世代間の「お金の格差」を数字で眺めてみる
就業状態による家族構成と、世代別の貯蓄現状
総務省から毎年発表される家計調査の「貯蓄・負債編」では、多方面から二人以上世帯におけるお金の流れ、現状を確認できる(単身世帯は調査対象から除外されている)。この値を基に、世代間のお金周りの実情を確認していく。
まずは世帯主の世代別、世帯構成人数。二人以上世代において、世帯主の年齢区分別に、どのような構成世帯で構成されているのかを世帯主の就業状態の観点で示したもの。
子供の数(18歳未満)は1人強で、世帯主が50代になるまでにはほぼ一人立ち・別居をし、該当世帯の人数カウントからは外れる。また、世帯主だけの専業就業(=配偶者は専業主婦・主夫、子供も無職との前提)なら「18~64歳有職」は1.0人となるはずなので、20~40代は大体二世帯につき一世帯、50代になるとそれ以上の高い比率で共働き世帯であることが推定される。さらに、50代は「18~64歳有職」「18~64歳無職」を足すと2.62人となるため、両親に加えて18歳以上の子供が同一世帯内におり、少なからずが無職であることも想像できる。
一方、世帯主の年齢階級別貯蓄構成は次の通り。今件は「貯蓄のみ」の値であり、負債は考慮・相殺していないことに注意をする必要がある。
定年退職を迎える60代までは、歳を重ねるにつれて貯蓄額が増加する。そして定年後は貯蓄の切り崩しが行われるために額は減少する。また、貯蓄額の増加と共に、通貨性預貯金比率が減り、定期性預貯金の比率が増加していく。収入が増えて余力が生じるため、その余力を普段出し入れしない、その分わずかだが利息が付加される定期に回す図式。
また、50代までは比率、60代までは金額面で生命保険の値が増加するが、それ以降は減っていく。新規加入にしても既存加入保険の追加にしても、保険料が高くなること、さらには受け取れる保険金とのバランスを考えて組み換え・解約していく事例が増えた結果といえる。
住宅ローンがほとんどの負債
続いて世帯主の世代別「負債」の構成内容。住宅ローンが中堅層において大きな負担である実態がよく分かる。
負債の多くは住宅取得のための借財、しかも30代~40代にローンを組んでいる人が多数に登っている状況が把握できる。そして60代までにはほぼ完済し、それに伴い負債そのものも大きく減っている。見方を変えればローンを完済済み、住宅購入の予定が無い人、相続などで住宅を取得済みの人は住宅ローンの負担が無いため、負債額全体も小さな額面で済んでいる。
世帯主の世代別・世帯数と貯蓄額
最後に世帯主の年齢階層別・世帯数比と、貯蓄額の比率。こちらもまた現状認識のための概念的な結果。一世帯別の貯蓄額は上にある通りで、しかも「二人以上世帯」に限定されてはいるが(単身世帯は含まれない)、貯蓄の片寄り具合が分かる図となっている。
負債が大きいと貯蓄の運用自由度は下がる。若年層は直上にある通り、住宅ローンを抱えている事例も多く、負債も大きいことから、実質的な「余力としての貯蓄」はもう少し青系統色の面積が大きなものとなる。
高齢世帯数そのものが増加している、経年による蓄財の効果が表れているのも要因の一つだが、富の「年齢階層で仕切り分けした各世代間における」(個々世帯ではないことに注意)偏在があらためて分かる結果には違いない。
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