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16戦全勝オールKOのサウスポー

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Amanda Westcott/SHOWTIME

 WBCスーパーライト級7位、WBA、IBFで11位にランクされるゲイリー・アントゥアン・ラッセル(26)が、デビュー以来16連続KO勝ちを収め、パーフェクトレコードを更新した。

 リオ五輪出場後にプロに転向し、順調に歩を進めるゲイリー・アントゥアン・ラッセル。この日の相手は、元IBFスーパーフェザー級&同ライト級の2階級制覇王者、ランセス・バースレミー(37)。サウスポー同士の対決となった。

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 若手の「踏み台」とされた感は拭えないが、バースレミーも元王者の意地を見せ、右ストレートをアントゥアン・ラッセルの顎にぶち込みチャンスを掴んだ。キューバから亡命し、米国で人生を築いてきたバースレミーの渾身の一撃だった。

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 とはいえ、第6ラウンドにラッセルが放った飛び込みながらの右フックを浴びてダウン。両膝をついた状態から立ち上がって続行を求めた2階級制覇チャンプだったが、ダメージを重く見たレフェリーが試合終了を宣言した。

 ストップに納得できないバースレミーは、試合後に言った。

 「自分のキャリアで最悪の敗北だ。ラッセルのミスではないが、自我を破壊された。レフェリーは私を2度世界王座に就いた人間ではなく、ルーキーのように扱った。私はベテランだ。十分なキャリアがあり、ピンチを切り抜けられる。

 いいパンチを喰らったことは確かだが、まだやれたし、止めるべきじゃなかった。起き上がって『大丈夫。戦える』って言ったんだ。違うレフェリーでのリマッチを希望する」

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 勝者も述べた。

 「ランセスがレベルの高い選手だとは分かっていた。彼は戦い続けたかっただろうな。闘志があるしね。

 実は5ラウンドに左拳を痛めてしまった。でも、気持ちが入っていたよ。お互いに闘士として食うか食われるかの試合をしていたんだ。もちろん最後までやりたかったさ。ただ、レフェリーも仕事を全うしたんだ。もし試合が続いていても、同じ結果だったさ」

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 5回までの採点は49-46、49-46、48-47と3名のジャッジ全員がラッセルを支持していた。

 ゲイリー・アントゥアン・ラッセルの次戦は誰となるか。タイトル挑戦はいつ決まるか。140パウンドの台風の目となる力がありそうだ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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