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早稲田大学卒の「元女性」。男性として、一人の女性を愛して仲良く暮らしたい~おみおじリポート191~

大宮冬洋フリーライター
44歳。戸籍変更を終え、自立した女性との出会いと結婚を望んでいます。(本人提供)

※2024年11月28日追記。高柳さんからオネット外の女性と結婚を前提に交際が始まったとの連絡がありました。当然ながら、新たなお見合い申し込みの受付は停止します。彼の成婚を一緒に願っていただければ幸いです。

カミングアウト、手術、男性ホルモン投与、戸籍変更……。受け入れてもらうには時間が必要です

 こんにちは。大宮です。自分の周囲にいる独身男女の婚活を前のめりで支援する「お見合いおじさん活動(略称:おみおじ)」を婚活パーソナルトレーナーのマチコ先生と一緒に推進しています。僕の読者(この記事を読んでいるあなたも該当します)で「そろそろ結婚したい」という人をオネット(大宮ネットワーク)にお迎えし、良縁を結ぶことをお手伝い中です。本連載ではその活動の一端をレポートしています。オネット会員の種類(受けor攻め)と募集についてはこちらをご覧ください。
 パートナーシップのあり方が多様化している昨今ですが、僕は「結婚」という制度が持つ意義は大きいと思っています。法的に様々な権利が生じるから、だけではありません。本人たちも「結婚した」「夫や妻になった」という事実によって責任感や安心感が増して、家族としての関係性が強まることが多いからです。人間という生き物には形式や役割も必要なのだと思います。
 今年6月から法律的にも男性になったので婚活を始めたい、という人がいます。東京にある介護福祉の現場で正社員として働く高柳治さん(仮名、44歳)です。LGBTへの偏見がある父親が存命中は性同一性障害をカミングアウトできず、30代までは生物学的にも社会的にも女性として生きてきたそうです。
 父親の死後、兄と母親には事実を伝えて受け止めてもらったという高柳さん。しかし、手術、男性ホルモン投与、戸籍変更といった段階ごとに兄も母も心理的な抵抗を示し、もともとは仲が良い家族関係がそのたびに悪化してしまうと明かしてくれました。
「ちゃんと報告と説明はしているのですが……。(名実ともに男性に変わった自分を)受け入れてもらうには時間が必要だと思っています」

自作の親子丼定食。高柳さんが住む賃貸マンションでは月1回「給食当番」があり、希望世帯全員分のごはんを作るそうです。「先日は屋上でBBQをしながら地元の花火をみんなで観ました」(本人提供)
自作の親子丼定食。高柳さんが住む賃貸マンションでは月1回「給食当番」があり、希望世帯全員分のごはんを作るそうです。「先日は屋上でBBQをしながら地元の花火をみんなで観ました」(本人提供)

女性を演じ続けた事務職時代。大変過ぎて仕事どころではないと判断して福祉業界に入りました

 結婚願望は20代の頃からあったという高柳さん。しかし、性別の悩みなどがあって、早稲田大学の学生時代は部屋にこもって音楽ばかり聴いていた時期もあったそうです。1年留年して卒業して一般企業に就職しましたが、20代は葛藤続きだったと振り返ります。
「事務職を通算で8年ぐらいやりましたが、女性の服装や言葉遣いを『こんな感じかな?』と常に自己チェックしながら演じ続けることが大変過ぎました。これでは仕事どころではないと判断して福祉業界に入ったんです」
 介護福祉の現場では、メイクやマニュキュアをしたりスカートをはいたりする必要がありません。利用者も見た目では人を判断しない傾向がある、と高柳さんは教えてくれました。
「主な仕事は、利用者の方の日常生活の支援です。一緒に食事をしたり、着替えの準備や歯磨きを手伝ったり、体調をみたり。僕自身の日常生活の延長線上にあるように感じていて、変な緊張感はありません」

