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「タカマツ」の松友が日本A代表入りに前進、東京で世界一の目標を混合複で

平野貴也スポーツライター
リオ五輪金メダルの松友(手前)が、金子との混合複で日本代表に復帰【著者撮影】

 2020年の五輪から22年世界選手権へ、東京で世界の頂点に立つという目標は、形を変えて生き続ける。バドミントン女子ダブルスで2016年リオデジャネイロ五輪の金メダルを獲得した「タカマツ」ペアの前衛、松友美佐紀(日本ユニシス)が新たなスタートを切った。

 松友は、高橋礼華とのペアで20年東京五輪の連続出場、五輪連覇という大きな目標に向かっていたが、五輪の1年延期が発表された後の8月に高橋が現役引退を表明。松友は、混合ダブルスへの転向を明らかにした。

 高橋の引退に伴うペアの解消後、初めての公式戦となった第74回全日本総合バドミントン選手権大会(12月22~27日、町田市立総合体育館)は、金子祐樹と組んで混合ダブルスに出場。決勝戦で世界ランク5位の渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス)に敗れたが、準優勝をしたことで来季の日本A代表入りが見えてきた。

「(混合複でも)世界で戦えるペアになっていきたい」と話した松友に、2022年に東京で開催予定の世界選手権への意識を問うと「個人としては、世界選手権で今まであまり良い成績を残せていないというのもありますし(※2017年に銅メダルを獲得しているが、金メダル候補として臨んだが頂点には立てなかった)、やっぱり世界選手権で一度、良いプレーをしたいなというのがあるので、世界選手権は一つの目標」と答えた。まだ再出発したばかりで表現を抑えていたが、視野に捉えているのは、やはり世界の頂点だ。

21年度の日本代表入りが確定、A代表の可能性

 松友は、以前から国際大会の混合ダブルスにも金子とのペアで出場しており、世界ランクで19位につけているが、ともに男女のダブルスがメインで日本A代表に入り、混合ダブルスにも出場するという形で、ペアとしての強化に注力していたわけではなかった。しかし、今夏から松友は混合に専念。男子ダブルスのペアを組み替えた金子も混合ダブルスに比重を置いている。

 再出発の場となった全日本総合選手権は、2021年シーズンの日本代表の選考対象。大会後に発表された代表内定選手の一覧には、混合ダブルスで6組が入っており、金子/松友の名前も含まれていた。この中から、世界トップレベルの選手が集うBWFワールドツアーを主戦場とするA代表と、少しランクの低い国際大会を主戦場とするB代表に分かれる(後日発表)。

 A代表は、近年の国際大会で目覚ましい活躍を果たしている渡辺/東野が全日本を4連覇しており「当選確実」だが、大会中に取材に応じた日本代表の朴柱奉ヘッドコーチは「今、混合ダブルスのメインペアは、渡辺/東野だけ。A代表にもう1組いてもいい。良いトレーニングができるようになる。渡辺選手が男子ダブルスの練習もするため、東野選手の練習をどうするかという問題もある。A代表に混合ダブルスを2組にするという可能性はある」と、混合ダブルスを日本A代表に1組増やす可能性があることを示唆。金子/松友は、この時点ではベスト4だったが、準決勝を勝って決勝に進出し、2番手となり、A代表選出の可能性が高まった。

2組の切磋琢磨で強力なメダル候補種目へ

金子/松友(左)が台頭すれば、世界のトップで戦っている渡辺/東野(右)にとっても、良い刺激となる【著者撮影】
金子/松友(左)が台頭すれば、世界のトップで戦っている渡辺/東野(右)にとっても、良い刺激となる【著者撮影】

 金子/松友が日本A代表に入れば、朴ヘッドコーチが話したように、渡辺/東野にとってもプラスとなる。2組の選手全員が、日本ユニシスに所属しているため、すでに所属チームでは一緒に練習を行っている。渡辺は「まず、ミックスダブルスの練習を2対2で積めているのは、互いにとってプラス。高いレベルで、すでに世界のトップクラスと渡り合って、たくさん勝っている選手。学ぶことが多い。練習の中で良い所を盗んで、自分の成長につなげられていて、僕にとってはありがたい存在。これから一緒に成長していけたらいい」と先輩ペアの混合ダブルス強化を歓迎。

 東野も「高いクオリティーで練習できる。松友さんは、私より前衛が上手。まだまだ勉強していかなければいけない部分が多いので、もっと松友さんの動きを盗んで自分の物に出来るように頑張りたい」と話した。日本代表は、東京五輪に向けて18年から混合ダブルスにも専任コーチを招へいし、強化に務めている。かつては課題種目だったが、金子/松友が渡辺/東野に続く世界レベルのペアとなれば、この種目の選手層は格段に厚くなる。

現状では連係不足、松友「まだまだ過ぎる」

相手の返球に2人が同時に反応してしまうなど、連係面はまだ改善が必要【著者撮影】
相手の返球に2人が同時に反応してしまうなど、連係面はまだ改善が必要【著者撮影】

 もちろん、ダブルスという連係が重要な種目では、すぐに世界で成績を出すのは難しい。全日本総合選手権でも、前後の動きが重なって失点する場面が何度か見受けられるなど、連係面はまだ不十分だ。互いの長所を引き出しあわなければならないが、長身のサウスポーで攻撃力が武器の金子は「(決勝戦では)一球一球の質の大事さを痛感しました。ラリーにはなっても、僕の球出しが一球甘くなったのを確実に決められた」と19年世界選手権の銅メダリストである渡辺/東野との差を自ら指摘。

 松友は、強化すべき点を聞かれると「全部ですね」と苦笑いを浮かべ、今後に向けては「今は、毎日毎日をどれだけ積み重ねていけるかだと思っているので、その先に国際大会に出られるようになったり、世界の選手と試合をして、戦えるような選手になれればいい。今は、まだまだ過ぎるので、2人で毎日、積み上げていけたらいいと思います」と謙虚に語った。

松友と組む金子は、男子複で世界8強経験

 まだ2人はリスタートを切ったばかりだが、混合ダブルスでの本格強化は楽しみだ。リオ五輪で金メダルを獲得している松友の実力は言うまでもないが、金子も井上拓斗(日本ユニシス)との男子ダブルスで2018年世界選手権ベスト8などの実績を挙げている。2人が男子ダブルス、女子ダブルスに主軸を置いていた時期でも、混合ダブルスで2019年にアジア選手権や中国オープン(BWFワールドツアーで最上級格のスーパー1000)でベスト8入りを果たしている。

 本格強化に取り組み、渡辺/東野との切磋琢磨でもう一つ上のランクに食い込めば、世界のメダルが見えてくる。短期間で実力を大きく上げるのは、もちろん難しいことではあるが、ポテンシャルを秘める2人の新たな挑戦だ。21年に延期された東京五輪には間に合わないが、同年冬にスペインで、そして22年に東京で開催予定の世界選手権といった舞台が大きな目標となる。ともに五輪ではかなわなかった「東京で世界一」の目標を、形を変えて目指していく。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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