男子バレーに「熱」は取り戻せるか
3勝7敗の現実
ゲーリーサトウ監督が就任した新生男子日本代表にとって、ワールドリーグ2013は初陣となる公式戦だった。
結果は10試合を終えて3勝7敗。18チーム中最下位。
昨年中に決まるはずだった監督就任が遅れに遅れ、選手選考を含め、ワールドリーグまでの準備期間が少なかったのは否めない。この大会は、結果よりもチームが進化するためのプロセスである、と指揮官も明言し、男子の強化を担当する桑田美仁・ゼネラルマネジャーも「昨年(のワールドリーグ)が0勝だったことを考えれば、3勝できたことがまず収穫」と言うように、厳しい結果とはいえ、さほど悲観する様子はない。
サトウ監督が就任し、最初の記者会見、公開練習の場では、選手たちは揃って「変化」を口にし、新たな練習のスタイルや、監督の求める「スマートバレー」に期待する声で溢れていた。
取材者である私たちも、確実な変化を感じ、これからどうなるのかと、ワクワクした。
ところが、ワールドリーグが始まると、その「ワクワク感」が減ってしまった。試合会場からも、変化を期待する「熱」が今一つ感じられない。
なぜか。
きっとそれは、単に「勝てない」ということだけではないはずだ。
1つのヒントが、7月7日のカナダ戦にあった。
武器を使いきれなかった日本
セットカウント2-1で日本がリードした状況からカナダに追い上げられ、2-2で迎えた最終セット、3-4と日本が1点を追う場面で、セッターの近藤茂はレフトの越川優にトスを上げ、越川のスパイクはカナダのセッター、ダスティン・シュナイダーにブロックされカナダのリードが2点に広がった。
この場面を、近藤はこう振り返った。
「相手の弱いところから攻めよう、と考えて、セッターの前からの攻撃を選択しました。でもあそこは、自分たちの強みであるビックを使うべきだった。相手の弱いところを突くというのは1つのセオリーでもあるけど、その前に、自分たちの長所をバンバンぶつけていかなきゃいけない場面でした」
ビックとは、ウイングスパイカーの選手が後衛時、セッターがセットするよりも先に助走し、セッターに近い位置から放つバックアタックであり、サトウ監督が就任後、重点的に強化してきた攻撃でもある。相手ブロックのマークを分散し、被ブロックの本数を減らすためにも、センターからのクイックと、はやいバックアタックであるビックを武器とすることで、攻撃の突破口をつくるのは、1対1の高さやパワーで劣る日本にとっては不可欠な戦術の1つであり、近藤は「このチームのウィニングショットは、福澤のビック」と明言する。
それなのに、この大事な場面で最も強みとするはずの攻撃を使わなかった。攻めなければならないはずの挑戦者が、「相手の弱いところから攻める」と守りのセオリーを選択してしまった。
チームの武器を「ブロック」と言うカナダは、サーブで確実に狙いを絞り、日本の攻撃が単調になったところをブロックで抑える勝ちパターンに持ち込み、逆転勝ちへとつなげた。対する日本は、大事な場面で、磨いてきたはずの武器を使えず、逆転負けを喫した。
もし同じ結果だったとしても、コレ、という強みを前面に押し出しての敗戦だったならば――。モヤモヤ感どころか、日本が目指すべきスタイルを改めて確認することとなり、たとえ3勝でも「これからにつながる」と前向きに捉えることができたのかもしれない。
国際試合であるにも関わらず、この日の観衆は3000名。
全国各地から熱心なファンが足を運ぶことに変わりはないが、その数は確実に減り、空席の目立つスタンドは、今の男子バレーへの注目度の現れでもある。
キャプテンの山村宏太はこう言った。
「代表は強くあるべきで、勝てばきっと、熱も高まる。そうなるためにも、今やっていることは間違っていないと、ブレずに進んで行くことが、今すべき一番大事なことだと実感しています」
あくまで前向きに捉えるならば、まだ動き始めたばかりの、これからのチームであることは間違いない。
ただし、時間は無限ではない。次の五輪は、もう3年後に迫っている。
ゼロからどころか、マイナスからのスタートを強いられ、劇的な変化を期待するのは酷な注文だ。でもそんな現状だからこそ、コレが日本の武器なんだと、誰もが納得するような、ワクワクするようなバレーが見たい。
男子バレーに再び「熱」を取り戻すためにも、貪欲なチャレンジャーとして、出せる力や強みをすべて発揮して、世界にぶつかる姿を見せてほしいと願うばかりだ。