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2022年に解散したアイドルグループのメンバーたちの今。活動休止、食堂開店、芸人との結婚も

斉藤貴志芸能ライター/編集者
活動休止する元ラストアイドル阿部菜々実(C)BIG DIPPER RECORDS

AKB48が大ブレイクした2010年ごろから、大手事務所も参入して数々のアイドルグループが世に出た。ブームがピークアウトした2010年代後半からは、逆に解散が相次いでいる。2020年からのコロナ禍での活動制限が追い打ちを掛け、今年もラストアイドル、26時のマスカレイドなど実績を残したグループが終止符を打った。元メンバーたちのその後の動きを追った。

ラストアイドルから指原莉乃プロデュースのグループへ

 テレビ朝日のオーディション番組から生まれたラストアイドル。番組内での挑戦企画と連動して、シングルを常にチャート上位に送り込んできたが、5月末で5年にわたる活動を終了した。最後に在籍していたメンバーは31人。

 その中で、いち早くアイドルとして再始動したのが小澤愛実だ。最後のシングル『Break a leg!』ではメンバー総当たりのパフォーマンスバトルで2位となり、センターの隣りに立った。ラストライブの翌月の6月、指原莉乃がプロデュースする第3のグループ、≒JOYに追加メンバーとして加入している。

 指原はラストアイドルの「プロデューサーバトル」の企画で、グループ内ユニットのプロデュースを手掛けた縁もあり、活動終了が発表されてから、小澤に声を掛けていたという。一方で、≒JOYのオーディションがいち早く進んでメンバーが決まり、一度は話が流れた形に。しかし、ラストライブを観覧した際、「歌わない世界に行ってしまうのはもったいない」と終演後に小澤を訪ね、改めて打診した。

 小澤はもともと指原の大ファンで、デビュー前の中学生時代、AKB48のコンサートの客席で指原の名を書いた応援うちわを持っている姿が、ライブDVDに映り込んでいる。取材では「アイドルを続けたかったけど、指原さんが声を掛けてくれなかったら、もうできなかったと思います」と話していた。

 メジャーデビューを目指す≒JOYでは最年長。ラストアイドルの5年間で培ったパフォーマンス力が、手本ともされる存在になっている。

抜群のアイドル性で新しいグループの顔に

 その小澤らとの3人組ユニット、シュークリームロケッツでセンターだった松本ももな、2期生センターの橋本桃呼、最年少メンバーだった籾山ひめりの3人は、新たなグループ、高嶺のなでしこに参加している。

 「TOKYO IDOL FESTIVAL」とコラボしたオーディションで選ばれた7人と合流して、8月に結成。“誇り高いアイドル”を旗印に、10月に『アンチファン』でCDデビュー。サウンドプロデュースを手掛けるHoney Worksの楽曲のカバーMVなども公開している。

 松本はラストアイドル時代から抜群のアイドル性を持ちながら、グループ全体の楽曲では意外と目立つ立ち位置ではなかった。高嶺のなでしこではグループの顔となり、歌でも要所を締めている。

 10月に行われた初のファンミーティングでは「アイドルを続けるか悩みましたけど、やることを決断しました。2年後に日本武道館でライブという夢を実現したいので、私たちについてきてください!」と力強く語っていた。

新機軸のミュージカル・プロジェクトを結成

 元ヘアメイクで最年長だった西村歩乃果は、グループ在籍中からグラビアやSNSなどでソロ活動が多い人気メンバーだったが、『モデルプレスカウントダウン』(ABEMA)のMCなどを引き続き担当。自身のYouTubeチャンネルでの配信も頻繁にしている。

 初期の暫定センターだった間島和奏は舞台2本に出演。『あざとくて何が悪いの?』の「あざと連ドラ」にも出演して話題になった。

 山本愛梨、高橋みのり、奥村優希、畑美紗起、大場結女、髙橋美海、大森莉緒の7人は「×純文学少女歌劇団」の結成に参加した。

 池袋を拠点に、ミュージカルと音楽ライブによる舞台を行うプロジェクトで、9月に初の公演『フェアリーテイルは盗まれた』を開催。タイでのライブも行っている。

絶対的センターはソロアルバム発売から活動休止へ

 そんな中、絶対的センターだった阿部菜々実は、全曲の作詞・作曲を自ら手掛けたソロアルバム『ユメノカケラ』のリリースを前に、年内での芸能活動休止を発表した。

「20歳という節目を迎えて今後の人生について考えることが増え、これからも長く歌い続けていく為に、一旦足を止めてしっかり自分と向き合う時間が欲しいと思い、このような決断をさせて頂きました」とのことだった。

