2週連続GⅠ制覇でダービー2勝目を目指すルメール騎手がイクイノックスを語る
皐月賞も悪くはなかったが……
「凄く良かったです」
25日の朝、美浦トレセンでイクイノックス(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)の調教に跨ったクリストフ・ルメール騎手。南ウッドチップコースで古馬相手に馬なりで半馬身先着すると、すぐにトレセンを発ち、自宅のある京都へ戻る。その道中の東京駅で、朝の感触をそう語った。
「皐月賞は休み明けだったけど、調教の感じは悪くありませんでした。でも、今回はその時よりも更に良い。使われて確実に良くなっていると感じました」
昨夏の新潟で新馬戦を勝つと2戦目の東京スポーツ杯2歳S(G II)も快勝。その勝ちっぷりから相当の器と察せられたが、皐月賞(G I)はそれ以来の競馬。約5ヶ月ぶりの出走がクラシックレースでは、さすがに厳しいかと思われた。負け知らずにもかかわらず単勝3番人気だった事実に、そんなファンの心理がうかがえた。
しかし、これが3度連続しての騎乗となる鞍上は、決して不安に思っていなかった。レース前から好感触を掴んでいた。
「はい。体は少し増えているけど、太い感じではありませんでした。いきなりでも好勝負になると思います」
アゲインストの風は大外18番枠になった事くらい。前に壁を作れなかったため、最初のコーナーを過ぎたあたりで少し行きたがる素振りを見せた。
「走りたがっていました。それでもすぐに落ち着いて、向こう正面は良い感じで走れました」
3〜4コーナーの勝負どころで上がっていく際も、直線1度は抜け出した時も、良い脚を披露した。
「最後はジオグリフに差されてしまったけど、やっぱり走る馬である事は確認出来ました」
日本ダービーに懸ける思い
次なる目標はもちろん東京優駿(G I、通称日本ダービー)だ。ぶっつけの皐月賞で初めての敗戦を喫してからの日本ダービー挑戦は、あのレイデオロを彷彿とさせる臨戦過程。同馬は2017年、ルメールを背に見事、ダービー馬となってみせた。
「どこの国でもダービーは1番のレースだし、勝ちたいです。日本ダービーも1度勝った事で尚更また勝ちたいです」
そう言った後、改めて今年タッグを組むイクイノックスを評する。
「追い切りではテンションが上がる事もなく丁度良い精神状態だと思えました。この感じなら距離も心配しないで良さそうだし、走り慣れた左回りに戻るのも好材料。楽しみです」
先週はスターズオンアースに騎乗してオークス(G I)を優勝。自身としては今年初となるJRAでの重賞制覇をG Iの大舞台でやってのけた。追い風は吹いている。
「今年は海外遠征やそれに伴うコロナ騒動もあって、なかなか波に乗り切れていませんけど、ここに来て流れは悪くないと思います。この良い感じのままダービーを迎えたいです」
こう言うと、最後にひと言、次のように続けて〆た。
「またジオグリフとの木村厩舎ワンツーといきたいです。でも、今度は僕が1着になれるように頑張ります」
第89回日本ダービーは29日にそのゲートが開く。果たして、2週連続での戴冠が、名手の視線の先には見えているだろうか……。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)