1円ライター問題、「現場の声」から見るキュレーションサイトが生まれた問題
フリーライター約10年目になった篠原修司です、毎年なんとか生きてます。DeNAの「WELQ(ウェルク)炎上」から一気にキュレーションメディア批判が始まりましたが、そんななか現場で働いていた人からの興味深い声があがりました。
全文はリンク先を読んで頂くとして、訴えとしてはこのような感じです。
おそらくこの方からすると私は高給ライターに属する「敵」なのだと思いますが、私は1円ライターを潰そうとは考えていません。ただ、権利を守るため「発注者側」に抗議しているだけです。
私の文章を盗まないで欲しい
私のようなライターがキュレーションメディアを嫌う理由のひとつは、自分が制作したコンテンツを盗まれているからです。
盗まれているだけなら気付かなかったかもしれませんが、そうしてあちこちからコンテンツを盗んで作られたページが検索エンジンで自分が書いた記事より上位に表示されてしまっては、コンテンツを作っている方としてはたまりません。
発注者側は「引用」だと主張していますが、それは本当に引用の要件を満たしているのでしょうか? 満たしているのであれば今回のような問題にはなりません。それが引用ではなく無断転載、盗用にあたる可能性が高いためサイトの非公開化・閉鎖が続いているわけです。
この方が語るように現場の職場環境は良いのだと思いますが、その仕事の中身がコンテンツを盗むものなのであればどんな職場環境であれ受け入れることはできません。
キュレーションではライターになれない
また、この方にはもう1つ知って欲しいことがあります。それは「キュレーションではライターになれない」という事実です。
私は編集長時代にライターの採用面接も担当していましたが、そこで「キュレーションサイトでライターをやっていた」と言われても全く評価しなかったでしょう。なぜならキュレーション業務を続けて身につく技術は「キュレーション」であり、「ライティング」ではないからです。
これはほかのライターの方も書かれていましたが、さらに言えばライターとしての「書く」部分は仕事のすべてではありません。書くことは仕事の一部でしかなく、企画の作成・持ち込み、編集者やディレクターとのやり取り、取材先との調整、読者の反応の分析など、書くだけでは仕事として成り立ちません。これらすべてを含めて「ライティング」なのです。
キュレーションサイトの案件をこなし続けるだけでは、ライターとして生きていくのは難しいでしょう。
「現場の声」から見えてくる問題
ただ、今回の「現場の声」からはひとつの問題が見えてきます。
これまでも業界では「ああいった単価の低い仕事は暇な人がやっている」と話されてきましたが、今回、「私たちは子育て中の主婦である」との言葉が出てきました。
つまり「暇」ではなく「家から離れられない」からキュレーションサイトの仕事をやっているのであり、「子育て中の主婦が働ける場所がない」というのがそもそもの問題なのではないでしょうか?
そうした方々ができる仕事がないため不当に単価の低い仕事の発注が許容され、制作費をかけずに記事を量産するタイプのキュレーションサイトが増え続ける土壌となったのです。もしも子育て中の主婦でも働ける場所がほかに多くあれば、1文字1円のような単価の低い仕事を引き受ける人はいなかったことでしょう。
この「子育て中の主婦が働ける場所がない」という問題が、数多くのキュレーションサイトを生ませた。少なくとも私はそう感じました。と言っても、私のような個人ではその受け皿を用意するようなことはできないのですが……。