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ウクライナ軍、深夜にイラン製軍事ドローン10機中9機を破壊:レアな夜の迎撃動画を公開

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月からロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ている。12月に入ってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンで電力施設にも攻撃を行いオデーサ近郊の150万人以上の市民生活に打撃を与えていた。クリスマスシーズンも年末も大晦日でもロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」を大量に投入して休みなしでウクライナ全土に攻撃を行っていた。

2023年2月25日には英国防省が2023年2月15日からイラン製軍事ドローンが使用されていないことから、イラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかという見解を示していた。

だが、そのような見解が英国防省から出てからもすぐにロシア軍ではイラン製軍事ドローンを使用してウクライナを攻撃し続けている。そして3月に入ってからもイラン製軍事ドローンによる奇襲は止まっていない。

2023年3月31日の深夜にもイラン製軍事ドローン「シャハド136」、「シャハド131」を使用して奇襲をしかけてきたが、10機中9機をウクライナ軍が地上から地対空ミサイルで迎撃して破壊していた。ウクライナ軍では夜にイラン製軍事ドローンを迎撃しているレアな動画を公開していた。真っ暗な上空でイラン製軍事ドローン「シャハド136」、「シャハド131」が爆発して燃えている貴重な動画である。

真っ暗なので目視や確認に時間がかかり、明るい昼間よりも迎撃されにくい。また探知して攻撃を行う人間の脳が昼間よりも夜の方が鈍い。そのため、このような攻撃ドローンやミサイルによる攻撃は深夜や早朝など暗い時間に行われる。ウクライナ軍がイラン製軍事ドローンを迎撃しているのもほとんどが深夜が早朝である。そして翌朝に破壊されたイラン製軍事ドローンの写真をSNSなどで公開している。今回のように夜の空でイラン製軍事ドローンを爆発させる迎撃シーンが公開されるのは珍しい。

▼ウクライナ軍が公開した深夜のイラン製軍事ドローン迎撃の動画

イラン製軍事ドローンはまだ在庫が豊富なのか

2023年1月31日にはアメリカ商務省はイランの軍事ドローンを開発している企業など7団体に輸出規制を課していた。これに対してニュ―ヨークのイラン国連代表部はロイターの取材で「イランの軍事ドローンは全てイラン国内で製造されているため、米国による制裁はイランでの軍事ドローンの開発に全く影響を与えない。このことはウクライナで迎撃されて破壊されているドローンで西側諸国の部品を使用しているドローンが、イラン製ではないことを強く示唆している」と語っていた。

またアメリカのメディア・ウォールストリートジャーナルはイランが設計した軍事ドローンをロシアに設置する工場で生産していくとロシア政府とイラン政府が協議を進めていると報じていた。新たにロシアに設置する予定のドローン工場ではウクライナ紛争で使用するためのドローン6000機を生産する予定で、イラン政府の高官が2023年1月上旬にロシアを訪問して建設予定地の視察も行っていた。工場はまだ建設されていない。

イランの軍事ドローンをロシアの工場で開発、製造するという報道はこれまでにも何回もあった。現在、イラン製軍事ドローンはイランで製造されてロシアに納入されているが、ロシアで製造されるようになれば輸送コストも削減されるし、製造したらすぐに戦争で使用することができるようになる。

▼イラン製軍事ドローン「シャハド136」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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