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勤労感謝の日は晴れの特異日だが、日曜日の低気圧より北寄りに進む低気圧で雨の予報

饒村曜気象予報士
2022年11月の卓上カレンダー(写真:イメージマート)

低気圧が周期的に通過

 本州の南海上の前線上を低気圧が周期的に通過し、西日本から東日本の太平洋側では周期的に雨が降る天気となっています。

 11月20日の日曜日に雨をもたらした低気圧は日本の東海上に去り、週明けの21日(月)は、南西諸島と九州、中国・四国地方は晴れの予報となっています。

 近畿から北日本は雲が多く、近畿は朝まで、東日本から東北は昼過ぎまで、北海道は終日雨の降る所がありますが、大陸からの高気圧に覆われてきますので、次第に晴れの所が広がってくるでしょう

 ただ、この晴天は長続きしません。

 22日(火)には、中国大陸に前線ができ始め、この前線上に低気圧が発生し、本州の南岸を東進する見込みです(図1)。

図1 予想天気図(11月22日9時の予想)
図1 予想天気図(11月22日9時の予想)

 このため、水曜の23日(勤労感謝の日)は再び雨の予想となっています。

 しかも、この低気圧は、20日(日)の低気圧より本州に接近して進むと考えられるため、雨量は日曜より多い見込みですので、雨の降り方に注意してください。

 その後、週末にかけては晴れますが、来週前半は再び、本州南岸を低気圧が通過し雨の見込みです。

図2 雨と風の分布予報(11月23日正午の予報)
図2 雨と風の分布予報(11月23日正午の予報)

 このように、南海上に前線がある時は、北からの寒気南下が顕著ではなく、寒気は北日本どまりです。

 このため、雨が降る日は気温が上がりませんが、晴れると気温があがります。

「勤労感謝の日」と晴天

 11月23日は、勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう国民の祝日、「勤労感謝の日」です。

 昭和23年(1948年)にできたものですが、昭和22年(1947年)以前の11月23日も、新嘗祭(にいなめさい)という祭日でした。

 皇室の祭祀の中で最も重要である新嘗祭は、天皇陛下が新穀を天神地祇に勧め、また、親しくこれを食するというもので、米作に感謝することがもととなっています。

 イネ科の一年草である稲は、田植えのあと、苗が成長して枝分かれが終わるまでは高温多湿であること、花が咲いた後は日射量が多いと、デンプンの形成が活発となって粒の大きい良質の米ができます。

 これらの気象条件は、春から夏にかけては梅雨という多雨の期間があり、夏は熱帯なみの暑い晴天が続くという日本の気候にあいます。

 また、冬の寒さは、稲作にとって害となる虫や雑草が死んでくれます。春になり、害虫がでてきますが、卵からのスタートであり、大発生は起こりにくいといえます。

 つまり、日本の季節変化は、稲作に適しています。そして、古来より、日本の主な労働というと、米作りに関するものでした。

 特定の天気が、その前後の日に比べて偶然とは思われない高い確率で現れる日を特異日といいます。ただ、特定日がなぜできるのかについては分かっていません。

 11月3日の文化の日が「晴れの特異日」、11月23日の勤労感謝の日も「晴れの特異日」と言われたことがあります。

 過去の統計から特異日を決めることができますが、あくまで、過去の統計からの話です。

 将来も過去と全く同じ天気になるとは限りません。

 特異日は、時代とともに変わってきます。

 例えば、東京の文化の日と勤労感謝の日がともに、晴れの出現率が80パーセント近くなり、前後の日に比べて、10%以上高くなっていた時がありました。

 しかし、最新の平年値である平成3年(1991年)から令和2年(2020年)の平均では、文化の日は晴れの特異日とはいえないようです。

 ただ、勤労感謝の日は、晴れの出現率が前後の日に比べて10パーセント以上高くなっており、「晴れの特異日」といえそうです(図3)。

図3 東京の天気出現率グラフ
図3 東京の天気出現率グラフ

 といっても、今年は、雨の勤労感謝の日になりそうです。

夏日と冬日

 令和4年(2022年)は、残暑が厳しく、10月に入っても、1日には夏日(最高気温が2度以上の日)が気温を観測するアメダス914地点のうち396地点(約43パーセント)も観測し、22日にも242地点(約26パーセント)で観測しています(図4)。

図4 夏日と冬日の観測地点数の推移(10月16日~11月20日)
図4 夏日と冬日の観測地点数の推移(10月16日~11月20日)

 10月25日以降、ときおり、最低気温が氷点下という冬日が全国の約180地点(20パーセント前後)の日が出現していますが、11月18日の290地点(約32パーセント)を除くと、20パーセント前後の日が多く、寒気の南下が北日本までであることの反映と思われます。

 来週後半は12月になりますが、南海上に前線が停滞しなくなり、寒気が南下して晴れても寒くなる見込みです。

 冬日も増えてくると思われます。

 東京の最高気温の推移をみると、日々の変動はありますが、階段状に下がっています(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(11月21~27日は気象庁、11月28日~12月6日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(11月21~27日は気象庁、11月28日~12月6日はウェザーマップの予報)

 9月は最高気温が30度前後の日が多く、厳しい残暑が続いていましたが、10月に入ると最高気温が25度に届かなくなり、現在は、20度位で推移しています。

 そして、来週後半の12月になると、最高気温が15度に届かないという予報です。

季節は平年より遅れ気味ですが、着実に冬に向かっています。

図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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