなタイプでもないので本当に楽しみです」

 大会で初戦を突破すれば、前回女王の九州ハニーズと激突する。川端友紀内野手、楢岡美和外野手、小島也弥内野手が侍ジャパン女子代表に選出されたクラブチームで地力は相手が1枚も2枚も上かもしれない。

 それでもキャプテンの今村咲葵は明るく「国府は自分たちで流れをつかみに行けるチーム。全力で取り組んで、笑顔でいい思い出になったねと振り返れるような悔いのない試合をしたい」と話しながらも、言葉には力をこめた。

 初出場チーム初Vの流れも“イワシの大群”を後押しする。ソフトと野球の二刀流チームが今年の「ホークスカップ クイーンズトーナメント」を面白くしてくれそうだ。

「2023ホークスカップ クイーンズトーナメント supported by SMBC」

【試合日程】全試合福岡PayPayドームで開催

<6月21日(水)・1回戦>

(1)日南学園高校vs折尾愛真高校(16:00)

(2)神村学園高等部vs秀岳館高校(19:00目途)

<6月22日(木)・1回戦>

(3)熊本レッドホークスvs熊本国府高校(19:00)

<6月24日(土)・準決勝>

(1)の勝者vs(2)の勝者(ホークス戦終了1時間30分後目途、最短18:30)

(3)の勝者vs九州ハニーズ(第1試合終了30分後目途)

<6月25日(日)・決勝>

決勝戦(ホークス戦終了1時間30分後目途、最短17:30)

※写真はすべて筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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