雑居ビル火災「逃げ遅れ」の災害心理学:広島雑居ビルネットカフェ火災から
■広島雑居ビル火災
広島市で居ビルが全焼し3人が死亡した火災が発生しました。今回の火災では、このビルにあったネットカフェの従業員や客が被害にあったと見られています。
国は、平成13年の歌舞伎町雑居ビル火災(死者44名)のあと、消防法を一部改正し、雑居ビルの防火安全対策を進めていましたが、またも悲劇は起きてしまいました。
■雑居ビルの危険性
雑居ビルの中には、管理者や防災責任者があいまいなまま、狭く複雑な作りになってしまうことがあります。廊下や階段など、本来は避難に使うべきところに、物が置かれたままの場合もあります。
そこに複数の店舗が入り、様々な客が出入りします。ビルとしての避難訓練もなかなか行われず、火災発生時に適切な雛入道が行われないケースもあります。建物自体がかなり老朽化している場合も多々あります。
■火災が発生した広島雑居ビル
今回の広島雑居ビル火災でも、法律で定められた避難訓練などが行われていなかったと報道されています。メイドカフェには7つの個室があり、構造は複雑だったとも報道されています。
この雑居ビルは、元々は1948年(昭和23年)建築のかなり古い木造の建物で、現在は木造一部鉄骨造と伝えらています。
また、自動火災報知機がすぐには鳴らず、従業員が手動でボタンを押していたとも報道されています。なぜ自動的に鳴らなかったのかは、まだ報道がありません。
■逃げ遅れ
人は様々な理由で逃げ遅れます。逃げる必要があると思わなかった場合もあります。通路が狭く、同時に多数の人が逃げられなかったケースもあります。落ち着いて逃げれば、狭いドアや通路でも逃げられたはずなのに、パニックになった人々が押し寄せて、結果的に逃げられないこともあります。
逃げ方がわからななかった場合もあります。たとえば、方法さえわかれば簡単に開くはずの非常ドアが開けられなかったり、使えたはずの避難道具が使えない場合もあります。
本当は、別の避難経路があったのに、みんなが知らなかった場合もあります。あるいは、知ってはいても、普段使わないために、緊急時に思い出せなかったケースもあります。
適切な避難行動をとったのに、火や煙の回りが速すぎて、結果的に逃げ送れる場合もあるでしょう。建物の構造に問題がありすぎる場合や、油をまかれての放火などに見られるケースです。
会社や学校など、いつも同じ人がいて、避難リーダーも動きやすいし、建物にも問題がなく、みんなも建物の構造をよくわかっている場合には、避難は比較的スムーズです。しかし、雑多な人が一時的に狭い場所に集まるような場所では、被害が出やすくなります。
災害心理学の研究によると、人は緊急時には「愚か」になります。複雑なことはできなくなるのです。できるだけシンプルでわかりやすい避難行動を導かなくてはなりません。
飛行機の場合などは、通路が避難方向に向かって光ったり、キャビンアテンダントがわかりやすく誘導するなど、工夫が続けられています。学校では、繰り返し避難訓練が行われます。こんな避難訓練何になるなどと思う人もいるかもしれません。しかし、単純な避難訓練の繰り返しが、緊急時には活かされるのです。