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子供達は本当に「ゲーム」漬けなのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 子供が何かの端末に向かって熱中している様子はすべて「ゲーム」、では無く……

10代の「ゲーム」の時間は長い、それとも短い!?

「ノーゲームデー」なるイベントをきっかけに、子供達のゲーム時間に係わる実情が話題に登ったことを先日「「ノーゲームデー」の誤解と実態、そして子供が本当に必要だったもの」でお伝えした。では実際に、子供達はどれほどの時間をゲームに費やしているのだろうか。総務省情報通信政策研究所が2014年9月に確定報を発表した「平成25年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の公開値をもとに、10代の子供達における色々な行動の実情を確認していくことにする。

今調査結果からは回答者の平日・休日における様々な行動の、行為者率(その行動を実施した人の割合)や平均時間などを確認できる。そこで10代に的を絞り、ゲームやテレビ視聴、ソーシャルメディアの利用、メールの読み書き、ブログやウェブサイトの読み書き、動画視聴(OFF=オンラインでは無くダウンロードした動画の再生も込み)、さらにインターネットを用いた音声通話などの行為に関して、平均利用時間を算出した。行為者・非行為者も合わせた平均時間なので、その行為の実行状況も反映した数字となる。

↑ 10代の平均行動時間(分、2013年、主要要素別)
↑ 10代の平均行動時間(分、2013年、主要要素別)

平日、子供がもっと時間を費やしている、熱中しているように見えるのは「テレビ視聴」。2時間強との結果が出ている。注力度が高い時間消費行動なら長時間の行動としては「ソーシャルメディアの読み書き」が該当するが、こちらは50分近く。さらに「メールの読み書き」が続き、「ゲーム」(据え置き型・携帯型の家庭用ゲーム機だけでなく、パソコンやスマートフォンなどによるオンラインゲーム、ソーシャルゲーム、ダウンロードタイプのオフラインによるデジタルゲームまで含む)は20分強でしかない。

休日になると余暇時間が増えるため、各利用時間も長くなる。それでも「テレビ視聴」がもっとも長いことに変わりは無く、3時間を超えている。次いで「ソーシャルメディアの読み書き」が1時間強、「ゲーム」はそれに続いてほぼ1時間となる。

大人の感覚では「デジタルメディアへの接触」は「ゲームをする」とイメージしがち。しかし実質的にはすでに子供達の間では「ソーシャルメディアを利用する」の方が代表的な要素を示す言葉として適切なのが現状。さらに熱中度やデジタル度合を除外し、単に子供が長時間注力する、外遊び的で無いエンタメ行為の視点でチェックすると、「テレビを視聴する」の方が適切な言い回しとなる。つまり(その表現自身が適切でないことはすでに説明の通りだが)「ノーゲームデー」は「ノーソーシャルメディアデー」であり「ノーテレビデー」とすべきだったことになる。

あるいは、多くの大人にとってソーシャルメディアの利用もメールの読み書きも、果てはテレビの視聴ですらも、すべて「ゲーム」の範ちゅうに入ってしまっているのかもしれない。

使用機種が問題……なのか?

「ゲームそのものをしているか否かは大きな問題では無い。ゲーム機、さらにはゲームをしているように見える機器を使っているのが問題」とする意見もあるだろう。実際にはソーシャルメディアや映像視聴であっても、ゲームをやっているように大人からは見えるのだから、全部ゲームだとする主張である。あるいは「ゲーム」をデジタル機器の操作全般としての代名詞としてとらえているかもしれない。

そこで各機種ごとに利用時間を再集計したのが次のグラフ。例えばテレビなら、テレビを画像出力機器として利用してゲーム機でゲームをしていた時間も、リアルタイムでテレビ番組を視聴した時間も、DVDの再生でテレビを使った時間も、すべて加算してある。また、特記事項として項目に「*」がついているのは、直左にある項目のうち細分化した場合の時間を示している(全スマートフォンと全従来型を足しても全携帯電話利用の時間にならないのは、PHSの利用があるから)。

↑ 10代のメディア利用状況(全体平均、分、2013年)(機種別、利用内容問わず)
↑ 10代のメディア利用状況(全体平均、分、2013年)(機種別、利用内容問わず)

機器別で確認してもテレビの利用時間がもっとも長く、携帯電話がそれに続く。パソコンや携帯ゲーム機はわずかな時間でしかない(据え置き型ゲーム機によるゲームは、画像出力にテレビを使うため、テレビ受像機利用時間に加算される)。傾注時間から子供の熱中度を心配するのなら、やはり「ノーテレビデー」とするのが妥当な話となる。あるいは「ながら視聴」を考慮するのなら「ノーケータイデー」だろうか。

なお印刷物はコミック以外に新聞や雑誌まで含めても、平均時間で10分強でしかない。「漫画ばかり読んで」との心配は、少なくとも現在では不要のようだ。

大人が子供に行う「しつけ」は、大よそ大人の常識に基づいて成されることになる。ところが実際には単なる思い込みでしか無かったり、認識されていた内容が過去の話で現在は状況が大きく変化していることもある。今件の「ノーゲームデー」関連は多分に、その雰囲気が強い。

子供の注力時間に関して問題視をするのなら、優先順位的にはゲームよりもむしろ、テレビの視聴方法やソーシャルメディアの使い方、メールのやりとりの仕方などに関する規制……ではなく、正しい方法論を子供達に教えさとすことが、今の保護者には求められているのではないだろうか。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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