故障者続出の方がチームは強い?! 地区独走のヤンキースがシーズン故障者数でMLB記録を更新
【ヤンキースがジオ・ウルシェラのIL入りを発表】
ヤンキースが30日のアスレチックス戦前に、左股関節負傷のためジオ・ウルシェラ選手が故障者リスト(IL)入りしたことを発表した。
ア・リーグ東地区を独走し、アストロズ、ドジャースと最多勝争いを演じているヤンキースだが、今シーズンはシーズンを通して故障者が続出。ウルシェラ選手は今シーズン29人目のIL入りとなった。
米メディアが報じたところでは、1シーズンで29人のIL入りは、MLB最多記録を更新することになった。
【のべ49選手をフル動員!】
負傷者続出の大抵の場合、チームは満足な戦力が揃わず、苦しい戦いを強いられるものだ。ところが今シーズンのヤンキースは、開幕直後に地区4位になっただけでシーズン序盤は2位につけ、5月17日に首位に躍り出ると、その後5月19日以降は首位の座を明け渡していない。
しかも開幕直前にエース格のルイス・セベリノ投手の長期離脱が決まり、開幕後もジャンカルロ・スタントン選手、アーロン・ジャッジ選手など主力選手が次々に戦線離脱していった。にもかかわらず、ここまでの安定した戦いを続けているのだ。
もちろん戦線離脱した選手の代わりを補充しなければならない。今シーズンのヤンキースは公式戦に野手24人、投手25人(うち野手2人)を起用しており、マイナー選手を含めのべ49人を総動員してきた。
【キャッシュマンGMが築き上げた真の選手層の厚さ】
MLB随一の資金力を誇るヤンキースは、今シーズンも年俸総額でMLB2位にランクするなど、実績ある高額年俸選手がズラリと揃っている。他チームから比べれば、選手層の厚さは図抜けていた。
それでも今シーズンのように故障者が続出すると、25人枠から外れたマイナーリーグ選手も起用していかねばならない。つまり公式戦出場可能な40人枠に、メジャーとマイナーをいつでも行き来でき(MLB在籍4年目以上の選手は一度25人枠に入るとマイナーに降格できない)、25人枠の主力選手たちに引けを取らないレベルの若手選手を揃えなければならないわけだ。
さらに長期離脱選手に備えいつでも40人枠を補充できるように(長期離脱選手を60日間のILに入れると、新たに40人枠に選手を加えることができる)、マイナー組織にも一定数の有望選手を揃えておく必要がある。そうした面でも今シーズンのヤンキースは特筆すべき選手層の厚さを誇っていたといえるのだ。
これは一重にブライアン・キャッシュマンGMの功績に他ならない。実績ある主力選手を獲得するにはある程度資金力が必要になってくるが、ドラフトやトレードによってマイナー組織に有望選手を集めるのはGMの手腕に委ねられている。
【2016年ドジャースも地区優勝】
ちなみにヤンキースがMLB最多記録を更新する前は、2016年のドジャースが計28人のIL入り選手を記録していた。この年のドジャースも、しっかり地区優勝を果たし、リーグ優勝決定シリーズまでコマを進めている。
こちらもヤンキース同様、フロントにアンドリュー・フリードマン編成担当社長が存在していたからだ。2014年に同職に就任して以来、組織再編に着手。今シーズンも地区7連覇を目前にしており、ドジャースに黄金期をもたらしている。彼はマイナー組織を充実させただけでなく、40人枠選手の年俸総額も大幅に削減しており、その評価は抜群に高い。
このように故障者選手が増えれば増えるほど、フロントの力量が浮き彫りになってしまうものだ。