「今年もダメだ。すでに終わった」金正恩発言に国民も落胆
北朝鮮の金正恩総書記は、昨年末に開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第6回総会拡大会議で、「多変的な情勢波動に備えて2023年度に強力に推し進めるべき自衛的国防力強化の新しい中核目標」を提示し、軍事力をさらに強化する方針を示した。
これに対する北朝鮮国民の反応は、一言で言って「ウンザリ」というものだ。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
国営メディアは元日、従来の金正恩氏の新年の辞に代わり、拡大会議の報告を大きく報じたが、それを見た国民らは「今年もダメだ。すでに終わった」と失望し、深い溜め息をついているという。国防力強化は、国民にさらなる耐乏生活を強いることに他ならないからだ。
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国民の最大の関心事は、核兵器やミサイルの開発やド派手なタワマン建設ではなく、食べ物をいかにして手に入れ生き抜くかということだけあって、何らかの対策が示されるのではと関心を寄せていた。
ところが「敵対勢力の軍事的挑発」だの、「国防力強化の重要性」だの、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の新システム」だの、人民生活(民生)そっちのけの内容ばかり。多くの国民が「国防力強化という言葉を聞くだけで鳥肌が立つ」という反応を示しているという。
故金日成主席が「わが人民すべてが瓦屋根の家に住み、白米を食べて肉のスープを飲み、絹の服を着る豊かな生活ができるでしょう」と、1962年10月の最高人民会議第3期第1回で演説してから60年。しかし、それは未だに実現されておらず、さらなる耐乏生活を強いられるのかと、国民たちは不満を口にしている。
「(金正恩氏は)住民の食糧問題には関心がなく、核とミサイルにばかり気を取られているようだ。さもなくば、食糧問題で数十年間苦労している住民に向かって、核とミサイル開発にさらに力を注ぐなどとどうして言えようか」(情報筋)
また、絶糧世帯(食べ物が底をついた世帯)に陥って餓死する人や、路上のコチェビ(ホームレス、ストリート・チルドレン)が日々増えるのを目撃しているだけあり、「自分とは関係ないと思っていても、いつかはああなるかもしれないという恐怖心でいっぱい」(情報筋)だという。
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さらに、住宅建設を昨年以上に行うことについても、住宅難解決の喜びよりも、建設費や労働者への支援として様々な「税金外の負担」や勤労動員を強いられることへの心配が先立っていると、情報筋は述べた。