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NY金6日:反落、イエレンFRB議長が利回り急伸リスクに言及

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

COMEX金6月限 前日比比2.90ドル安

始値 1,192.50ドル

高値 1,196.90ドル

安値 1,187.40ドル

終値 1,190.30ドル

米長期金利の上昇を受けて、戻り売り優勢の展開になった。

アジアタイムは1,190ドル台前半から中盤で底固い展開になったが、欧州タイムに入ると戻り売り圧力が強まり、本日安値となる1,187.40ドルまで下落した。その後は、4月ADP雇用統計が低調な結果に終わったことで急反発する場面も見られたが、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が米利回り急伸のリスクに言及したことを受けて、引けにかけては再びマイナスサイドに沈む展開になっている。

イエレンFRB議長は、現在の長期金利が非常に低い水準にあるとの認識を示した上で、初回利上げ後に長期金利が急上昇する可能性があるとの見方を示した。2013年に当時のバーナンキFRB議長が債券購入の段階的縮小を行う可能性を示した後に金利が急伸した例も挙げ、金利上昇リスクに対して警戒感を示している。

米長期金利は4月下旬から緩やかな上昇傾向を見せているが、本日は今年最高の利回りを更新したことが、無金利・無配当資産である金相場に対してはネガティブに機能している。これからFRBが金融政策の正常化に着手する中、金価格は大きなダウンサイドリスクを残した状態にあることが再確認できる。ただ、為替相場がドル安方向に振れる中、積極的に売り込むような動きまではみられず、大きな値動きには発展しなかった。

一方、4月ADP雇用統計であるが、民間雇用者数は前月比+16.9万人に留まった。マーケットでは前月の+18.9万人から+20.0万人までの上振れが想定されていたが、前月に続いて低調な数値になったことは金価格に対してポジティブ。8日には労働省の雇用統計も発表されるが、ADP統計と同様に低調な数値になれば、4月に続いて5月も金相場は方向性を欠く展開となる可能性が高まる。雇用指標に対する事前の期待はそれ程高まっていないため、仮に悪い数値になっても上昇リスクは限定的と考えている。ただ、改めて本格的に売り込んでいくには良好な経済統計の積み重ねが必要であり、雇用統計の改善がなければ「上値が重いものの下げ渋る」展開に留まることになる。

なお、日本のゴールデン・ウィーク中の4営業日累計では16.80ドルの上昇となっている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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