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eBookJapan、1933年にスタートした戦前からの国民的作品『冒険ダン吉』を独占電子書籍化

佐藤仁学術研究員・著述家
(C)嶌田道夫

電子書籍販売サイト「eBookJapan」は2015年12月11日から、1933年から1939年まで大日本雄弁会講談社(現在の講談社)の月刊誌「少年倶楽部」に連載され、国民的ヒットを放った島田啓三の『冒険ダン吉』を電子書籍化し配信を開始した。

■1933年に開始した戦前の子供たちに大人気だった『冒険ダン吉』

(C)嶌田道夫
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「冒険ダン吉」マンガ版の貴重な原画
「冒険ダン吉」マンガ版の貴重な原画

『冒険ダン吉』は文章と絵の部分が特立した「絵物語」として、 月刊誌「少年倶楽部」に連載され、 同誌では田河水泡の『のらくろ』と並んで看板作品だった。主人公のダン吉少年は相棒のネズミのカリ公とともに釣り船で眠っているうちに、はるか南の島に流されてしまいう。 島の先住民に捕らえられたダン吉は、その賢さで先住民の尊敬を勝ち取り「だん吉島」の王様として島の文明を築き上げていくという物語。

当時、日本は石油や硝石などの資源を求めて太平洋のミクロネシア諸島に進出していた。パラオ群島のコロールには南洋庁という役所が置かれて、南洋神社もあった。そのため当時の子どもたちの関心も南洋に向けられていたそうだ。

また『冒険ダン吉』は1953~1954 年には集英社が創刊した「幼年ブック」にマンガ形式でリメイク版として連載された。当初は『ぼうけんダン吉』のタイトルだった。 また、掲載雑誌が小学校低学年向けだったことを意識したのか、絵のタッチも戦前のものより丸みを帯びたものに変わっていた。

■戦前の貴重な出版資産も後世に:かえって新鮮な印象のある作品

eBookJapanでは入手困難な希少なマンガ作品の電子化を行うことで、貴重な出版資産を後世に残す企画を行っている。

2015年11月から1950年代、1960年代の月刊誌『少年画報』16冊を電子書籍化し、eBookJapanの販売サイトで一年間独占配信を行っている。

今回の『冒険ダン吉』は戦前の大人気作品だそうだが、現在を生きる我々にとっては戦前の昭和時代は過去の歴史である。当時の物語を原本で読むことはほとんど不可能である。技術の進化によって、戦前の作品が70年以上の時を経て電子書籍化され、現代に生きる我々が読むことができるようになった。当時の歴史的背景を理解しながら読むのも楽しいし、また当時の画像や文章は現代人にとっては、かえって新鮮な印象がある。

『冒険ダン吉』が流行した戦前は今のようにテレビやインターネットもない時代である。当時の子供らはこのような物語を読んで南の島に流されたダン吉少年と島の先住民の生活に想像をかきたてていた。そのような当時の子供らのような気持ちで読んでみるのも、面白いだろう。

戦前に『冒険ダン吉』を読んでいた人もだんだん少なくなってしまうだろうが、このように戦前の人気作品が電子化されることによって、現代人が当時の出版物に目を触れることができ、当時の画像や文体を知ることができる。これら電子書籍化された作品はまさに「歴史的なアーカイブ」であり、貴重な出版資産となる。

冒険ダン吉特設ページ

■秘蔵原画の展示も

また eBookJapanでは『冒険ダン吉』をはじめ少年漫画の礎となった作品の秘蔵原画を2015年12月12日から、東京・青山のGoFaで開催する「少年漫画の源泉展」で一挙に展示している。オリジナルで商品化する各キャラクターグッズも多数販売している。同展では、『タンク・タンクロー』、『ドロンちび丸』、『鉄腕アトム』(複製原画)、 『鉄人28号』(複製原画)、『少年王者』、『少年ケニヤ』、『赤胴鈴之助』、『ロボット三等兵』、『天馬天平』、 『矢車剣之助』の原画を展示、作品を電子書籍で読めるよう会場内に電子端末を設置している。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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