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渡米したピース・綾部祐二をイジり続けた千鳥・ノブのツッコミ芸が面白すぎる理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

ピースの綾部祐二が日本での芸能活動を休止して単身アメリカに旅立ってから約5年が過ぎた。その間の活動は謎に包まれていたが、最近になってエッセイ集『HI, HOW ARE YOU?』(KADOKAWA)を出版して、いくつかのメディアからの取材も受けており、再び脚光を浴びている。

渡米した当初、千鳥のノブが綾部のインスタグラムに毎回鋭いツッコミのコメントを寄せていることが話題になっていた。当時の綾部はアメリカでモデル気取りの格好つけた写真をアップし続けていた。そこに芸人として笑いを取ろうとする意志は全く読み取ることができなかった。

「ノブ待ち」も続出するほどの人気に

そのスキだらけの綾部のインスタ写真に対して、ノブは的確なツッコミを繰り出していた。ファッションショーに行った綾部が女優の水原希子と並んでピースサインをしている写真に対しては「全て手掛けたデザイナーみたいな顔すな!!一般観覧やろ!!」というコメントを寄せた。

また、建物の中で綾部がノートPCを片手に後ろ姿で写っている写真に対しては「パソコン小脇に抱えるな!バックに入れえ!」「ほんで服、黒しか無いけどもう色捨てたんか?」とコメントした。

ノブのツッコミはインスタ上でも話題になっていて、綾部のアップする画像に対してノブのツッコミを期待する「ノブ待ち」という言葉まで作られるほどだった。

岡山弁のツッコミが耳に残る

千鳥はその時期にみるみるうちに人気を伸ばしていった。その要因の1つとしてノブのツッコミ能力の高さが挙げられる。ノブは岡山弁を取り入れた独特のイントネーションでツッコミを繰り出す。その視点やフレーズには圧倒的なオリジナリティがある。

有名なフレーズと言えば、いまや彼の代名詞にもなっている「クセがすごい」だろう。もともとは漫才の中で使われていた言葉だったが、今ではここぞというときの決めフレーズとして重宝されていて、世間にもすっかり浸透している感がある。相方の大悟が訳の分からない行動に出たときに飛び出した「どういうお笑い!?」というフレーズも有名だ。ノブはありきたりな言葉は使わず、その場でオリジナルなフレーズをひねり出して、笑いを生むことができる。

千鳥というコンビ単位で考えると、大悟がボケ担当でノブがツッコミ担当というイメージがある。しかし、実際には、この2人はそれぞれどちらも器用にこなせるオールマイティーなタイプだ。大悟がボケてノブがツッコむだけでなく、ノブがあえてボケっぽいことをして大悟にツッコまれることもあるし、大悟が共演者の誰かを鋭くツッコんでいることもある。2人で揃って波状攻撃のようにツッコミを重ねていく場面もある。

ノブのツッコミには王者の風格がある。ただならぬセンスと経験に裏打ちされたツッコミは唯一無二の芸だ。しかし、本人の見た目や岡山弁の柔らかさでギラギラした感じを出さず、マイルドな印象を与えているところが心憎いほどに完璧だ。これからのお笑い界を支えるキーパーソンの1人であることは間違いないだろう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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