 元よりボーカロイドを使って自作曲を発表していて、ソロ活動にもすぐ移行しただけに意外だった。ただ、ラストアイドルでの最後の取材でも「有名になりたいとか、売れたいという気持ちはもうなくなったので、自分のペースでやっていきたい」と話していた。

 活動休止の発表では、「いつか必ず皆さんの前に戻って来たいと思っています」とも述べている。

母親と2人で和食屋を切り盛り

 ユニークなのは、初期の暫定メンバーから最後までまっとうした安田愛里。11月に麻布十番に和食屋「安田食堂」をオープンした。

 地元・小田原の干物と和豚もちぶたをメインに、母親と2人で料理作りから接客まで切り盛りしているという。ファンやメンバーも足を運んで盛況のようだ。

 「どんなに沢山食べても胃もたれしないし、むしろ痩せてるって言われることが多くて、素材にこだわっているのに気づいて貰えるのも嬉しい」とツイートしていた。

26時のマスカレイドからヨガ事業の社長に

 メジャーデビューミニアルバムがチャート1位になった“ニジマス”こと26時のマスカレイドは、10月30日にラストライブを行って解散。9月には最初で最後の日本武道館公演も開催していた。

 5人のうち、センターで2018年の週刊ヤングジャンプ「制コレ」グランプリの来栖りんは、解散と同時に事務所も退社。ツイッターに上げた手書きメッセージでは「個人としての声優という夢を叶えるために新しい場所で、1から頑張りたい」と綴られていた。

 端正なルックスで来栖と2トップだった吉井美優、リーダーの江嶋綾恵梨も同じく退社。そして、江嶋は自ら会社を設立して代表取締役に就き、ヨガインストラクターとして活動していくと発表した。現在、「“心をハグする”癒えるヨガスペースを提供したい」とクラウドファンディングを行っている。

 来年3月にオープン予定のヨガスタジオの製作費、運営費用などのため、目標金額は300万円に。アイドル時代、耳の不調から休養していた際にヨガと出会って、少しずつ回復。自らインストラクターの資格を取得したという。

 自身のスタジオについて、「身体や心がちょっぴり楽になった、自分自身も相手のことも大切にできるようになった……。そんな細やかな日常の喜びをシェアできる空間にしたい」としている。

元prediaが空気階段の水川かたまりと

 セクシーな大人アイドルとして独自のポジションを築いていたprediaも今年6月にファイナルライブを行い、11年にわたる活動に幕を下ろした。

 そのステージで「何の悔いもありません」と語っていた桜子は事務所を退所し、11月に空気階段の水川かたまりとの結婚を発表した。5月に『FRIDAY』が熱愛をスクープ。交際を認めて、6月に空気階段の配信番組に桜子がゲスト出演。水川について「奇妙なところが好き」と話していた。

大阪☆春夏秋冬からクラファンに350万円

 大阪を拠点にしながら、アイドル界屈指のパワフルなボーカル力を持つMAINAを中心にしたパフォーマンスがフェスで注目を浴び、メジャーデビューも果たした大阪☆春夏秋冬。メンバーを一新して新体制になるということで、4月末で事実上の解散を迎えた。

 MAINAは昨年10月からMAINAMIND名義でソロ活動を展開。グループ解散後も、自作曲による3ヵ月連続リリースやライブなど、活発な活動を見せている。

 加えて、来年リリースする初のソロアルバムの表題曲のMV制作のため、クラウドファンディングを実施。

「ぶっ飛んだMVを制作したい! カルト映画のような後世に残る作品に仕上げたいです。馬が出るかもしれない、バンジージャンプするかもしれない、大量のバイクで暴走するかもしれない」と100万円を募ったところ、初日で達成した。

 さらに「250%達成でもう1曲」と続けたところ、最終的には350万円が集まった。大きな期待を受けて、どんなMV、アルバムが仕上がるのか注目される。

 アイドルのセカンドキャリアへの試みは様々だ。今やバラエティ女王と呼ばれる朝日奈央も、アイドリング!!!の全員卒業からブレイクまでに4年ほどを要した。芸能界に残った元アイドルには長いレンジでの戦いが待っている。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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