福島第一で多数の傷病者が発生するも、東電は独自基準でほとんど公表せず
事故の収束に向けた作業が続く東電福島第一原発で、多数の傷病者が発生している。資源エネルギー庁への情報開示請求で開示された資料からわかった。そのほとんどが、未公表だった。
開示されたのは、東電から資源エネ庁に送られた事故発生時の連絡メール。事故の大小にかかわらず、また労災の適用かどうかにも関係なく、発生と同時に発生場所や状況、ケガの程度、治療内容などが連絡されている。
メールによれば、今年4月から9月23日までの間に、骨折を伴う事故が9件、傷口を縫合する必要があったケガが9件などを含む43件の事故と、18件の体調不良が発生していた。
傷病発生の状況は、おおむね次の通りだ(期間は2014年4月1日〜9月23日)。
- 熱中症 32件
- 脱水症 5件
- 体調不良 18件
- ケガ 43件(骨折9件、縫合処置9件)
- 病院への搬送 22回(救急搬送13回、業務車による搬送4回、ドクターヘリ3回、搬送方法不明2回)
東電は2013年9月以降、自社で決めた「通報基準・公表方法」という公表基準に沿って傷病者の発生を広報している。基準は14年2月19日に改訂され、現在に至っている。
「通報基準・公表方法」によれば、現場での傷病発生については、救急車やドクターヘリによる搬送があった場合のみ、日報に記載したり記者会見で説明することになっている。ところが傷病の多くは救急搬送していないため、東電基準では発表しないものになる。
加えて東電は、福島第一原発構内で発生した傷病のみを公表の対象にしている。だから小名浜など原発構外での作業や、Jヴィレッジで発生した傷病は、福島第一原発に関する作業だったり、救急搬送があっても公表されない。
日々の事故を公表しない東電の姿勢には、記者会見でもたびたび批判の声が上がっているが、東電は、「ご意見として承る」という言葉を繰り返している。
11月17日に東京新聞は、「安全二の次 事故頻発」という見出しで、スケジュールありきで作業が進む東電福島第一原発で、未公表の事故が多いことを報じた。同じような事故が続いたことから、記事は、東電が作業を改善する保証はないと厳しく指摘していた。
世界史に残る原発事故の現場は、東電の独善的な情報非公開の方針によって、霧の向こうの閉ざされた世界になっている。このような状態で、事故収束作業がスムーズに進むものなのか、疑問を拭いきれない。
※この内容はブロマガ「木野龍逸の「ニッポン・リークス」」からの引用です。