就活相談30・エントリーシートの志望動機がうまく書けない
質問 エントリーシートの志望動機、うまく書けないけどどうすればいいでしょうか?なんか「御社の社風にひかれて」とかありきたりの話になりそうです。
自分の話を書けばいい自己PRと異なり、志望動機はその企業の話が中心となります。
志望動機でひっかかる学生の心境としては、
「いや、この企業のこと、知らないし」
でしょ?
企業側も、そんなことは百も承知です。そこで、どうせ何を書かせても他と差別化できないから、という理由から設問から外す、あるいは、設問には残すが実は読んでいない(もしくは重視しない)、という企業が増えています。
もちろん、設問として残す企業、志望動機を重視する企業もあります。
両方の企業に共通しているのは、
「どの学生もある程度似たような志望動機になるのは仕方ない」
「受け狙いで書いた志望動機は大体が自滅」
という思いです。
エントリーシートを提出する学生は、これを踏まえて、変に力まずに書くことが大事です。
志望動機のNG事項は「悪口」「CSR」「ニッチ部門」の3点あります。
社風など抽象表現は中立、通過率が高くなるポイントは「有価証券報告書」「OB訪問・会社説明会・中立の本などから得た情報」、それから「志望動機以外」の3点。
それぞれ解説していきます。
まず、NG事項から。
1点目の「悪口」、志望動機はその企業に入りたい理由を聞いているわけです。
それをわざわざ、悪く書くことはないでしょう。
受け狙いなのかどうかは知りませんが、たまにいます。
企業からすれば、
「うちに入社しても実際には何もしない『評論家』になりそう」
で終わり。
2点目の「CSR」、これは多いけど、落ちる典型パターン。
CSR活動、まあ、よくあるのは、山間部に「××の森」を設定して植林活動などをするとか、小中学生のキャリア教育に協力するとか、発展途上国への寄付活動とか、そのあたり、ですよね?
こういうの、悪く言えば、企業のイメージアップ作戦にすぎません。
たとえば、植林活動なら、社員が関わる日数はどれくらいでしょう?
新入社員が3日間行くとか、その程度でしょ?
仮に、全社員が毎年1週間必ず行くとしても、残りの期間は本業の仕事をするはずです。
CSR活動を志望動機に使う、ということは
「CSR活動はできます、それ以外は仕事をしません」
とアピールしているも同然なのです。
そんな社員はいらないわけで。
仮に(数はごく少数でしょうけど)、CSR活動の部署で働けるほど専門性の高い経験をもった学生がいたとしましょう。
植林活動なら、農学部の林業専攻とか、環境系学部、キャリア教育なら教育学部、海外支援活動なら国際系学部あたりにいそうです。
この場合でも、CSR活動を志望動機にするのは危険です。
企業からすればCSR活動のための部署があるにしても、大卒総合職で欲しいのは、営業とか管理部門(人事・総務・経理・広報など)とか営業などで働ける、まあCSRの部署に行っても仕事ができそう、という学生です。
営業が大事だから二度も出してしまいました。
で、CSRの部署というのは相当あとにしか出てきません。
しかも、他の部署でも働けることが前提。
どうしても、CSR活動の部署で働きたいなら、専門の社員として応募するべきです。
そんな募集をする企業、新卒採用ではまずありませんが。
繰り返しますが、CSR活動を志望動機に持ってくるのは、かなり危険であり、落ちる要因となる可能性が高いです。
3点目の「ニッチ部門」。
これもCSR活動と同じ。
日本経済新聞2012年1月25日朝刊にはまさにこの話が出ています。
記事によると、婦人下着大手のトリンプ・インターナショナル・ジャパンだと紳士向けブランドの営業志望が男子学生に多いとのこと。
主力事業でないため、人事担当者の弁は「かわいそうな気はします」。
いや、気づかずに自信満々で書いた学生はかわいそうどころではありません。
ただ、ニッチ部門ではあっても、これから伸びそうと判断したなど、書き方によっては、悪口・CSR活動ほど落とす決定打にはならないでしょう。
では、次に通過しやすくなるポイントについて。
1点目の「有価証券報告書」。
株式を上場している企業なら、有価証券報告書を公開しています。
有価証券報告書は、企業サイトから見るか、EDINETという有価証券報告書をまとめて検索できるサイトのどちらかで確認できます。
この有価証券報告書、全部読んだらキリがないので、読むべき点は「業績等の概要」「対処すべき課題」「事業等のリスク」の3点。
特に後者2点は、その企業のネガティブな部分を企業側が分析したうえで明らかにしています。
ここに書いている内容を絡めるなら「悪口」になりません。
たとえば、JR東日本だと、「事業等のリスク」で鉄道事業法、運賃改定、生活サービス事業など9点、挙げています。
これを読んで、次のような志望動機はどうでしょうか。
「貴社の有価証券報告書にある『生活サービス事業等の展開』ではその中で様々なリスクを挙げています。私はそうしたリスクに配慮しつつ利益を伸ばす営業を志望します」
わざわざ、有価証券報告書を読んだ、という行動力・読解量に触れつつ、どんな仕事をしたいのか、具体的でしょ?
もちろん、この志望動機が万全というわけではありません。選考を通過したら、生活サービス事業の話、かなりツッコまれるでしょうし。
2点目の「OB訪問・会社説明会・中立の本などから得た情報」、これも実は1点目の「有価証券報告書」と同じ。わざわざ読んだ、わざわざ説明会に参加した、OB訪問をした、関連の本やビジネス情報誌記事を読んだ、など、行動力・読解量に触れつつ志望理由をまとめる手法です。
「私って行動力があるんですよ」と書けば、自己PRを飛び越して、単なる自慢ですが、これなら問題なし。
最後、3点目の「志望動機以外」と中立評価の「抽象表現」、これはまとめて。
志望動機って、結局のところ、飛び抜けた学生以外は、ありきたりなことになって当然なんです。
企業からすれば、平凡な学生であっても欲しいわけで、抽象的になりやすい志望動機については、それほど重視しません。
極端な抽象表現、たとえば「お客様を笑顔にしたい」とかね、そういうのはアウト。
流通・小売りとか航空などに多そうですが、他の業界・企業でも言えてしまうし。
しかし、他の抽象表現、たとえば、先ほどご紹介した日経記事だと、ワコールの「女性の美しさを手助けしたい」、鹿島建設の「建設を通して社会貢献したい」などを紹介しています。
記事は2012年ですが、これ、その後もエントリーシートで書いている学生、絶対にいますし、そのうちの何割かは書類選考は通過しています。だって、他に書くことそんなにないし。
で、この場合、志望動機はそれほど重視せず、他の設問の内容などと合わせての総合評価で判断します。
志望動機については、自分なりに色々と調べる、説明会などに参加したうえで書いていく、もし書けないならあえて抽象表現に出て、他の設問に賭ける、という方法で行くしかないでしょう。
※『300円就活 面接編』(角川書店・オリジナル電子書籍)より引用