趣味の一つは人前で歌うこと。「まだ変声期で音域が狭いのですが、コロナ禍で歌えなかった時期もあったので歌えること自体がとにかく嬉しいです」(本人提供)
趣味の一つは人前で歌うこと。「まだ変声期で音域が狭いのですが、コロナ禍で歌えなかった時期もあったので歌えること自体がとにかく嬉しいです」(本人提供)

「この人とならば普通の女性として生きていけるかも」。でも、妻や母になるのはどうしても無理でした

 適職を見つけて自活できている高柳さんですが、恋愛面では悲しいことが続いたようです。いわゆるトランスジェンダー固有の悩みです。
「20代後半まで付き合っていた年上の女性はレズビアンでした。僕は男性の心で彼女を愛していて結婚したいと思っていたのです。でも、彼女のお母さんに交際報告も兼ねて一緒にカミングアウトしてほしいと頼まれて、トランスジェンダーとしての自覚がなかった僕は混乱。彼女のお母さんが癌を患ったことをきっかけにして会えなくなってしまいました」
 苦労を感じさせない朗らかな人柄で、知的で清潔感もあり、歌うことが得意な高柳さん。その魅力に惹かれた男性とも付き合ったことがあるそうです。
「ライブイベントで歌っていたら観客として来ていた男性に話しかけてもらいました。とても落ちついている人で、話しやすく、『この人とならば普通の女性として生きていけるかも』と思ったんです。1年付き合って婚約までいきましたが、やはり自分が妻や母になるのは無理と悟って挫折しました」

緑豊かなところが好きだという高柳さん。「東京23区の中ではほどよく田舎と言われるところでのんびり暮らしています」(本人提供)
緑豊かなところが好きだという高柳さん。「東京23区の中ではほどよく田舎と言われるところでのんびり暮らしています」(本人提供)

結婚とはたった一人と家族になること。世界のどこかにいる人の心にピンポイントで刺さればいい

 法的にも男性になった今、胸をはって婚活をして前向きな女性と結ばれたい、と高柳さんは話します。ただし、事情が事情なので「自分は選ぶ側に立てるとは思っていない。選んでもらえたらありがたい」という心境だそうです。彼の話をじっと聞いていたお世話係のマチコ先生が叫びました。
「まさに受けオネットにピッタリですね! 一般的な条件の人が婚活をするとスペックで無数の同性と比較されてしまいますが、高柳さんならば世界のどこかにいる人の心にピンポイントで刺さるかもしれません。この記事は婚活をしていない独身女性も読むので、誰かの気持ちに響いて連絡が来るのを待ちましょう」
 マチコ先生が心配するのは、むしろ「お見合い後」のことです。できる限りフォローしていきたいとのこと。男女双方と直接連絡ができるマチコ先生のような存在は、「考え過ぎて一人反省会をやってしまう」傾向があるという高柳さんには特に有効です。
「相手との関係性が壊れそうになったとき、反省点を間違えている人は少なくありません。そこじゃない!と私がツッコミを入れたり(笑)。早めに私に相談してくれれば誤解を解くこともできます」
 マチコ先生の言葉で安心したのか、表情がパッと明るくなる高柳さん。素直で可愛げもある人です。もともと男性だったら、20代のうちに結婚して温かい家庭を築いていたことでしょう。でも、人生これからですよ。かなり特殊な苦労を重ねた高柳さんには今後いいことしか起きない気がします。その明るい生活の傍らに、優しい女性がいてほしいなと思います。

昆虫観察も趣味だという高柳さん。「自分で育てたアゲハチョウの写真です。もちろん、結婚相手に趣味を強制したりはしません。夫婦の時間とそれぞれの時間をバランスよく大切にしたいです」(本人提供)
昆虫観察も趣味だという高柳さん。「自分で育てたアゲハチョウの写真です。もちろん、結婚相手に趣味を強制したりはしません。夫婦の時間とそれぞれの時間をバランスよく大切にしたいです」(本人提供)

※文中の受けオネット会員は仮名です。高柳治さんの詳細プロフィールやマチコ先生と大宮による超実践的婚活アドバイス(ヤフーの有料記事です)を読みたい方(=攻めオネット会員になりたい方)はこちらをご覧ください。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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