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王位リーグ白組、中盤の山場で元王位対決! 4月11日、羽生善治九段-木村一基九段

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月11日。東京・将棋会館において伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦・挑戦者決定リーグ白組▲羽生善治九段(2勝1敗)-△木村一基九段(2勝0敗)戦がおこなわれます。

 藤井聡太王位への挑戦権を争うリーグ戦も、いよいよ中盤の佳境を迎えています。

 タイトル通算99期という、途方もない実績を誇る羽生九段。王位も史上最多の通算18期を獲得しています。

 ちなみに永世王位の資格は、王位連続5期か通算10期の棋士に与えられます。これまでにその高いハードルを超えた棋士は羽生九段、大山康晴15世名人、中原誠16世名人の3人。もし藤井王位が今期王位を防衛すれば連続5期となり、史上4人目にして最年少の永世王位資格者となります。

 木村九段は2019年、史上最年長46歳で初タイトルとなる王位を獲得しました。

 本局は元王位同士の対決となります。

今期リーグこれまでの経過

 羽生九段は1局目で西川和宏六段と対戦。相振り飛車の熱戦を制して勝利をあげています。

 2局目は永遠のライバル、森内俊之九段と対戦。羽生九段先手で戦型は角換わり。難しい中終盤を経て、最後は羽生九段がギリギリしのげるかどうかというところで、合駒の選択に誤りがあり、森内九段の勝ちとなりました。

 3局目は渡辺明九段と対戦。後手の羽生九段が横歩取りに誘導し、激しい戦いとなりました。途中、渡辺九段の判断にミスがあったようで、結果は68手という短手数で羽生九段の勝ちとなりました。

 木村九段は1局目、森内九段と対戦。木村九段先手で角換わりから相早繰り銀となり、途中まで前例のある激しい戦いとなりました。終盤、木村九段が詰みを逃す場面があったものの、優位をキープして押し切りました。

 2局目は飯島栄治八段と対戦しました。木村九段と飯島八段はリーグ開幕前、参加者同士による異例の展望対談をおこなっています。いま見返しても大変面白いので、未見の方はぜひご覧ください。

 リーグ表を見ながら、木村九段は飯島八段が後手番となったときの作戦を予想します。

木村「飯島さん、絶対横歩取りだもん」「横歩取りやるでしょ? だって」

 苦笑する飯島八段。はたして、両者の対戦は後手の飯島八段が誘導して横歩取りになりました。スリリングな進行を経て、75手目という早さで木村玉は飯島陣に達します。そして飯島八段からの追及を逃れて入玉が確定し、最後は木村九段が飯島玉をとらえました。

 初めてリーグ入りを果たした飯島八段は、渡辺九段、木村九段、西川六段に敗れ、残念ながら3連敗で陥落が決まりました。さらにここから森内九段、羽生九段との対戦があるとは、改めておそろしいリーグです。

 木村九段は羽生九段について、次のように語っています。

木村「羽生九段はほかの棋戦でもけっこう勝ってるような気もしますので。会長を務めながら、充実しているなあという気がしますね」

 紅組、白組、両リーグを通じて、無敗は木村九段ただ1人となっています。

羽生九段と木村九段、56局目の対戦

 羽生九段と木村九段の過去の対戦成績は羽生九段35勝、木村九段19勝、持将棋1局です。

 王位戦七番勝負では2014年と2016年の2回、羽生王位に木村八段が対戦(肩書はいずれも当時)。羽生王位がそれぞれ4勝2敗1持将棋、4勝3敗で防衛を果たしています。

 2019年の王位戦挑戦者決定戦では木村九段が勝ち、豊島将之王位(当時)への挑戦、獲得へとつなげました。

 直近では2023年12月のB級1組10回戦で対戦。羽生九段先手で相掛かりとなり、木村九段が大熱戦を制しています。

 本日4月11日は名人戦七番勝負第1局2日目、藤井名人-豊島九段戦もおこなわれます。一方で本局も並行して観戦するという方も多いでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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