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台風とエルニーニョ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
雲の様子に夏の気配(5月10日正午、気象衛星ひまわり8号の雲画像、著者加工)

 エルニーニョ現象の影響で、4月は沖縄・奄美で気温が高くなった。さらに、この2か月あまり台風が発生していない。過去には台風が半年以上、発生しなかった年があり、エルニーニョ/ラニーニャ現象が関係していた可能性がある。

雲に夏の気配

 10日(金)の東京は正午過ぎに、気温が27.1度まで上がり、今年一番の暑さとなりました。タイトル表紙の雲画像はちょうどそのころの雲の様子です。

 宇宙からみた日本列島、その南にはまもなく梅雨前線となる雲が連なっています(青点線)。一方、赤道付近に目を向けると、東西に2つ、熱帯低気圧の雲があります(黄点線)。

沖縄・奄美の高温 エルニーニョが影響

 気象庁は10日、定例のエルニーニョ監視速報を発表しました。4月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値より0.7度高く、今もエルニーニョ現象(以下、エルニーニョ)が続いています。

 この夏にかけてもエルニーニョが継続する可能性は80%、さらに秋まで続く可能性は60%とみられています。

 エルニーニョの影響で、4月は沖縄・奄美で気温が高く、2016年以来3年ぶりに平均気温が平年を1度上回りました。

台風なしもエルニーニョが影響?

 台風2号が2月末に消滅して、この2か月あまり台風の発生はありません。台風は条件さえそろえば、季節を問わず発生します。でも、冬から春のかけては発生が少ない。今、台風がなくても珍しくはないけれど、職業柄、台風がない状態が長引くと気になってしまいます。

 これまで台風のない期間が最も長かったのは2015年12月17日から2016年7月3日までと1997年12月22日から1998年7月9日までの4776時間(199日)です。天気に詳しい人ならば、この年に覚えがあるでしょう。そう、大規模なエルニーニョ現象が発生していた時です。

台風無発生期間 長い方ランキング(デジタル台風を参考に著者作成)
台風無発生期間 長い方ランキング(デジタル台風を参考に著者作成)

 台風の詳細な記録が残る1951年以降で、台風無発生期間が4千時間(約半年)を超えた事例は10例あります。

 そのとき、太平洋赤道域はどうだったのか調べてみると、多くの場合でエルニーニョ現象またはラニーニャ現象が発生していました。台風は赤道に近い熱帯域で発生するため、おどろく話でもないけれど、改めて調べてみると何らかのつながりが感じられ、興味深いです。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.320) 、2019年5月10日発表

台風無発生期間は「デジタル台風」を参考にしました。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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