「最前線」に潜り込んだ北朝鮮少年6人の災難
南北共同連絡事務所は、韓国企業が多数進出していた北朝鮮の開城(ケソン)工業団地内に2018年9月に設置された。同年4月に行われた南北首脳会談後の板門店宣言に基づいたもので、南北融和ムードの象徴だった。
ところがその後、現地は南北関係緊張の「最前線」と化す。
設置からわずか2年足らずで建物は派手に爆破され、その様子はメディアを通じて公開された。しかし崩壊には至らず、廃墟となった建物はそのまま放置されていた。そこに北朝鮮の6人の少年が忍び込み、大問題となった。開城のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
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年齢など詳細な情報は明らかになっていないが、6人の少年は、廃墟となった南北共同連絡事務所に、警備をしている保衛員(秘密警察)の目を盗み、侵入した。その理由は、くず鉄集めだ。
北朝鮮の学校では現在、かなりの量のくず鉄を集めて学校に提出するというリサイクルキャンペーンが行われている。ある程度余裕のある家の子なら、市場でくず鉄を買って供出できるのだが、6人はいずれも貧しい家の出。そこで目をつけたのが、南北共同連絡事務所の廃墟だったというわけだ。
6人は「まるでパルチザンのように」(情報筋)廃墟に忍び込み、リュックいっぱいにくず鉄を詰めて出ようとしたところ、保衛員に出くわし、ひどく殴られた上で、開城市保衛部に連行された。
事件には検察まで介入し、両親と学校の担任教師、校長まで呼び出され厳重注意を受けた。また、朝鮮労働党開城市委員会は、一連のキャンペーンは、国の財産を盗んで供出せよというものではないとして、学校に対して児童、生徒の管理を徹底するよう強調した。
だが元はと言えば、これは全く無意味なリサイクルキャンペーンが原因だ。
市民の間からは「もはや存在しないくず鉄を供出せよと言い続けるから子どもたちが泥棒をするのだ」「くず鉄ごときで6人の少年が保衛員に殴られて逮捕されて、親と教師が呼び出しを食らうなんてスパイでも捕まえたというのか」などと、非難の声が上がっている。
この手の供出は市民に無駄な負担を強い、結局は現金を集めるための手段をして使われている。