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「『韓国嫌い』30%台に低下」をなぜYahooコメントの人々は納得できないのか

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ:キムチだって好きな人もいれば嫌いな人もいますね)(写真:アフロ)

■日本人の韓国嫌いが低下

「嫌いな国」(複数回答)に韓国を選んだ人は前月調査から5.1ポイント減の38.6%だった。

2013年8月から40~50%台が続いており、30%台に下がったのは2年7カ月ぶり。

出典:「韓国嫌い」30%台に低下=2年7カ月ぶり―時事世論調査 時事通信 2月19日(金)

韓国を嫌う日本人の割合が低下しているというニュースです。この記事に対して、Yahooコメントには、次々と疑問の声が上がっています。

■Yahooコメント:調査結果に納得できない

まず、調査結果はどうであれ私は嫌いだというコメントがあります。これは、個人の意見ですから、当然好きな人も嫌いな人もいるでしょう。

次に、調査結果への疑問の声があります。たとえば、韓国を嫌う人が減ったのではなく、無関心な人が増えたのでないかという意見です(どこまでまじめにそう思われたのかは人によるでしょうが)。

統計結果が出ると、どうしても数字が一人歩きしますので、疑問や多様な面からの考察は大切です。ただ仮に「無関心な人が増えた」にしても、それでもやはり、韓国を嫌う人が減ったことは事実でしょう。

そして、韓国嫌いが減ったこと自体が納得できないという意見があります。

  • 私の周りでは韓国嫌いが100パーセントだ
  • おかしい、どこで調査したのだ
  • メディアや調査自体信用できない
  • 調査に信憑性がない、絶対にそんなことはない
  • 嫌いのパーセンテージは減っても嫌いな人の度合いは深まっている

などなどです(これもまじめに語っている人もいれば、ジョークで言っている人もいるでしょうが)。

調査の中には、たしかに信用できないものもあります。しかし今回の調査は時事通信の調査ですから、いい加減なものではないでしょう。それに、以前から同様の手法で繰り返されてきた調査であり、韓国嫌いの数字が変化したことは事実でしょう。

■なぜ調査結果に納得できないのか

人は様々な誤解をします。どんな人でも、歪んだものの見方、認知バイアスが入ってしまうのです。

社会心理学の研究によると、人は自分の意見と同じ意見の人が多いと感じてしまいます。自分の考えこそが、当然であり、常識であり、標準であり、多くの人もそう思っているに違いないと思います。

また人は、同じような意見態度の人同士で集まりやすくなります。「自分の周りでは100パーセント」はウソではないのでしょう。その結果、全体的にもそのような人が多いと感じてしまいます。

さらに、誰かがある意見を強く述べたとき、周囲の人はあえて反論しないことが多いでしょう。「日本人はやっぱり野球だね」と言われて、「いいえ、今はサッカーです」と反論するのは、簡単ではありません。

人はまた、自分に都合の良い情報には素早くアクセスし、迅速に情報処理し、明確に記憶に残します。その結果、さらに自分の意見は正しく、多数派なのだと感じます。

ネット上の意見も、流れがあります。そのコメント欄や掲示板での主流な意見があります。ある話題に対して、いつもある方向の意見が多数を占めるようになると、他の意見の人は発言しにくくなります。その結果、自分達の意見こそが多数派だと誤解することもあるでしょう。

しかし、ネットのコメント欄の意見は、必ずしも日本人全体の意見を代表していません。

■調査の意義

きちんと行われている社会調査は、誤差はあるものの、日本人の平均的な姿、全体像を表します。今回は、それが「『韓国嫌い』が30%台に低下」だったのでしょう。

調査結果の数字を鵜呑みにしてはいけないと思います。しかし、どんな人でも感覚は歪んでしまいますから、客観的な調査はやはり大切なことでしょう。

日本嫌いの韓国人もいれば、韓国嫌いの日本人もいます。しかし、そうでない人もいます。それらの割合は、日々変化しています。誤解が誤解を生むことがないように、調査結果を活用していきたいものです。

■補足:オーサーコメント

上記のニュースに、次のようなコメントをしました。

社会心理学の研究によれば、人は自分を好きになってくれた人を好きになります(好意の返報性)。私たちは親日国のことが好きになりますし、日本のことを嫌っている国のことは好きになれません。

韓国の対日態度が軟化していることが、韓国嫌い低下につながっているでしょう。

韓国の反日的態度には、政治的な思惑があるとも言われています。一般に国内をまとめるために(集団凝集性を高めるために)は、外に敵を作るのが効果的です。外に悪者を作ることで、政府への不満を抑えて国内をまとめる方法は、為政者達が繰り返し行ってきました。

集団凝集性が高まると、やる気が出てパフォーマンスが高まります。ところが、反作用として集団外の人々への敵対心がさらに強まることがあります。時に為政者の思惑を超えて強まってしまうこともあります。

悪化した関係を修復するには、共通の目標、共通の敵が効果的であり、それが今は北朝鮮なのでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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