金正恩を激怒させた警官5人「陸の孤島」で見せしめの刑
北朝鮮を訪れたことのある人なら、町中の交差点で白い制服姿で交通整理をする人を見かけたことがあるだろう。交通安全員(交通警察)だ。北朝鮮の子どもたちの憧れの職業とも言われるが、その内部は結構ドロドロしたもののようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の情報筋は、最近市民の間で持ちきりの話題を伝えた。恵山市安全部(警察署)所属の5人の交通安全員が、上官に集団暴行を振るったというものだ。
事件が起きたのは昨年10月のこと。総和(総括)の集まりで、交通指揮隊の隊長が酒に酔って部下を次々に呼びつけ、業務について事細かく指摘をし始めたのだ。すると部下たちは、大したことでもないのになぜガタガタ言うのかと歯向かい、口論となった。激昂した部下たちは、隊長をボコボコに殴りつけてしまった。
事件を起こしてしまった5人は、翌日から職務停止となり、政治部に呼び出されて厳しい取り調べと思想検討を受けた。これだけでも重い処分は避けられない状況だったが、事件の内容が平壌の社会安全省(警察庁)を通じて、金正恩総書記にまで報告されてしまったのだ。
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金正恩氏からは、事件に関連した者全員を厳しく罰せよとの特別指示がくだされた。5人は朝鮮労働党から出党(除名)され、炭鉱送りの処分を受けた。
別の住民によると、特別検閲(監査)の結果、交通課では酒を飲みながらの総和が常態化していたことが判明し、報告を受けた金正恩氏は、見せしめのために「事件に加担した全員を最も苦しい炭鉱の地下坑道に送り込め」と指示。さらに交通課長と被害者である交通指揮隊長を解任するよう命じた。また、交通安全員全員が配置換えとなった。
5人の処分は有期か無期かはわかっていないが、「陸の孤島」への流刑にも等しいだけあって、労働環境が劣悪なことは想像に難くない。生きて帰って来られるかは誰にもわからない。
安全部は、事件のことが市民に知れ渡るのを防ぐためにかん口令を敷いたが、しばらく経ってから市民の間で噂が広まった。
話を聞いた市民は、同情するよりも「いい気味だ」とのリアクションを示している。というのも、安全員は市民の生命や財産を守ることより、市民から金品をせびり取ることに熱心で、かなりの恨みを買っているからだ。
「全国的に交通安全員は、様々な規定を振りかざして車やオートバイを取り締まり、免許証を取り上げてカネやガソリンを要求することで悪名高い。奪ったカネで、行きつけの食堂で一杯やるのが彼らの習慣なのだ」と、情報筋は語っている。