【鎌倉市】循環のその先へ。鎌倉生まれのスチールカップが海や森を再生する「鉄ブンプロジェクト」
カフェやイベントでよく使われるプラスチックの使い捨てカップ。軽くて便利な反面、テイクアウト時に発生するプラスチックの廃棄量が問題視されており、飲食店ではお店のロゴ入りのプラ容器が海に流れることに心を痛める声もあるそうです。また、自治体ではプラごみが30%増加し、コストの負担が課題となっています。
これらの問題を地域で解決するため、鉄(スチール)100%でできた「かまくらスチールカップ」を活用し、地域の海や森を元気にする「鉄ブンプロジェクト」が2024年10月~2025年3月まで実施されています。
先日、プロジェクトのメンバーとして参加している「関係案内所はつひので」さんで「かまくらスチールカップ」のお披露目会が行われました。
鉄が鉄に生まれ変わる「資源リサイクル」と、自然を浄化する「自然リサイクル」。このダブルリサイクルが実現できる鉄素材をつかった新たな取り組みが進んでいます。
鎌倉生まれの地域循環型スチールカップ
鎌倉市を中心に、2024年10月から3ヶ月間限定で、2,000個のカップが地域のイベントや飲食店で循環しています。
大手鉄鋼メーカーの高度な製造技術によって生み出され、試作の段階から市場に出し、地域の方々にテストマーケティングを行いながら改良を重ね、湘南のデザインになったそうです。
アイスコーヒーをいただきましたが、なるほど!口に運ぶたびにキンキンに冷えた感覚がダイレクトに伝わり、紙カップやプラスチックカップと違い抜群の飲み心地でした。
プラスチック容器の再資源化は、汚染(食品残留など)や素材の分別(PET、PP、PEなど)、分別の不徹底、リサイクルコストの高さから、完全に循環しているとは言えないのが現状です。
一方、スチール容器は回収率が高く、再利用しても劣化しないため、何度でもリサイクルが可能。これは他の素材にない鉄の大きな利点です。
カップを買ってプロジェクトに参加!
①お店やイベントでカップを購入して使います (475ml・500円)。※湘南エリア内の3イベント、15カフェで展開を予定
②飲んだ後は、お店に返却もしくは所定の回収場所へ。自宅に持ち帰って使用するのもOK。
③回収したカップを鉄だんごにリサイクルし、土壌の改善や藻場の再生へつなげます。
「鉄ブンプロジェクト」は、株式会社IBLCと株式会社naluによる協働事業「good sharing kamakura」によって、地域の課題は地域の力で解決するという共創のもと、地域の海や森を元気にする実験を2024年10月から開始、リサイクルした鉄で水質改善機能をもつ鉄のだんごをつくり、海洋浄化や不良土壌、藻場再生の実験に取り組んでいます。
株式会社nalu代表取締役のみなみさんは、1年間使い捨てプラスチックをやめる暮らしに挑戦したところ、安価で便利な製品があると消費がそちらに偏りがちな現実を実感し、つくる側とつかう側が協力しなければ、大量消費社会の課題は解決できないと感じたそう。
そこで、“つくる側”である大手鉄鋼メーカーと、“つかう側”である鎌倉地域の企業が協力して、今回のプロジェクトがたちあがりました。
でもなぜ、“鉄のだんご”なのでしょうか。
「人の体もですが、森も海も鉄分不足。海は森の鉄分が川から流れて海に運ばれ、それが海藻の養分になります。森の鉄分が不足して、海に流れ込む鉄分が減っているため、海藻が育ちにくくなっています」と、みなみさん。
鉄は海藻やプランクトンの成長に必要な栄養素。鉄が不足すると海藻が減少し、光合成が低下して魚介類が生息できなくなってしまうのです。
そして今、湘南で深刻な問題となっている「磯焼け」も、海の鉄分不足が理由のひとつとも言われています。
その藻場を再生するため、2024年12月までビーカー実験を行い、2025年6月まで水そう実験、今後は海洋浄化に取り組んでいる大学などと連携して実際の海洋のフィールドで実験を行う計画があるそうです。
また、森を元気にする取り組みとして、横須賀市佐島の「SAJIMA VILLAGE」でも施設内で土壌の活性化などを行っているそうです。
カップは何度か使用すると錆が発生します。今までは錆びたら資源リサイクルでしたが、このプロジェクトは錆びてからが始まり。
使用済みのカップを粉砕し、窒素とリンなどを混ぜた“鉄のだんご”をつくり、水に入れて鉄イオンを発生させます。
チーム地元のみんなで乾杯
特徴的なのは、地域の人たちがスチールカップを広めていること。
「今まで環境に良いから買う、おしゃれだから買う、という消費スタイルから、地域の信頼するAさんが勧めるから買う、地域のBさんを応援したいから買う、というような、新しい消費の兆候がみられると感じています」と、みなみさん。
飲料容器として生まれたスチールカップが鉄に戻る。地域循環の中でバトンのように繋がって、最後は自然に戻るというストーリー。
「かまくらスチールカップ」で地元の“チーム友達”と乾杯してみませんか?
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