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音楽活動再開、Jun. K(From 2PM)が“伝えきれない思い”を伝えるために唄う、愛の歌 

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供 ソニー・ミュージックレーベルズ/EpicJYP
デジタルシングル「THIS IS NOT A SONG, 1929」(6月10日発売)
デジタルシングル「THIS IS NOT A SONG, 1929」(6月10日発売)

Jun. K (From 2PM)が、帰ってきた。彼の圧巻かつ繊細で美しいその歌声を、多くの人が待ちわびていた。今年1月に兵役を終え、除隊。彼の歌を待っていたファンへの思いがあふれ出たような、自身が作詞・曲を手がけたデジタルシングル「THIS IS NOT A SONG, 1929」が、6月10日にリリースされた。この曲に込めた思い、兵役前と後、そしてコロナ前と後とでは音楽、「表現する」ということへの向き合いかたに変化があったのか、「一番新しいJun. K」の胸の内を、メールインタビューで教えてもらった。

「この世のすべての素敵な言葉と、意味がある文章をすべて借りてみても僕の心は表現できない、“これは歌ではなくて、僕の心だ”」

音源商品としては約2年ぶり、復帰第一弾シングルということで、いつも以上に気合が入ったはずの「THIS IS NOT A SONG, 1929」。<This is not a song, This is my heart.(これは歌ではない、僕の心そのものだ)>という歌詞が表しているように、ファンへの愛情、メッセージがたっぷり込められている。

「本当にきれいで美しいメロディーの上に、この世のすべての素敵な言葉と、意味がある文章をすべて借りてみても僕の心は表現できない、“これは歌ではなくて、僕の心だ”という意味を込めて曲を作りました。何よりも歌を超えて、ファンのみなさんと、僕に大きな愛をくださったすべての方に伝えたい気持ちが込められている曲です。<ただきれいなメロディーに幾千の言葉を載せてみても伝えきれないこの想い>というフレーズに、思い入れがあります」。

圧巻の歌声と表現力、シンガー・Jun. Kの魅力を十二分に堪能できる、アンビエントなミディアムバラード

「THIS IS~」はアビエントかつ、強く美しいミディアムバラードだ。強く美しい…まさにJun. Kの声を表現する時に使う言葉だ。この曲で彼はメロディはもちろんだが、「言葉」をひと言ひと言丁寧に伝えよう、伝えたいという、真っすぐな思いが伝わってくる。彼の曲に、ライヴでは欠かせない「NO LOVE」(2014年)という名ミディアムバラードがあるが、この曲も強くて美しく、そして繊細で、Jun. Kという希代のシンガーが持つ素晴らしさを十二分に感じることができるが、「THIS IS~」もドラマティックで、とにかく言葉を伝えたいんだ、という思いが心に響き、大きな感動が押し寄せてくるところは、「NO LOVE」に近い“肌触り”を感じる。

ジャケットのアートワークは「月」をモチーフにし、それはミュージックビデオも同じだ。これまでも、そのクリエイティビティに「月」をモチーフにしたものを使ってきたJun. K。彼にとって特別な存在である「月」は、太陽の光を優しく受け止め、そして暗闇を照らし、「安らぎ」と「優しさ」の象徴だと言われている。そして月は満ち欠けで形を変えていく、成長の象徴という見方もある。今回も、Jun. Kの思い、そしてJun. Kとファンとの関係を「月」になぞらえているようだ。

「この曲を含めて、アルバムに向け制作した楽曲には、僕がインスピレーションを受けたものが生まれた年を、タイトルの最後に入れた」

復帰第一作ということで、他にもいくつか候補曲はあったのだろうか?

「この曲以外にもアルバムに向けて準備していた曲が6曲くらいあって、軍隊にいた時から構想して作業してきました。その6曲は、曲のタイトルの後ろにすべて“年度”をつけています。それは僕がインスピレーションを受けたもの(音楽、絵、映画、本、経験、歴史など)の原作が誕生した年度を後に付けました」。

ちなみに「THIS IS~」は20世紀を代表するベルギー出身の画家、ルネ・マグリットの絵画「イメージの裏切り」(1929年)からインスピレーションを得て作り上げたものだという。マグリットは「言葉とイメージ」という問題を作品に昇華させ、その後のポップアートムーブメントに大きな影響を与えている。

「軍隊にいる時間は、自分自身を深く振り返ることができた」

音楽活動を一旦休止し、さらにコロナ禍という特殊な状況下で、兵役前と後、コロナ前と後とでは、音楽家、表現者として「表現する」ということについて、変化はあったのだろうか?

「まず軍隊での長い時間の間、自分自身を深く振り返る時間を持つことができました。僕はたくさん愛されていて、僕がもらった愛をみなさんにまだすべて返すことができていなかったと思います。そのいただいた愛を何倍にもして、みなさんに返せる方法について考えてみました。音楽と、公演……など、みなさんにたくさん会いに行って、もっと深く心を通わせたいです。しかし、新型コロナウイルスのことで、すべての人々が大変な状況になりました。公演も一旦中止になって、アルバムも延期されましたが、この曲はデジタルシングルという形でリリースして、みなさんに僕の心を聞いていただきたいという願いが大きいです。そして一日でも早くみなさんにコンサート会場で会いたいです」。

一旦立ち止まったことで、自身のこれまでを振り返り、これからを思い、自分のより深い部分へと思いを巡らせることで、作品や活動への向き合い方にも変化が出てきそうだ。それは「THIS IS~」で聴かせてくれる、深みを増した歌にも表れている。さらに、アルバムが楽しみになった。

Jun. Kとウヨン
Jun. Kとウヨン

Jun. Kは6月10日、2PMの公式YouTubeチャンネルで、シングルリリース記念の「Jun. K(From 2PM)Online Live “THIS IS NOT A SPECIAL LIVE”」を韓国から生配信した。本来であればこのタイミングで日本でソロツアーを行なう予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、残念ながら中止となってしまった。しかし、今のありままの自分を見せたい、生の歌とメッセージ届けたいという思いからこのイベントが実現した。さらにこのイベントの進行役として2PMのメンバー・ウヨンが登場し、2PMファンは歓喜した。

「2PMのメンバーは本当に家族みたい。一日も早く再び2PMとしてみなさんの前に立ちたい」

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3月13日に発売した日本初のベストアルバム『THE BEST OF 2PM in Japan 2011-2016』も好調で、5月18日には日本デビュー9周年を迎え、それを記念して開催した期間限定オンラインイベント「2PM in My House」は70万以上の視聴数を集め、その変わらない人気の高さを証明した2PM。活動再開が待たれるが、Jun. Kに改めて2PMというグループについて、そしてメンバーはどんな存在なのかを聞いてみた。

「2PMのメンバーは本当に家族みたいです。 家族は時にはあまりにも当然な存在になったりもします。それほどいつもそばにいてくれると思っていたメンバーが今は軍隊に行っていることもあり、現在僕は軍隊に行っているメンバーを待っている状態でもあります。また、僕を含めてメンバーたちを待ってくれるファンのみなさんがいるので、僕たちも一日でも早く再び2PMとしてみなさんの前に立ちたいです」と、ファン同様、自身もその活動再開を心待ちにしている。

Jun. Kのソロツアー、そして2PMとしての作品リリース、ライヴを日本のファンはもちろん、世界中のファンが楽しみに待っている。

Jun. K(From 2PM) オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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